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【及川幸久】ドイツの法律家1000人が「AfDを禁止せよ」と叫ぶ本当の理由

要約:

■ 1. 法律家1000人超がAFD禁止を要求

  • 署名運動の概要:
    • ドイツの裁判官、検察官、弁護士ら1000人を超える法律家がAFD(ドイツのための選択肢)の解散を求めて声を上げた
    • 7月中旬に525人の法律家、裁判官、検察官、法学者、弁護士らが連名で公開所感を発表し、政党禁止手続きの開始を連邦政府などに求めた
    • その後わずか10日ほどで賛同者が1000人以上へと急速に拡大した
  • ドイツにおける政党禁止の権限:
    • 政党を解散させる権限を持つのは裁判所のみである
    • ただし裁判所への申し立て権限を持つのは連邦政府、連邦議会、連邦参議院の3者に限られる
    • 法律家団体自体にはAFDを禁止する権限はない
  • これまでの経緯:
    • ドイツ政府はすでにAFDを危険団体と位置づけ、監視対象として合法的なスパイ活動を行っている
    • ドイツ議会の一部からもAFDを禁止すべきだという声があったが、政府も議会も裁判所への申し立てに踏み切る動きはなかった

■ 2. AFD支持率急伸という背景

  • 最新の政党支持率:
    • 与党であるCDU、CSU(キリスト教民主・社会同盟)の支持率が、メルツ首相の不人気を背景にここ数ヶ月で急落している
    • 一方AFDの支持率は上昇を続け、与党CDUを8.5ポイント引き離し、歴史上最大の差をつけて首位に立っている
    • 左派・リベラルが多いとされる主要都市ベルリンでも、AFDが史上初めて世論調査で支持率第1位となった

■ 3. 表向きの理由と本当の理由

  • 表向きの理由:
    • AFDはドイツ憲法(基本法)が定める自由民主主義秩序と両立しないというのが法律家団体の公式な主張である
  • 本当の理由:
    • 実際の理由は、選挙でAFDに勝てないことが明らかになったためである
    • 次の選挙の前にAFDを潰さなければならないという政治的動機がある
    • 署名した法律家陣営はグローバリスト側であり、ウクライナ支援や脱炭素政策を推進する立場にある
    • 反グローバリストとして台頭した唯一の政党であるAFDを、支持率で対抗できない以上、憲法を利用して排除しようとしている

■ 4. ドイツ憲法の特殊性: 戦う民主主義

  • 制度の内容:
    • ドイツの憲法には、民主主義の敵とみなした個人や団体に対して人権や自由を一切認めないという自己防衛の仕組みが組み込まれている
    • これは「戦う民主主義」と呼ばれる
    • 言論の自由や集会の自由などの権利を悪用して自由で民主的な基本秩序を破壊しようとした場合、連邦憲法裁判所の判断により基本的人権や表現の自由、投票権などを法的に剥奪できる
  • 制度の背景:
    • 1930年代にヒトラーのナチスが暴力革命ではなく民主的な選挙によって合法的に政権を握り、民主主義そのものを内側から破壊したという歴史的トラウマがある
    • この教訓から、民主主義の敵とみなされた対象からはただちに権限を奪うという発想が憲法に組み込まれている
  • 運用の実際:
    • 国家が「民主主義の敵かもしれない」と事前に判断した段階で、情報機関による合法的な盗聴や潜入、監視対象への指定が可能になる
    • 最終的には政党助成金の打ち切りや組織の禁止・解散にまで至る仕組みになっている
  • 他の民主主義国との違い:
    • 多くの国では暴力さえ振るわなければ、どれほど過激な思想でも言論の自由として保障される
    • ドイツでは思想の段階で民主主義を壊す兆候が見られれば国家が予防的に排除に動く点が特異である

■ 5. AFDが違憲とされる具体的主張とそれへの反論

  • 人間の尊厳の侵害という主張:
    • AFDは外国人や移民背景を持つドイツ人、ムスリム、トランスジェンダーなどに対して排他的だとされる
    • AFDは違法な不法移民の国外退去、強制送還を政策として掲げているが、まだ与党ではないため実行には至っていない
    • これに対し、AFDはムスリムやトランスジェンダーを否定していないとされ、共同代表のアリス・ワイデル自身がトランスジェンダーであることも反証として挙げられている
  • 民主主義の原則の侵害という主張:
    • AFDは政治的反対者を抑圧・迫害する目標と行動を持つとされ、政権を取れば反対者を弾圧すると威嚇しているとされるが、これも事実ではないとされる
  • その他の主張:
    • 性的マイノリティや障害者への敵対的傾向、イスラム教などの社会的少数派の組織的排除、反ユダヤ主義といった主張もなされているが、いずれも事実ではないとされる

■ 6. 今後の見通し

  • AFDが直ちに禁止される可能性:
    • 現時点でAFDが自動的あるいは直ちに禁止されることはない
    • 申し立て権限を持つ連邦政府、連邦議会、連邦参議院のいずれも、禁止手続きの開始に踏み切れていない
  • 政府・議会が動けない理由:
    • 支持率第1位の政党を国家権力で排除すれば、国民の反発により社会の分断や暴動が深刻化する懸念がある
    • 仮に裁判となり連邦憲法裁判所がAFDを合憲と判断した場合、AFDは憲法のお墨付きを得た合法政党という強力な免罪符を手にし、さらに勢いづく
    • その場合、訴えた政府や議会側にとっては政治的自殺行為になる
  • 代替案としての可能性:
    • 裁判によらず政府の判断のみでできる政党助成金の打ち切りが代替案として浮上している
    • 2024年に別の政党に対して助成金を打ち切った前例がある