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なぜ女性も極右を支持するのか(上)

要約:

■ 1. 問題の所在: 極右と女性の逆説的関係

  • 近年のヨーロッパおよび日本において、極右政党への女性支持が増加し、女性政治家が極右勢力の顔となる現象が観察される
  • フランス国民連合では支持層の男女差がほぼ消失しており、マリーヌ・ルペン(フランス)、ジョルジャ・メローニ(イタリア)、アリス・ワイデル(ドイツAfD)が代表例
  • 日本でも参政党が女性候補者の高比率を示し、高市早苗が2025年10月に憲政史上初の女性首相に就任
  • 伝統的な性別役割や男性中心的秩序を重視する極右を、女性自身が内側から支える矛盾した状況が世界的に生じている
  • 女性の動員は極右にとって単なるイメージ戦略ではなく、ナショナリズムを「普通のもの」として正当化する上で不可欠な役割を果たす

■ 2. 極右ジェンダー・ギャップの歴史的背景

  • 1980〜90年代以降のフランスでは、男性が女性の約2倍の割合で国民戦線に投票する「極右ジェンダー・ギャップ」が存在していた
  • 女性が極右を支持しにくかった要因は以下の4点:
    • 労働市場の性別分業: 工業・ブルーカラー職に多い男性が移民労働者との競合にさらされやすく、反移民訴求が男性に集中した
    • キリスト教的倫理: カトリック教会が極右の反平等主義を批判し、特に宗教実践度の高い高齢女性における極右支持を抑制した
    • ジェンダー規範による社会化: 女性は規範への服従や協調性を重視する形で社会化されるため、過激主義やアウトサイダー的性格を持つ極右を忌避しやすかった
    • フェミニズムの浸透: 特に若い女性の価値観が変化し、伝統的な家族観・性道徳観を掲げる極右から距離を取るようになった

■ 3. 極右と性差別的立場

  • フランス極右は伝統的な性別役割と家族主義を重視し、女性を国家・民族の再生産を担う存在として位置づけてきた
  • ジャン=マリー・ルペンは「女性の身体は自然と国家に属する」と述べ、女性の身体を共同体的目的に従属させる世界観を示した
  • 中絶反対は戦後フランス極右の要石であり、2024年の中絶の自由の憲法明記をめぐる議会採決でも国民連合議員の約半数が反対・棄権した
  • 国民連合はセクシュアル・ハラスメント対策決議への反対、女性の管理職アクセス強化法への反対、ジェンダー平等関連団体への予算削減提案など、フェミニズム的争点に一貫して敵対的な立場をとる
  • こうした性差別的立場が維持される中でも、極右ジェンダー・ギャップは縮小し、近年ではほぼ消失しつつある

■ 4. 現在の女性支持者の特徴

  • 国民連合への女性支持は、非正規雇用、低学歴、低〜中所得層において相対的に強い
  • 2008年以降の経済危機と雇用不安定化が、女性が多く従事するサービス部門の低賃金性・不安定性を強め、従来は男性中心の労働者層に帰されていた社会的不満の条件が女性にも共有されやすくなった
  • 国民連合の票は最貧困層よりも「エリートから軽視され、下からは福祉依存者に追い越される」と感じる中間的・不安定な層の「三角形意識」に根を持つ
  • 18〜29歳でルペンに投票した女性は同年代の男性や全体平均と比べ既婚・同棲の割合が高く、世帯単位での政治的選択形成が示唆される
  • 女性を極右投票に向かわせる要因の一つは、単なる反移民感情ではなく、家族生活の維持を国家的保護によって支えようとする「社会的再生産保護主義」の訴求力にある

■ 5. 社会的再生産保護主義の概念

  • 定義: 生活維持や家族再生産を支える資源(学校、住宅、福祉、家族手当、公共サービス)を「国民」や「土着の人々」に優先配分すべきとする排外主義的な政治態度
  • 福祉排外主義と重なるが、より広い生活基盤領域(子育て、地域サービス、世代間上昇移動の可能性を含む)を対象とする
  • 「誰が福祉を受け取るべきか」だけでなく、「誰の生活・家族の未来が公的に支えられるべきか」という排外主義的選別の論理
  • 移民やマイノリティが公共資源を「奪っている」という語りと「大置換」論的陰謀論は、いずれも社会的再生産資源をゼロサム的な「パイの奪い合い」として捉える想像力に基づく
  • 性別役割分業のもとでケア・子育て・生活維持といった社会的再生産の仕事を大きく担う女性にとって、公共サービスや福祉をめぐる生活不安はより切実なものとして現れやすい
  • 国民連合支持は観念的ナショナリズムや外国人嫌悪のみに還元できず、家族生活・教育・住宅・福祉へのアクセスをめぐる不安が「国民優先」という排外主義的保護言説と結びついた結果である

■ 6. マリーヌ・ルペンの「正常化」戦略とフェモナショナリズム

  • ルペン自身の女性性がもたらす穏健なイメージが、極右への投票に伴う心理的ハードルを下げ、女性有権者にとって国民連合を忌避すべき対象でなくする効果を持った
  • 大衆的意見を取り入れながら党の言葉遣いや争点設定を調整し、女性有権者に忌避されやすい論点を前面に出さなくなった
  • 2017年大統領選では世論調査・分析の専門家を陣営に加え、キャンペーンを世論重視で構築した
  • 中絶に関する立場: 2012年には「安易な中絶」批判を用いていたが、その後は表向きにはこうした論点を抑制するようになった
  • 自己演出の変化: 2017年頃から「母」かつ「現代的な女性」として、「女性の大義の擁護者」としてふるまうようになった
  • この変化と同時期に見られた2つの動向:
    • 同性婚反対運動を契機とした保守女性運動の再活性化・再編
    • 「女性の安全」を移民・イスラームへの排除と結びつけるフェモナショナリズム的言説の高まり

MEMO:

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