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買う側の勧誘行為処罰について

要約:

■ 1. 買う側の勧誘処罰の新設案

  • 検討会の報告書案:
    • 法務省の「売買春に係る規制の在り方検討会」が公衆の面前で買う側が勧誘する行為を処罰する規定の新設を盛り込んだ報告書案を公表
    • 背景には大都市の繁華街における路上売春、いわゆる「立ちんぼ」の社会問題化がある
  • 拡張に反対する立場:
    • 売春防止法第5条の非対称性の是正や風紀の維持として肯定されがちな動きである
    • 他害性を基準とする危害原則や刑罰の謙抑性に照らせば、抽象的法益を理由とする刑事罰の拡張には慎重であるべき

■ 2. 現行法の非対称性とリーガル・モラリズム

  • 売春防止法第5条の構造:
    • 売る側である女性の公然勧誘や客待ち行為のみを6カ月以下の拘禁刑か2万円以下の罰金と定めている
    • 条文上は主体が限定されていないが、判例は客である男性からの勧誘行為は該当しないとする
  • 過去の改正構想の根拠:
    • かつて買う側の処罰も射程に含める改正案が構想された
    • その根拠は売買春の交渉が「社会の風紀」を害し支配的な道徳に反するという「リーガル・モラリズム(法的道徳主義)」であった

■ 3. 売春の定義と風営法との矛盾

  • 「売春」の限定的な定義:
    • 売春防止法が違法とする「売春」は性器間の(膣)性交に限定されている
    • 風営法のもとでは店舗型・無店舗型の性風俗営業において「性交類似行為」の有償提供が合法的に容認されている
  • 一律禁止ではない現状:
    • 性的なサービスの売買そのものが一律に絶対悪として刑事法的に禁止されているわけではない
    • 営業規制の枠組みで合法な性的行為が認められている
    • にもかかわらず路上における勧誘や交渉のみを「風紀の乱れ」として刑事罰の網にかける構図になっている

■ 4. ハーム・プロダクションの危険

  • 保護の名目と実態の乖離:
    • 買う側の勧誘処罰は一見女性を保護する制度に見える
    • 実際には最も脆弱なセックスワーカーの安全を脅かす「ハーム・プロダクション」につながる危険性がある
  • 地下化による身体的リスク:
    • 法を犯すことをいとわない悪質な客が残り、交渉が地下へと潜伏する
    • 女性側が危険性を見極める時間的な余裕を奪われる
    • 暴行や避妊具不使用、薬物摂取の強要といった身体的なリスクにさらされる
  • 買う側を標的とした犯罪:
    • 処罰を恐れる男性を標的とした美人局(つつもたせ)や恐喝が急増する懸念がある

■ 5. 議論すべきは売る側の勧誘罪の廃止

  • 廃止こそが本筋:
    • 規制の不均衡を問題にするなら、勧誘処罰の拡大ではなく売春防止法第5条の完全な廃止を議論すべき
    • 現行法は困窮する女性らを問題にし、警察や福祉への安全なアクセスを阻害してきた
    • 真のジェンダー平等と現場の安全を両立させるというなら勧誘罪そのものを撤廃すべき

■ 6. 刑事罰以外の代替手段

  • 既存のソフトな規制枠組み:
    • 一般市民の生活環境との調和や公衆の平穏を確保する規制としては都道府県の迷惑行為の防止や軽犯罪法がすでに存在する
    • これらのよりソフトな行政的・警察的な規制枠組みに委ねるべき
  • ゾーニングの有効性:
    • 刑事罰による威嚇ではなく、場所や時間帯を限定・隔離するゾーニング(空間的・行政的棲み分け)が有効で合理的な手段として機能する
    • 一般の住環境や青少年の健全育成を守ると同時に、地下化を防止して当事者の安全な労働環境や福祉的介入の経路を確保する建設的な調停策となり得る

■ 7. 被害者なき犯罪と国家の役割

  • 抽象的法益による処罰の危険:
    • 売買春はいわゆる「被害者なき犯罪」であり、第三者に具体的な危害を加えるものではない
    • 「風紀」という主観的・抽象的法益のために重い刑罰を科すことは性的自己決定権やプライバシーを侵害する
    • 刑罰の謙抑性を逸脱して国家による道徳の強制へと至る危険性が高い
  • 国家が取り組むべき課題:
    • 風紀の乱れは刑事罰を正当化する理由になり得ない
    • 勧誘行為の刑罰を使った路上からの排除ではなく、貧困や虐待等に対する実質的な福祉的・労働法的支援こそ検討すべき課題である

MEMO: