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若年層で左派が弱い一つの説明:共産党のドブ板を参政党が継承したという仮説

要約:

■ 1. 本稿の仮説

  • 若年層で左派が弱い理由:
    • 「左派の高齢化」問題を、思想の左右ではなく組織能力の側面から説明する
    • 護憲運動ばかりで労働運動をやらない「左派」から若者が離れたという以前の議論を下敷きとする
  • 提示する仮説:
    • 支持層的に、共産党や社民党の後継勢力が参政党である
    • かつての共産党が持っていたドブ板の組織力を、参政党が継承した
    • 両者に共通するキーマンは篠原常一郎である
  • 沖縄県知事選の出口調査:
    • 50代以下すべての世代で古謝氏が玉城氏を上回る
    • 現役世代には7割以上が古謝氏に投票した世代もある
  • 問題の核心:
    • 左派ができなくなった名簿づくりなどの地味な仕事を、参政党がきっちりこなしている
    • 左派が参政党に負け出したのは、事務能力や社会人経験で負けているからである

■ 2. 参政党と共産党・旧れいわの支持層の重なり

  • 思想的には両極でも支持者は重なる:
    • 参政党と共産党、旧れいわ新選組は右と左の両極に見えるが、支持者の一部に重なりがある
  • 象徴的な争点としての反ワクチン:
    • 東大の分析では、コロナ以前からの反ワクチン層はれいわ・共産などリベラル政党とのつながりが強い
    • コロナ後に反ワクチン化した層は参政党へ急速に接近した
  • 実際の票の移動:
    • 2025年参院選の群馬選挙区では、れいわ支持層の57%が参政党候補に投票したとの出口調査分析がある
    • 選挙取材では、れいわから参政党、参政党かられいわという双方向の支持移動も確認されている
  • 両党の実像:
    • 単純な「右派と左派」ではない
    • 既成政治への不信や反エスタブリッシュメント意識を持つ浮動層を、左右それぞれの方向から取り合っている
  • 現場の証言:
    • 政治的な核を持たない層にとって思想は二の次であり、商品が同じなら新しい店で買うという感覚に近い
    • 2024年衆院選あたりから、れいわか参政党かで迷ったと話す人が多かった

■ 3. 昭和の類例: 共産党と公明党

  • 支持層のスイングには昭和期の類例がある:
    • 共産党と公明党は表面的には大きく異なるが、戦後高度成長期には同じ社会層を基盤として競合した
  • 両党が狙った層:
    • 自民党の企業・農村組織にも、社会党の労組にも十分に組み込まれていなかった層である
    • 具体的には都市部の未組織労働者や中小自営業者である
  • 組織化の手法:
    • 共産党は民商などの社会運動を通じてこの層を組織した
    • 公明党は創価学会の地域組織と生活相談を通じてこの層を組織した
  • 及川智洋の博士論文が示す構図:
    • 社会党、民社党はいずれも中小企業の取り込みを掲げたが実際には成功していない
    • 共産党系の民商は未組織労働者の吸収で成功をおさめ、それをしのいだのが創価学会である
    • 未組織労働者を基盤とする点で両党は厳しい競合関係にあり、1968年7月の参院選前には共産党から政治活動の不当妨害との抗議を受けている

■ 4. 元共産党員が関与した参政党の組織モデル

  • 篠原常一郎の経歴:
    • 日本共産党の専従職員や国会議員秘書を務めた
    • その後、民主党の国会議員秘書も経験した
    • 2020年の参政党結党前から関与した
  • 参政党が組織モデルとしたのは共産党と公明党:
    • 篠原氏本人が、党の組織づくりや運営システムについて両党をモデルに助言したと語っている
    • 末端で金を払い党を使って政治を変えたい人たちこそ主人公であるべきという発想から両党が浮かんだとする
    • 公明党と共産党は党員に強いアイデンティティーがある点でよく似ている
  • 共産党との相違点:
    • 篠原氏は共産党時代の経験を踏まえ、上意下達の組織にならないシステムを構築したと説明している
  • 政策の向け先:
    • 参政党の政策は、労組による賃上げに縁遠い非正規や自営業の労働者、主婦など「真ん中」の人々に向けられている

