■ 1. 概要
- 2024年9月、「適正AV」の認定制度がひっそりと消滅した
- 「適正AV」の自主規制ルールが先行して業界に浸透していたことが、AV新法の拙速な成立にも対応できた要因となった
- AV業界は半年単位で状況が変化する激動の業界であり、数年前には考えられなかった総ギャラ開示なども現在は慣行として定着している
■ 2. 「適正AV」の誕生
- 背景:
- 2016年に「AV強要問題」が噴出し、業界内で危機感が高まった
- 2017年4月に第三者委員会「AV業界改革推進有識者委員会」が設立された
- 委員は志田陽子(憲法学者)、河合幹雄(法社会学者)、山口貴士(弁護士)、歌門彩(弁護士)の4名
- 「適正AV」の定義:
- IPPA加盟メーカーが制作し、正規の審査団体の厳格な審査を経て認証された映像のみを指す
- 無審査映像・海外からの無修正映像・著作権侵害の海賊盤・児童ポルノは対象外
- 国内法規制に則り、確かな契約のもとで制作・審査・販売され、責任の所在が明確なものを「合法な適正AV」と定義
- 将来的には「適正AV=AV」として社会認知されることを目指すと提言された
■ 3. AV人権倫理機構の性格と活動
- 組織概要:
- 2017年10月1日、委員会は「AV人権倫理機構」(以下、人権倫)と改名し業務を引き継いだ
- 理事陣はAVと無関係の出身者で構成され、多くが表現規制反対の立場をとった
- 3つの組織的特色:
- 第三者の立場であること
- AV業界全体の人権・コンプライアンス意識の向上への寄与
- 表現規制反対の立場から表現内容には強く踏み込まないこと
- 具体的な活動成果:
- 撮影時の契約書締結を慣行として定着させた
- 性病検査の徹底、再編集作品など二次使用コンテンツへのギャラ発生、作品販売停止の仕組みを整備した
- 2022年のAV新法施行前にこれらの実践を業界に浸透させ、法施行時の混乱を防いだ
■ 4. 「適正AV」消滅の経緯
- 消滅に至る経緯:
- 2023年10月、新たに「適正映像事業者連合会」(CCBU)が設立されるとの説明を人権倫が受けた
- CCBUへの参加協力を求められたが、人権倫はこれを断った
- 断った理由は、業界利害関係者と距離を保つ「法律家による第三者機関」としての独立性・性格に意義があるとの判断による
- 業界事業者に対して綿密なコントロールができないならば存続の必要なしと判断し、2024年3月31日をもって活動を終了した
- 「適正AV」認定の消滅:
- 活動終了に伴い「適正AV」の認定が廃止され、2024年10月1日以降は存在しなくなった
- 審査マークはIPPAマークからCCBUマークに変更された
- 2024年12月19日にCCBUが「CCAV」という新呼称を発表するまでの約3ヶ月間、正規ルートの作品に対応する呼称が存在しない空白期間が生じた
- 現場では同人AV側が従来から使用してきた「商業AV」という呼び方が広まった
■ 5. 今後の展望
- 制作現場の現状:
- 現在も引き続き人権倫が整備したルールのもとで制作が行われており、大きな混乱は生じていない
- CCBUから新たな動きはまだ見られない
- 業界を取り巻く環境の変化:
- SNSの普及によりトラブルを隠し通すことが困難になった
- 映画界をはじめ他業界でも性加害・パワハラ問題への告発と改善の動きが続いており、社会全体でガバナンスへの意識が高まっている
- AV業界でもコンプライアンスや人権意識の浸透は後戻りできない水準に達しており、不祥事が発生した場合は業界存続に関わるとみられる
- CCBUへの期待と評価:
- CCBUが同人AV・無修正AVとの差別化を図り、より透明度の高い遵法姿勢を示す方向性も見受けられる
- ただし「業界利益の推進」を目的とするCCBUのもとで「法律遵守と人権保護」が疎かにならないかは現時点では未知数
- AV人権倫理機構が業界に人権保護とコンプライアンス意識を根付かせ醸成してきた功績は大きく、その足跡は確かなものとして残った