■ 1. 本稿の前提
- 対象範囲:
- ツイッターで私の視界に入る「アンチフェミ」の派閥だけを一覧表として説明する
- ここにない派閥がありそうなら教えていただきたい
- 「派閥」の意味:
- 派閥といっても主要な力点が違うというだけである
- 一個人が2つ以上の派にまたがる場合がある
- 相互に不干渉で共存する場合も、対立し別の派閥を攻撃する場合もある
■ 2. フェアネス派: 福祉派
- 成り立ち:
- 貧困、障害、虐待などの問題を扱ううちに、支援の男女格差を問題視してきた
- 子供の福祉の観点から"虐待ママ"問題や"司法の女割"論にも積極的
- 「弱者男性」の語義:
- 福祉の網から漏れる人々という意味で古くからこの語を使ってきた
- フェミニズムとの対立理由:
- 本来フェミニズムと対立する必要はない
- 論壇フェミニズムが《常に女性は被害者で男性は加害者》という教義を持つ
- その教義のまま支援の比重に首を突っ込むため対立する
- 構成層:
- 支援職の男性が多い
- 基本形を一番保っているのは一柳良悟であり、小山晃弘もここの出身
■ 3. フェアネス派: シングルファザー・男性DV被害者
- 構成層:
- シングルファザーとなったあとシングルマザーとの支援格差に行きあたった者
- 離婚時の親権争いでハーグ条約違反の日本の司法に憤慨している人
- DV認知活動によって声を上げ始めた男性DV被害者
- 共通属性:
- 結婚した結果として女に失望した人々という属性である
- 主張の力点:
- "司法の女割"などに一番批判的
- 母親が子供を殺した場合、ただ殺すより虐待してから殺すほうが罪が軽くなるという学術論文を紹介したのもこの派
- 論壇の中心:
- 幅広いが医者など頭のいい職業の人が多くなりがち
■ 4. フェアネス派: リーンイン・フェミニスト
- 主張:
- 女性の社会進出を支持する
- 管理職や政治家などバリキャリ職の女性比率を、バリバリ働く正攻法で上げることを推進する
- 日本ではジェンダーギャップ指数改善を錦の御旗として掲げる
- 思想的背景:
- 「リーン・イン」を代表として2010年代のアメリカを席巻したフェミニズム思想である
- 「アンチフェミ」扱いされる理由:
- 「アメリカ女性のように働け」と主張してゆるキャリ層や主婦、無職女性と対立する
- 家事育児負担には「アメリカのように外注するかパートナーを主夫にしろ」と主張する
- その主張が多くの女性の価値観と反するため日本では「アンチフェミ」扱いになっている
- 構成層:
- 管理職の女性比率の数値目標達成を求められる人事関係者など社会的立場は比較的高め
- 「女性に働きやすい職場」を作るためにしわ寄せを食った人が、自立して働けという主張に賛同する例も多い
- 医者が多く、女医もかなり多い
- バリキャリ女性お役立ち情報を発信するのでバリキャリ女性の支持者も一定数いる
■ 5. フェアネス派: 機会平等派(女子枠批判派)
- 主張:
- 女性向けアファーマティブアクションをアンフェアとして非難する
- 外国では違憲判決が出ており国内でも違憲だろうと主張する
- 現在は女子枠批判が一番ホットな話題になっている
- キャッチフレーズ:
- 男女差別で不当な利益を得たなら、その主体であるシニア男性教授が辞めて席を空けろ、他人の腹で切腹するな
- 構成層:
- 入学枠や就職枠を争っている若く高学歴な男性が主体でかなりの数がいる
- これに法学や法曹の関係者も混じる
- 女子枠の出現により一気に増えた
- 代表例は慶應大学の國武悠人
■ 6. フェアネス派: 性犯罪冤罪危機感派
- 主張:
- 痴漢議論などでしばしば起こる「男性は全部犯罪者予備軍」的な扱いに反発する
- アメリカで黒人の犯罪率が高いからといって黒人全部を犯罪者予備軍として扱う意見を正義とみなす人はいない、というのがお決まりのセリフ
- 構成層:
- 議論の中心となる固定メンバーがいるというより、男性に薄く幅広く広がっている
■ 7. フェアネス派: セックスワーク擁護派
- 主張:
- コロナ禍などで明らかになったセックスワークが労働として扱われていないことを問題視する
- 構成層:
- インフルエンサーに男性はほとんどおらず女性のセックスワーク当事者が中心
- そのためか「アンフェの姫」的な扱いをされることが多い