■ 5. 地方選挙の強さに見る共産党との類似

  • 国政の得票規模に比べ地方選挙に異様に強い:
    • 2023年の統一地方選では全国で100議席を獲得した
    • 結党からわずか3年ほどで全国に多数の地方議員を擁するに至った
    • 2024年には全国275支部を設立したと党自身が説明している
  • 参政党の選挙戦略:
    • 国政や首長選挙で派手な勝負をする一方、全国各地の比較的小さな選挙に候補者を送り込む
    • 地方議員を積み上げる戦略を取っている
  • 他の新党との違い:
    • 一発屋に近いNHK党やチームみらいのような、SNSでポピュリズムをやるタイプの新党とはかなり違う
  • 日本共産党との共通性:
    • 共産党は党員・地域組織を基盤に候補者を立ててきた
    • ビラ配りや支持者への働きかけといった地味な活動の積み重ねにより、国政での得票以上の地方政治上の存在感を持ってきた
    • 両党は思想的には正反対だが、党員を組織し地方選挙につなげる点で共通する
  • 単なる類似ではない:
    • かつて共産党で培われた、人を組織し地域に組織を作り選挙で動員する政治技術が、別の政治的メッセージのもとで参政党に流れ込んでいる
    • 参政党を単純に「左派の対極」と見るのは不十分であり、組織論から見ればかつて左派が得意とした政治のオルタナティブである

■ 6. 左派が失った手弁当のバックオフィス

  • かつての左派が持っていた機能:
    • 労働組合や地域組織のなかに、名簿を管理し会費を集め会計をつける役割があった
    • 会合を準備し候補者を地道に支えるという、目立たないが不可欠な「手弁当のバックオフィス」が存在した
    • これは特殊な能力ではなく、市井の労働者やPTAの母親たちが普通にやってきた程度の組織実務である
  • 現役世代の左派活動家の弱点:
    • SNSで目立つことや大きな理念を掲げることには長けている
    • 地味な組織実務を担い次の世代に引き継ぐ能力が弱くなっている
  • その弱点を象徴する事例:
    • オープンレターの名簿問題であり、作った本人が最後にキレている
    • Colaboの会計問題であり、少なくとも多数の修正が必要だった点は誰もが合意できるレベルである
    • いずれも個々の案件の是非とは別の水準で、組織実務の弱さを示す

■ 7. 参政党のメンバーシップと帰属意識

  • 参政党の特徴は神谷宗幣ではなく組織づくりにある:
    • 神谷宗幣という目立つ人物に目が行きがちである
    • 実際の特徴は組織づくりの側にある
  • メンバーシップ重視の設計:
    • 党員に具体的な役割を与える
    • 単なる集票要員ではなく、協働して組織を支えるコミュニティの一員として党員を扱う
    • これによりボランティア中心の全国的な選挙運動を可能にしている
  • 帰属意識の醸成:
    • 強烈なリーダーがいる一方、支持者に自分も参加している、自分も役に立っているという感覚を持たせる仕組みがある
    • 参政党の結束力の源は帰属意識であり、その醸成に成功している
  • 現在の左派との対比:
    • 左派は目立つ活動家個人の発信に依存している
    • 目立つ人物ほど個人プレーに流れやすい
    • 周囲の人間を継続的な組織活動へつなげる仕組みが弱くなっている

■ 8. 結論としての仮説

  • 移動しているのは思想だけではない:
    • かつて左派を支えていた、目立たないが組織を実際に動かす人材まで別の政治勢力に流れている可能性がある
  • 現役世代で左派が伸びない理由:
    • 「右傾化したから」だけでは説明できない
    • 目立ちたい活動家ばかりが残り、名簿を管理し金を数え電話をかけ会場を押さえ候補者を支える地味な手弁当の人材がいなくなった
    • そうした人材を組織化する能力を参政党のほうが持つようになった
    • 結果として、現在の左派の構成員の事務能力や社会人経験が参政党以下になった
  • 仮説としての位置づけ:
    • これはまだ仮説である
    • ただし両者の支持者の重なりまで含めて、一応筋が通った形で説明できる
  • 過去の共産党にすら学べない21世紀の左派:
    • スターリンが共産党を牛耳れるようになったのも、他の活動家気質の幹部と違って事務仕事を厭わなかったからである