■ 1. スローコミュニケーションの価値
- デジタル化により手紙を書く機会が減少したが、往復書簡の企画を通じて手紙の良さを再確認している
- 即座の反応を求める会話と異なり、手紙は言葉を時間をかけて吟味できる
- 相手へのメッセージであると同時に独白の性格を持ち、その境界線が曖昧になることで冷静な意識が生まれる
- 「スローリーディング」「スローイーティング」と同様の「スローコミュニケーション」の時代が巡ってきた可能性がある
■ 2. ハワイ英語の特徴
- 筆者はサバティカルを利用してハワイ大学で在外研究を行っており、約1ヵ月が経過している
- ハワイの英語には独特の緩やかなリズムがあり、南部英語の尖った堅さが感じられない
- 文末に「yeah?」「eh?」など相手の同意を求める表現を多用し、日本語の「ね?」に相当する合意形成が行われている
- ハワイ先住民の言語やアジア系移民がもたらした言語の影響が英語に表れており、外来語など日本語の影響も顕著である
- 複数の言語を使う人が集まる場での言語混交(クレオール的現象)は、モノリンガル話者との二言語使用とは性質が異なる
■ 3. 母語話者同士のコミュニケーションの特性
- 日本語が特別に婉曲的・間接的であるとの説があるが、どの言語でもネイティブ同士の会話には同様の特性がある
- ネイティブ同士の会話では共通の知識基盤が大きな役割を果たし、以下の特性が生じる:
- 示唆・暗示を活用し、センテンスを完結させずに次の発言へ滑らかに繋げる
- 論理的な構成を組み立てなくても意味が曖昧なまま伝わる
- 異なる母語・文化的背景を持つ相手との会話では、情報を一つずつ確認しながら慎重に進める必要がある
- 日常的に異文化間コミュニケーションを行う人は、無意識のうちに言葉遣いが変化していく
■ 4. 「ダラダラ文」の普遍性と文化的背景
- 英語母語話者の多い南部の小さな町でも「ダラダラと続く話し方」がデフォルトである
- ドキュメンタリー映画『Mountain Talk』(ノースカロライナ州立大学、2004年)に収録された言葉:「私たちの言葉は終わらない。話しているのではなく歌っているのだ」
- 東京で英語教師を務める友人たちは非常に論理的で明確な英語を使う
- 毎日非ネイティブの学生と関わる経験が、意識せずとも話し方を変化させている
- 「ダラダラ文」は日本語特有の現象ではなく、文化的背景や話者間の共通基盤の有無に依存する
- 日本語のダラダラ傾向は、文化的背景の異なる話者が少なく、物事を明確に表現するプレッシャーが比較的少ないことと関係していると推測される
■ 5. 言語の社会的・個人的側面と日本語の将来変化
- 言語は社会的な道具である以前に個人のものでもあり、社会化できない矛盾や辻褄の合わない要素が残る
- 途切れずに流れる「ダラダラ文」はその個人的な領域を表現するのに適している
- ウルフや谷崎などの作家が意識のリズムに合わせた長文を採用するのはこの領域の探求のためである
- 論理的な文体は日本語・英語を問わず似通うが、「ダラダラ文」は言語ごとに独特のリズムと構成を持つ
- 日本国内で日本語を母語としない人が増加しており、その影響で今後日本語が変化する可能性がある
■ 6. 余談: ペルシャ語学習
- サバティカルを利用して毎日約1時間ペルシャ語を学習している
- ペルシャ語圏では詩の存在感が大きく、初級教材にも詩が含まれている
- 現在は文字を音に変える段階であり、詩の音楽性を味わえる日を楽しみにしている