■ 1. 「シャリーア法が上」発言
- 発言の場:
- 2025年11月、神奈川県の藤沢モスク計画に関連し、藤沢市議会議員の町田輝佳氏が慶應義塾大学教諭アルマンスール・アフマド氏にインタビューした
- 町田議員は「シャリーア法が日本の法律を上回るみたいな誤解が世の中にある」と素朴に質問した
- アルマンスール氏の回答:
- シャリーア法は唯一神が作った法であるから日本の法を上回るのは当然だと明言した
- 矛盾したときはシャリーアに従うが、そもそも矛盾はないとした
- 市の決まりと国家の決まりが矛盾すれば国家に従うのと同じ構造だと説明した
- シャリーアの位置づけ:
- シャリーアとは憲法であり、ISISやテロを連想するのは誤りで、怖いものではないと述べた
- 教育、社会、農業、健康、軍隊、国家、子ども、妻、中絶、流産までを対象とする憲法だとした
- この発言は意外に知られていない
■ 2. 発言の問題点
- 最高法規の認識の欠如:
- 法治主義の国では最高法規が何かが重要である
- アルマンスール氏には、シャリーア法を憲法より上に置くこと自体が問題視されているという認識がない
- 宗教の範囲内なら問題にならない:
- 個人の生き方や死生観に関する部分としての宗教にとどまる限り、「シャリーア法が上」という言葉は問題にならない
- 宗教とはそういうものだからともいえる
- 政教分離との正反対性:
- イスラム教は個人や家庭、私生活のみならず、社会やカリフ制など国家の方針にまで言及する宗教である
- 国家と宗教双方の堕落を防止するために政教分離が必要だとする日本国憲法20条、89条の精神とは正反対の方向性をもつ
- ゆえに「シャリーア法が上」という言葉は実に驚くべき重いものとなる
■ 3. アルマンスール氏の経歴
- 出身と専門:
- シリア出身でアラビア語が母語である
- 工学博士であり広島大学でPhDを取得し、一貫して材料工学の研究をしてきた
- 宗教的資格の不在:
- 宗教教育は受けていない模様であり、宗教指導者としての勤務実態がない
- 大学では人間工学、機械と材料工学に加え、イスラーム学とアラビア語を担当している
- 指導的立場への疑問:
- 「イスラムについても教えている」として藤沢モスクの指導的立場となっている模様であることが驚くべきことである
- 藤沢モスクが伝統的なイスラム教のモスクではないことに拠るのかもしれない
■ 4. タブリーグ・ジャマート系列のモスク
- 藤沢モスクの系列:
- 計画中の藤沢モスクは、イスラム復興主義運動「タブリーグ・ジャマート」の系列のモスクである
- タブリーグ・ジャマートとは:
- 20世紀にインドで起こったイスラム復興主義運動である
- 伝統的なイスラームの教義や正統派の信仰実践には見られない、特異な巡回布教活動など独自のプログラムを有する
- 各国での警戒:
- 極端な教条主義が過激思想の温床になり得るという危険性が指摘されている
- イスラム教の中心であるサウジアラビアをはじめ、ロシアや中央アジアなど多くの国で「テロの入り口」として警戒され活動が厳格に禁止されている
- キリスト教文脈での比喩:
- 伝統宗教の看板や名を借りつつ独自の教典や特異な布教活動を行う「エホバの証人」や「モルモン教」のような新興宗教に近い位置づけといえる
■ 5. 藤沢モスク計画の経緯
- 海老名モスクからの分離:
- 藤沢モスクは7キロほど離れた同じ神奈川県の海老名モスクから分かれて計画されている
- 2000年からある4階建ての海老名モスクが手狭となり、パキスタンからの人が中心になってきたため、スリランカ系の人が独立するために計画されたと漏れ聞こえていた
- 土地取得と建築の手法:
- 一般社団法人の名義で土地を購入した後、市街化調整区域であるため例外的に建築できる「宗教法人」が建物を作る形になった
- 土地の購入者とは異なる主体が建てる形であり、法の本来の趣旨からは脱法行為ともいえる
- 集客規模の懸念:
- 建前は地元の信者のみのためのモスクである
- 神奈川県内の信者数からするとかなりの人数が集まると予想され、金曜日は大変なこととなる
- それでなくても混むことで有名な通称「中原街道」沿いに位置する
- 宗教法人の正体:
- その法人とは、2010年7月8日から海老名モスクの不動産を取得し始めた宗教法人である
- 2010年1月20日成立の群馬県伊勢崎市にある「宗教法人ダル・ウッサラーム」である
- 帰結:
- 藤沢モスクもイスラム教の伝統的な部分が進出してきたモスクではない
- その経緯であるから、伝統的な専門教育を得ていないアルマンスール氏が影響力ある立場となっているのだろう
■ 6. アルマンスール氏による釈明
- 謝罪と趣旨説明:
- 誤解を招く発言をしたことを詫び、発言の一部が多くの人に不安や疑念を与えたことを重く受け止めるとした
- 個人の問題としてではなく、ムスリムが日本社会でどのように生きる存在なのかを改めて説明したいとした
- 発言の真意:
- 「シャリーアが日本の法律より上である」という表現は、日本の法律を無視してよいという意味ではなかった
- そのような理解はイスラームの教えそのものから外れる
- シャリーアは日本の法律と並ぶ、あるいは取って代わる国家法のようなものではない
- シャリーアの定義:
- 信念、倫理、責任意識を含む、個人の生き方全体を方向づける価値の枠組みである
- 日本社会に生きるムスリムも他の市民と同じく信念や価値観を持ち、それが現行法と常に一致するとは限らない点も一般社会と同じである
- 信念と遵法の区別:
- 信念と法律が一致しない可能性と、信念を理由に法律を破ることが正当化されるかは全く別の問題である
- イスラームの教えでは社会の秩序を尊重し、その国の法律を守って生活することが明確に求められる
- これはイスラーム法学において伝統的に共有されてきた基本的な理解である
- 市民としての立場:
- 日本に住むムスリムは日本の法律の下で生活する市民であり、日本の法秩序を否定したり例外扱いを強要する立場にはない
- 民主主義下での参加:
- 民主主義社会では信仰に拘らず誰もが政治参加を通じて社会のあり方に意見を述べる権利を持つ
- それは法律を破ることではなく、法の枠内で議論し合意を形成することで実現される
- この意味でムスリムがシャリーアに基づく信念を持ちつつ日本社会で生きることは、日本の法律との対立を意味しない
- 個人が信念を持ちつつ社会の共通ルールの中で生活するという、民主主義社会でごく一般的な在り方である
■ 7. 釈明への反論
- 信念の否定はない:
- どう言いつくろっても、日本国憲法よりシャリーア法が上であるという信念を持つことは否定されていない
- イスラム教の本質において、少なくとも原理復興主義の運動をする者においてはそうである
- 「法の枠内での合意形成」の含意:
- 条例や法律、そしていつかは日本国憲法も変えていこうと考えているのだという意味だと捉える外はない
- 政教一体の歴史:
- イスラム教は人の生死や生き方を考える宗教問題だけでなく、教義的にも歴史的にも政治と一体となってアッラーの教え、シャリーア法による社会を作ろうとしてきた
- 政治と宗教を分離させないイスラム教国そのままの感覚で進めがちであり、復興原理主義であれば尚更である
■ 8. 並行社会化への懸念
- 並行社会の形成:
- 日本にいるムスリムの世界で、日本の法規範や裁判所、警察に頼らない「並行社会」ができていく
- その中の紛争が日本法によらない傾向になる
- さまざまな戒律も、女性への暴力も、離婚事件も、民事紛争も、小さな刑事事件も対象となる
- 政治参加による実現:
- 「シャリーア法に基づく日本国」を目指して国への要請や投票がなされる
- 議員や首長に就いていくという政治参加がなされていくのだろう
- 当会の対応方針:
- 当会の9項目の要請を基に様々な調整をしていく必要がある
- 「日本のイスラム教」に変わってもらわなければ、日本全国各所でトラブルが増えてくると実感させられた