- 他のアンフェと動機がかなり違うので意見対立も多い
■ 8. 恋愛論派: インセル(非モテ自認層)
- 語義:
- インセルは北米発祥の語で「involuntary」と「celibate」を組み合わせた混成語である
- 「弱者男性」を主に「モテない男性」という意味で使う傾向にある
- 勢力の推移:
- ゼロゼロ年代には比較的多かった
- 2010年代以降はフェアネス派に数で押されるようになった
- すももの登場で一時期揺り戻しはあった
- 女子枠問題などでフェアネス派の「アンチフェミ」が激増した結果、現在は完全に傍流になった
■ 9. 恋愛論派: ナンパ師
- 成り立ち:
- 主にゼロゼロ年代に伸びた「アンチフェミ」男性
- 単に自分の性欲を満足させようという人もいる
- パートナーを得られないと社会的スティグマまでつけられ人間扱いされないことへの防衛という動機で入った人もいる
- 特徴:
- 「恋愛工学」を自称する勢力が代表的
- 女性を確率論的に反応する存在とみなすのでミソジニー傾向が強い
- オペレーションズリサーチとも近しく、見合い・出会い系の最適戦略を博論として書いた鳩山由紀夫も先駆者的なところがある
■ 10. 恋愛論派: "進化心理学"論者
- 主張:
- 性的二形・繁殖戦略の違いは本能である
- その帰結として男女平等は女性の望みとして実現しないと主張する
- リーンイン・フェミニストが主張するパートナーの主夫化(下方婚)は女の本能に反するので実現しないというのがいつもの発言
- 論法:
- 政治的にこうあるべきという主張ではなく、このようにしかならないのだという主張の仕方をする
- 代表例はエボサイ
■ 11. 表現の自由派: 漫画表現の自由派
- 立場:
- 漫画表現の規制論に対抗している
- 石原都政時は都が規制派だったため相対的に左派と組むことが多かった
- 「アンチフェミ」扱いされた経緯:
- 矯風会(福音派=宗教右派)の影響を受けた北原らが"フェミニスト"を名乗り共産党と組んで規制派の代表となった
- 宗教保守的な主張をする規制派がフェミニストを名乗るようになったから「アンチフェミ」と呼ばれるようになっただけである
- 表現の自由派はそもそもフェミニズムを嫌っているわけではない
- 構成層:
- 漫画家・イラストレーター等は普通に女性が多く、女性身体表現の自由も相まって女性比率が高い
- 古くはオタク層だったが、漫画が普遍化したためかなり広い範囲に存在する
■ 12. 表現の自由派: 女性の自身の身体表現の自由派
- 主張:
- 女性が自分の性欲を満足させるために開放的な身体表現をして何が悪い、男性目線など気にしたことがないと主張する
- もっとあけっぴろげに見た目や性を売って何が悪いと主張する人もいる
- グラビアアイドルやセックスワーカーの権利擁護運動が該当し、性嫌悪フェミニストと対立する
- 構成層と不安定さ:
- 男性がこの派閥のアドヴォケイターとなることは少なく、女性中心の派閥である
- ミスコンに出ていることをプロフに書きつつルッキズム批判をする人などもザラにいる
- 派閥の出入り、賛成派と反対派の急転回は日常茶飯事である
■ 13. 政治性向派: 反極左
- 成り立ち:
- Woke以降フェミニズムが極左運動と接近した結果として、反極左の文脈の「アンチフェミ」が出るようになった
- 端的な例は草津冤罪事件で有名極左フェミニストが支援した虚偽告発への批判である
- 分布:
- 政治性向的には左派と目される大学教授から、cdbやもへもへなどのマイクロインフルエンサー、暇空などの極北まで広く分布する
- 極左サイドからは暇空あたりが目立つが、左派と目される大学教授まで反Wokeは普通にいる点に留意が必要
- これは米国民主党内での意見対立でも同様である
■ 14. 政治性向派: 伝統回帰保守派
- 現状:
- いまどきあまり見なくなってきた
- 夫婦別姓論議では別姓反対派という形で明瞭に認識される
- 筆者の対案:
- フランスのPACS的な「対等夫婦婚」制度を女性の社会進出を支援する文脈で提案している
- 内容は別姓OK、同性婚OK、夫婦が対等に養育費を負担し配偶者への扶養義務や財産分与はなしで親権は対等というもの
- 従来制度の男女非対称を排除するのが狙いである
■ 15. 政治性向派: 少子化対策派
