■ 1. 「次世代へのツケ」論の転倒
- 小渕優子氏の辞任表明:
- 自民党税制調査会の非公式幹部会「インナー」を務めてきた小渕優子氏が食料品の消費減税案に反発し辞任の意向を示した
- 理由は減税が次の世代にツケを回すことになるという主張
- 検証の対象:
- 小渕氏個人ではなく、氏が口にした「次世代にツケ論」という主張そのもの
- 当時の政府文書と政治家自身の言葉によって検証する
- 先に示す結論:
- 次世代にツケを回してきたのは減税ではない
- むしろ安定財源である消費税そのものだった
- ツケの定義:
- 将来世代が背負わされる借金、すなわち赤字国債の山を指す
- 問うべきはその借金の山がどうやって積み上がってきたかという単純な点
■ 2. ツケを膨らませる装置としての消費税
- 消費税の特殊な性格:
- 所得税や法人税は景気に大きく左右され、不況になれば税収が落ち込む
- 消費税は好不況にかかわらず消費という広い裾野から確実に取れる
- 物価が上がればその分だけ税収も自動的に増える
- 失政が税収を潤す構造:
- 政権の失策で物価が高騰した局面ですら消費税収はむしろ膨らむ
- 経済運営にしくじって悪いインフレを招いた政権ほど税収は上振れする
- 痛みを招いた側がその痛みでかえって潤うのが消費税である
- 国債の返済のあて:
- 財政当局はこの「最強税」を国債発行の返済のあてに使う
- 確実な担保があるほど金は貸しやすく、政府の借金枠は広がり赤字国債は際限なく積み上がる
- 消費税は財政規律を守る道具どころか、ツケを膨らませる装置そのものである
- 改革先送りの温床:
- 安定財源さえあれば政治家は歳出を切る痛みから逃げられる
- 改革をせずとも当面の帳尻を借金で合わせればよく、先送りされたツケが次世代の肩に載っている
- 消費税があるから社会保障改革が進むどころか、消費税があるからこそ改革は三十年以上先送りされた
■ 3. 増税容認側の政治家による自白
- 米山隆一氏の証言:
- 立憲民主党の衆議院議員だった米山隆一氏は、野田佳彦首相が消費増税を決断したから日本は救われたと語った
- コロナ禍で何百兆と国債を出せたのは増税をしていたからだとも語った
- 自民党議員の言葉:
- 米山氏は、酒席で自民党の人物が、あんな好き放題できたのは野田が消費税を上げてくれたからだと語ったと伝えた
- 証言が意味するもの:
- 聞きようによっては増税の手柄話だが、白状しているのは正反対のことである
- 消費税を担保にして政治家が将来世代へのツケを好き放題に積み増してきたという自白にほかならない
- 増税は改革の担保ではなくツケの担保だった
- ツケを払う主体:
- そのツケを払わされるのは減税に反対している当の政治家ではない
- 払わされるのは私たちであり子どもたちである
■ 4. 2011年成案で破られた約束
- 社会保障・税一体改革成案:
- 2011年6月30日に政府・与党社会保障改革検討本部が決定した文書
- 消費税を段階的に10%へ引き上げることと引き換えに、社会保障の側にも改革のメスを入れると約束していた
- 年金についての明記事項:
- 支給開始年齢について68〜70歳へのさらなる引上げを視野に検討すると明記されている
- 2012年以降速やかに法案提出すると明記されている
- 負担を増やす増税と給付を抑える改革は、同じ一枚の文書の中にセットとして書き込まれていた
- 実際に起きたこと:
- 消費税を8%そして10%へ引き上げる法律は2012年8月に成立し、取る方の約束は着実に実行された
- 年金の支給開始年齢引き上げは法案が提出されることすらなかった
- 速やかに法案提出と書かれた改革はその年のうちに中長期的な課題へ格下げされ、棚ざらしのままである
- 非対称の正体:
- 奪う手だけは素早く、削る手はいつまでも動かない
- この露骨な非対称こそが次世代に回されたツケの正体である
■ 5. 現役世代に最も重い消費税
- 世代間公平論への反論:
- 擁護する側は消費税を高齢者にも広く負担を求められる公平な税だと言う
- 世代間の公平のためにこそ必要だという理屈だが、実際の負担の分布を見るとこの主張は揺らぐ
- 家計調査が示す事実:
- 総務省の「家計調査」では二人以上の世帯の消費支出は世帯主が40〜50代の現役期にピークを迎える
- 60代、70代と年齢が上がるにつれて下がっていく
- 現役世代への集中:
- 子育て、住宅、教育と人生でいちばんカネの出ていく時期を背負っているのは現役世代である
- 消費に比例してかかる消費税は支出の多い現役世代にこそ最も重くのしかかる
- 消費税は現役に優しい税ではなく、次世代を担う世代の家計を真正面から削り取る税である
- 本当のツケ:
- 次世代を守ると言いながら、その次世代がいちばん重く負担している税を頑として下げないのは話が逆さまである
- 働き、消費し、子を育てる現役世代から確実に吸い上げる仕組みの温存こそが次世代へのいちばん重いツケである
■ 6. 「財源がない」と言いつつ給付は惜しまない矛盾
- 石破茂前首相の苦言:
- 2026年8月、地元の鳥取県倉吉市での講演で消費税の代わりの財源が一体どこにあるのか示さなければと語った
- 財源なき減税は無責任だと苦言を呈した
- 同じ場での別の発言:
- 今困っている人たちに、去年は減税よりも給付と申し上げたとも語った
- 減税には財源を問うのに給付には前向きである
- 論理の破綻:
- 給付もまた国庫から出ていく支出であり、財源を要することに変わりはない
- 財源がないのなら給付もできないはずである
- 減税には身構え給付には財布を開くという非対称が彼らの本音を映し出している
- 減税と給付の決定的な差:
- 減税は国民の手元にそのままカネを残し、政府は一切関与できない
- 給付はいったん国民から吸い上げたカネを政府が誰にいくら配るか決めて渡す仕組みである
- 同じ家計を助ける手段でも、給付であればカネの配分権(所有権)は政府の手に残り続ける
■ 7. 本当に次世代を思うならやるべきこと
- 彼らが守りたいもの:
- 守りたいのは財政規律ではなく自分たちが握るカネそのものである
- 減税に頑なに抵抗するのは権力者として手にしているカネが直接減ってしまうからにほかならない
- 「財源がない」の一言は財政を憂える良心ではなく、減税を止めるために唱える呪文にすぎない
- 小渕氏がやるべき唯一のこと:
- 2011年に速やかに法案提出すると約束しながら十余年棚に上げてきた社会保障の給付抑制がある
- その減らす方の約束を今度こそ法案にして国会に出すことである
- 減税批判の資格:
- 取る話だけを片づけ、減らす話を先送りし続けてきた側に減税を次世代へのツケと呼ぶ資格はない
- 順序がまるで逆であり、消費税を上げた者が次世代にツケを回してきた事実をまず認めるべきである
- 納税者の側の姿勢:
- 「財源がない」という財政規律の脅し文句に、もう屈する必要はない
- 減税とは政府に握られたカネを国民の手に取り戻すことであり、本当の意味での次世代のための財政はそこから始まる