■ 1. 「正しくなさ」を排除しない社会の必要性
- 公共訴訟には「非の打ちどころのない被害者」のケースだけでなく、タトゥー訴訟やクラブ風営法訴訟のように「自己責任」と言われかねない事例も含まれる
- タトゥーやナイトクラブへの来訪は「私がやってもいい」自由の範疇であり、公共訴訟はそうした自由のためにも闘う
- 哲学者リチャード・ローティの主張として、「正しくなさ」を無いことにすると、どこかで噴き出すと指摘される
- 「正しさ」が振りかざされ続ける社会では、正しくないことを大声で叫ぶ政治家が逆説的に支持を集める
- これがいわゆる「ストロングマン(強い男)現象」であり、ローティはトランプ現象を予言したと死後に評される
■ 2. ローティの「バザール」と「クラブ」の比較
- バザール(公共の場):
- どんな人がいるか分からないため、お互い発言に気をつけ合う空間
- 市民社会の公的な側面を象徴する
- クラブ(暗がりのある場):
- メンバーシップがあり、昼間のグチを言えたりストレスを発散できる空間
- ナイトクラブにおける「共通感」(同じ目的で集まっている感覚)も同様の機能を持つ
- ローティはバザールだけでなくクラブがあるからこそ社会が回ると主張する
■ 3. 「いかがわしいもの」の社会的意義
- コロナ禍の持続化給付金・家賃支援給付金が性風俗事業者にのみ支給されなかった問題を亀石氏が職業差別として提訴
- 大阪の東洋ショー劇場は大阪万博開幕タイミングで摘発され、意図的な排除と見られる
- 踊り子が述べた言葉:
- 「いかがわしいものを含めて人間であり、それが街であり社会だ」
- 「真っ白に漂白された社会はおかしい」
- 「いかがわしさも含めた人間として表現したい」
- ストリップの表現はエロスだけでなく、アスリート的・芸術的側面を持ち、観客(女性を含む)を感動させる
■ 4. ジャスティス(justice)の本来の意味
- 「司法(justice)」は「正義」と直結されがちだが、語源的には「just(バランスが取れている)」と同じ
- 司法を象徴する女神テミスは目隠しをして天秤を持つ姿であり、「主観を入れない」「釣り合いを取る」ことを示す
- 「裁く」は「責める・滅ぼす」ではなく「釣り合いを取る」という意味を本来持つ
- 「正しさを背負って裁く」というイメージはジャスティスの理念とは異なる
■ 5. 公共訴訟の新しいあり方: CALL4とLEDGE
- CALL4は日本初かつ唯一の公共訴訟支援プラットフォームであり、LEDGEはそのための弁護士集団
- 従来の「人権派弁護士」「社会派弁護士」とは異なる性質を持つ
- ポリティカリー・コレクト(ポリコレ)とも異なる
- 「正しくないことまで含めて自由のために闘う」姿勢が画期的とされる
■ 6. 連帯を広げるための「伝え方」の重要性
- ローティの「連帯」論:
- 「同じ人間だから連帯できる」のではなく、「われわれ」はもっと小さく断片的なところから始まる
- 朱氏の著書『バラバラな世界で共に生きる』第4章にこの主張が示される
- CALL4の実践:
- キャンペーナーによるデザイン、コピー、SNS等の多様なツールを活用して当事者のナラティブを届ける
- 初めて法廷に来た人や千円を寄附した人といった小さな連帯が積み重なる
- クラブ裁判(風営法)の事例:
- 法廷外の人々や裁判官、議員の心を動かすことが重要
- 議員連盟の形成を経て法改正に至る
- 署名16万筆を集めた
- 言葉・デザインが「人の心を動かす」根幹として機能する
■ 7. 言葉・デザインの本質的役割
- ローティの主張「私たち人間や社会は、受肉したボキャブラリーだ」:
- ボキャブラリー(言葉遣い・デザインを含む)が具体的になったものが人間であり社会
- 言葉遣いが変われば人間も社会も変わる
- 「本質を言語化する」のではなく「どんな言葉を使えるかが私自身だ」という発想
- CALL4の共同代表にクリエイティブ・ディレクター(丸山央里絵氏)が含まれることが象徴的:
- 表現・言葉まわりのプロフェッショナルが弁護士と並んで共同代表に立つ体制
- デザインワークは「本質の後に来る見てくれ」ではなく「本質そのもの」
- 同性婚訴訟は「結婚の自由をすべての人に」という訴訟名でブランディングされている
- 朱氏の著書においても、デザイナーとの直接的なディスカッションを重ねて装丁・カバーが作られた
■ 8. 政治参加の多様な回路
- 「公共への参加=政治参加」が選挙に強く結びつけられがちな現状がある
- 「選挙で勝った・負けた」「推した候補が当選した・しなかった」にフォーカスしがち
- 選挙に無力感を持つ人が多い
- 実際には選挙以外にも多様な政治参加の回路が存在する:
- デモへの参加
- 公共訴訟に関わること
- 署名活動
- 納税者・地域社会の一員としての市民的関与
- 日本国籍の有無にかかわらず、この社会に暮らす市民としての立場で政治とつながりうる
■ 9. 言葉による「非-人間化」への抵抗
- 「被告」という呼称:
- 法廷というゲームにおける役割語であり、ゲームの外ではその人の属性ではない
- 報道等で繰り返し使われることで「犯罪者・罪人の本質」として受け取られやすくなる
- 「身柄」という言葉:
- 法律用語には存在せず、警察用語・マスコミ用語
- 人間を「物」扱いする印象を与える
- 朱氏の著書第3章「ことばによる『非-人間化』」と直結する概念
- 刑事弁護士が先輩から受けた指導:
- 「身柄という言葉は絶対に使わない」
- 被疑者・被告人を「○○さん」と名前で呼ぶ
- 刑務所・拘置所での変化:
- 収監者を番号ではなく「○○さん」と名前で呼ぶようになった
- 番号呼びでは信頼関係が生まれず、更生・社会復帰の準備ができないという問題意識から変化