- 主張:
- 少子化対策として強制ではないが「産め圧」を加えよと主張する
- 手段は税金や補助金による有形の傾斜、ないし無子者への無形のスティグマである
- 位置づけ:
- 女性のリプロダクティブライツと対立するので真っ向から「アンチフェミ」といえる
- それ以外の女性の権利についてはそれほど関心がない
- 支持層:
- 参政党がこの手の主張をしており、母性保護論争における母性保護派とも被るせいか女性の支持者が結構多い
- 社会の継続性や高齢者福祉を論点として薄く広く支持者がいる
- 女性のほうが寿命が長く高齢者福祉のお世話になる期間が長いため、子持ち女性が高齢化するとこの派閥に入る人が多い
- "女性の望み"冷笑派と重複するケースもある
- 個別の女性の望みを全部聞くと結局昭和の専業主婦になるケースが多いという指摘が重複の背景にある
■ 16. 冷笑派: アカデミアフェミニズム批判派
- 主張:
- 大学で教えられている学問としての「フェミニズム」が人文学としても社会学としても水準に達していないと懇切丁寧に指摘する
- 学問の水準ではないと言っているだけで、政治発言することを否定しているわけではない
- 影響と構成層:
- 社会学と人文学を焼きまくったためアカデミアでの影響は小さくない
- その性質上、大学教員や博士号持ちなどアカデミアの人間が主体である
- 代表例は不満研究事件の仕掛人のボゴジアンやリンゼイ
- 評価:
- 不満研究事件の結末を見る限り、実証系はともかく思想系の大学フェミニズムは学問を名乗るに足る水準に達していないという主張は証明されてしまったように見える
■ 17. 冷笑派: "女性の望み"冷笑派
- 主張:
- ネットで声高に言われる"女性の声"を総合すると昭和の専業主婦PTAおばさんの主張にしかならないと冷笑する
- その"女性の声"とは、エロ表現をやめろ、育児を自分でしたいから男の年収に頼るのは当たり前といったものである
- 性格:
- 逆説的にはフェミニズムを否定しておらず、自己矛盾の存在や羊頭狗肉であることを批判しているともいえる
- フェミニズムについていけないというあきらめから、MGTOWもここに入れてよい
- 代表例はeternal_wind
■ 18. 冷笑派: 嘘松嘲笑派
- 活動内容:
- 創作実話系の男性による加害ツイートについて、それが嘘であることを指摘し晒し物にする
- フェミ松速報などが分かりやすい例である
- 嘘松の性質:
- 正義属性vs悪属性の二分論ですべてを理解する
- 悪属性に加害される被害者という意識を持つ
- "悪属性"全体への無差別攻撃を主張する
- エコーチャンバー化が進み仲間内に受けそうな嘘をでっちあげてRTしあう
- ネトウヨやDS陰謀論と同様の陰謀論としての性質が強く、心的メカニズムは似たようなものだと推測される
- 批判側の問題:
- 嘘松批判もファクトチェックで済めばよい
- 相手の一番馬鹿な行動を取り上げる性質上、男女対立・ミソジニーの傾向が強まるようにふるまっている嫌いがある
- 最近は嘘松被害報告に露骨な障害者差別などが混じるようになってきたので、ちゃんと叩くべきという気持ちもある
■ 19. 派閥間の交差と対立
- 全体の関係:
- これらの派閥は必ずしも対立しておらず、個人が2つ以上の派にまたがる論説を唱えることは珍しくない
- 一方で対立し別の派閥を攻撃する場合もあるなど複雑な関係である
- 筆者の立ち位置:
- 筆者はリーンイン・フェミニストの派閥といえる立場である
- 恋愛論派への批判が多く、すももやエボサイを名指し批判した結果彼らからはブロックされている
- 今のアカウントは絡んでいないせいかブロックされていない
- 表現の自由派とはあまり交差せず、時たま意見が一致したときだけ助け舟を出す程度の交流にとどまる
- 政治系論壇ではもへもへからフォローされているが暇空からはブロックされている
- フェアネス派と恋愛論派:
- 最近も弱者男性という言葉の語義の主導権争いをしていた
- 必ずしも対立するわけではなく、「障害者の性の権利」は福祉論者とインセルの交差点になりうる
- 表現の自由派の不安定さ:
- 女性比率が特に高い「アンチフェミ」である
- 一方で割と簡単に規制派にスイッチする人もいる
- 規制派の主張と自由派の主張を同時にする人も珍しくない