■ 1. 事件と報告書の概要
- 事件の概要:
- 同志社国際高校が生徒を政治活動へ動員した
- 辺野古で違法座り込みを続けるヘリ基地反対協議会の抗議船に生徒を乗せ、修学旅行中に生徒が死亡した
- この事件について第三者委員会による報告書が公表された
- 報告書の分量:
- 結語まで162ページ
- 別紙を含めたPDF全体は218ページ
■ 2. 担当弁護士の属性
- 委員会の人選:
- 多くの第三者委員会は学校側が用意する仲間内の「第三者」になりがちである
- 今回の担当弁護士の顔ぶれは、日本共産党界隈や左翼界隈でよく見る名前とは異なる
■ 3. 報告書の総合評価
- 指摘の姿勢:
- 報告書を書いた弁護士は記者会見で「現場が信じられない」と述べ、安全管理体制の欠如を厳しく指摘した
- 報告書は①管理体制等の不備、②リスク管理体制等の機能不全、③安全管理に関する検証を妨げた組織風土、④安全管理に関する意識の欠如、の4点を挙げている
- 全体評価:
- 数字的な事実や経緯は丁寧に整理されている
- 個々の論点もそれなりに指摘されている
- しかし傲慢を生んだ根本的な組織的原因の手前で指摘が止まっており、依然として甘い
■ 4. 教師による変更手続きの隠蔽
- 生徒への説明:
- 辺野古コースを選んだ生徒には後日、「このコースの目的は綺麗な海を見ることではなく、基地建設と反対活動の現場を見ることだ」という趣旨のメッセージが教師から送られた
- 変更希望の受付方法:
- コース変更を希望する生徒は、メモを長田教師本人に直接手渡す必要があった
- 他の教師に頼む、机に置くなどの方法では受け付けないとされた
- 報告書の扱い:
- このメッセージ部分を報告書は「以下省略」として記載を隠している
- 変更希望を確実に記録する手段として、メッセージを送信したGoogleクラスルーム上の返信記録や複数の証人を用いる余地があった
- 生徒に対面を強いる心理的負担によって変更を諦めさせる意図があった可能性がある
■ 5. 51人全員変更希望という事実の黙殺
- 変更希望者数:
- 死亡した竹石さんを含む生徒51人がコース変更を希望した
- 竹石さんの実名記載は遺族の意向による
- 実際に変更できたのは14人のみで、最終的に辺野古コースに残ったのは37人だった
- 数字が示す実態:
- 51人から14人を引いた37人は、全員が変更希望を出していたにもかかわらず辺野古コースに残された生徒である
- つまり最終的な残留者全員が当初「NO」を突きつけていたことになる
- この重大な事態を抽選という形式的な処理だけで済ませている
- 報告書の不作為:
- なぜ全員が変更を希望したのか、理由を生徒から聞き取ったのかについて報告書は触れていない
- 全員が変更を希望したにもかかわらずコース自体を中止せず、他プログラムの空き枠抽選で処理した経緯への評価がない
- この事実が校長や保護者に報告されたかどうかも検証されていない
- 報告書内の矛盾:
- 報告書は51人全員拒否という事実を「変更希望がなされ、抽選を行った」という無味乾燥な記述で済ませている
- 一方で別の箇所では「学校は生徒及び保護者に適切な自己決定の機会を保証する義務がある」と一般論を説いている
- 原則は立派に書きながら、具体的な適用場面からは逃げている
■ 6. 船舶の安全確認の欠如
- 確認不足の実態:
- 生徒が乗る船について事前の下見が行われなかった
- 船の資格や登録の確認も行われなかった
- 使用された船は無登録船であり、当日も教員は同乗しなかった
- 一般的な水準との比較:
- 外部業者を利用する通常の修学旅行では、教師が事前に船やコースを試し、当日も同乗するのが通例である
- 報告書の記述:
- 報告書はこの点について活動家への「盲目的な信頼」があったと記している
- 学校が異常な信頼を活動家に寄せ、当然行うべき審査を怠った理由については解明されておらず、「本調査の対象外」とされている
- 信頼を寄せていた活動家、団体が今回の事故を起こした当事者と同一である
■ 7. 政治活動への学徒動員の事実
- 動員の事実認定:
- ヘリ基地反対協議会が作成した、座り込み活動への参加を呼びかける文章の存在が報告書内で認定されている
- 生徒たちが辺野古基地建設反対に賛同して座り込み現場に赴いたとされている
- タバコはテントの外で吸うこと、水筒は自分で始末することといった注意事項が生徒に伝えられていた
- 政治的偏向が認められる活動:
- 座り込みへの参加
- 開会礼拝の運動化
- 協議会名義の領収書
- 事前学習
- 当日の協議会資料配布
- 調査対象からの除外:
- これらの事実を並べていながら、平和学習の内容そのものの適切性については調査対象外とされている
■ 8. 学校とヘリ基地反対協議会の関係
- 金銭的・運営的な結びつき:
- 協議会事務局長が会場行動の責任者を務めていた
- 協議会が船の修理費、燃料費、船長の交通費を負担していた
- 協議会への寄付で購入した装備が使用されていた
- 協議会の幹事会で会場行動の情報共有が行われていた
- 学校の車両領収書にも協議会の名前が登場する
- 報告書の評価:
- これだけの金銭的関係が重なっているにもかかわらず、報告書は「一定の関係性があることは否定できない」という程度の表現にとどめている
■ 9. 再発防止策の空疎さ
- 想定される具体策との比較:
- 高リスクの自主プログラムを一旦全面停止する
- 乗り物利用時は教員を必ず同乗させる
- 登録事業者以外の船を学校行事で使わない
- 責任ある役職者の処分・交代、定期的な審査を行う
- といった具体策が想定されるが、報告書はこれらを提示していない
- 実際の再発防止策:
- 「危機感を共有する」「ビジョンを明確化」「トップメッセージを発信する」「ワークショップを行う」「ワンオンワンミーティングを行う」といった、企業のコンサルセミナー的な抽象的表現にとどまっている
- この記述は報告書160ページ目、結語の162ページ目の直前という終盤に位置している
- 責任の所在:
- 報告書は「責任の所在が不明確だった」と学校を批判しながら、自らも責任の所在を明確にしないまま終わっている
■ 10. 報告書の手法への批判
- 隠蔽ではなく希釈というテクニック:
- この報告書は事実を隠す隠蔽報告書ではなく、事実はかなり詳細に書かれ整理もされている
- 重大事実を大量に並べることで1つ1つの意味を薄め、責任が個人・政治・組織中枢へ届く直前で一般論に逃がす手法が用いられている
- 結語の表現:
- 報告書最終盤(P162)は「想像力の欠如」「猛省」「信頼回復」という、具体性がなく誰も反対しない言葉で締めくくられている
- 委員会の姿勢への疑問:
- 第三者委員会は本来、第三者の立場だからこそ言える、相手が最も触れられたくない責任の真相を突きつけるべき立場である
- 当事者が同じ組織内で安全管理室を作るという計画段階の対応に対し、外部検証や実績確認がない時点で一定の評価を与えている点が問題である
■ 11. 報告書への採点
- 立場による評価の違い:
- 依頼者である学校側として見るなら90点で、良い落としどころになっている
- 第三者委員会のレビュアーとして見るなら合格点は付けられない、半分は書き直しを命じる水準である
■ 12. 語り手の自己言及
- 理想と現実について:
- 自身は理想主義者だが、会社員としての経験から理想と現実の落としどころを先に見る傾向が出てきている
- そのため今は必死に理想を思い出そうとしている