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経営者になって廃人となりすべてを失った弟

時期はぼかすが今年、弟が死んだ。

44歳、心不全だった。

弟は統合失調症になって社会からリタイヤしてようやく治療の甲斐あって薬で日常生活は送れる程にはなっていた。

統合失調症罹患者は心不全での突然死のリスクが普通の人より30%近く高いので生活管理に気を付けてください、と主治医の先生からは聞いていた。

弟は、この病になるまではITエンジニアで、他の会社に入社してエンジニアとして働きながら、起業という形でIT企業を立ち上げて経営者の立場になっていた。

弟は、離婚して妻と娘を失い、統合失調症という病で健康と心さえ失い、そして最後は命さえ失い死んだ。すべてを失った、と言えるほどの最後だった。

起業したときは一見して順風満帆、結婚もしていて娘にも恵まれて、満を持しての起業、あまりこの業界を知らない俺や家族からは何の心配もなさそうだな、という気持ちしかなかった。

だが内実はかなりプレッシャーというか、うまくいってなかったらしい。

弟は統合失調症になる前の、経営者だった時に、俺とのサシ飲みの席でこんなことを言っていた。

「一つミスをすれば、セキュリティインシデントになる様な事が起こる。雇ったエンジニアが日常生活で怪我や病気になったり、いつ退職になるかわからない、そんな中で責任だけ背負うのは恐ろし過ぎる」と

大変なんだな、と思っていたが、元々小心な面があり細かいところが気になるタチで、いい意味でも悪い意味でも真面目で責任感がある弟にとっては、いっぱいいっぱいだったのだろう。

対応できる力量を大きく超えたことをいくつも抱えて、弟の心は消耗していった。LINEにも中々既読が付かなくなり、弟の会社を検索すればパワハラ社長、おかしい、狂っている、と悪評がどんどんと積みあがって増えていっていた。

憔悴しきって、弟は社員や周りにすらあたりが強くなってしまったのだろう。経営者になる前まではそんな人間ではなかったはずなのに。

会社内だけでおさまっているのなら(社員イジメるとか本当はダメなんだが)、まだよかったのかもしれない、だが弟の焦燥といら立ちは、自らの妻(義妹)や弟の娘にまで及んでしまっていた。仲裁や介入に俺や親父やおふくろが入ったため、その様子は詳細に覚えている。

弟は、超えてはならない一線を超えてしまっていた。

それから何度も話し合いでもめた後に、弟は家族を失った。離婚になったからだ。

そして弟は、会社経営すら、ITエンジニアとしてすら迷走していってしまっていた。会社から人は逃げ、ついに弟は一人になってしまった。

もはやそれは会社という形態ですらない。会社は気が付けば畳んでしまっていた。そのあたりからだろうか、弟の言動はついに正気を逸した水準にまで達していたのは。

別れた妻子ともう一度復縁を迫り、警察を呼ばれ、明らかに異常な価値観から家族の説得を経て精神科へいった。診断は統合失調症だった。

弟はついに社会から転げ落ちた。心が砕け散ってしまったからだ。

長い治療と投薬の末、家族のサポートもあってかかなり具合はよくなってはいた。

ようやく実家から、一人暮らしを再開し、日常生活は歩めるようになった、その矢先だった。弟は心不全で死んだ。

何でこれを書こうと思ったのかは自分でもよくわからない。今日は仕事が休みで、酒が入っているせいなのかもしれない。

ただ、誰かに聞いてもらいたかったからなのかもしれない。うまく書けないが家族や一部の人間以外、弟の本当の側面を知らずにパワハラIT企業の社長が、経営が上手くいかなくて狂死した、という話だけでは、あまりにも弟の魂が報われないと思うから…

MEMO: