■ 1. 側近の停戦進言とプーチンの拒絶
- 政権内の争点:
- 現在の前線で戦闘を凍結するか、ドンバス地方全域の制圧を目指すかが争われている
- 側近による停戦進言:
- ロイター通信が7月9日、クレムリンに近い複数の情報筋の話として報道
- 戦争長期化を防ぐため、現在の前線での戦闘停止を大統領に進言
- ロシア軍はクリミア半島と南東部4州、ウクライナ領土の約2割を実効支配している
- この支配地域を成果として停戦に持ち込む提言
- プーチンの反応:
- 戦争凍結を訴えた側近らを叱責し、ドンバス地方の完全制圧を命令
- ウクライナ軍のドローン攻撃が大統領の怒りを高め、軍に「強力な反撃」を指示
- 報道が事実である場合の意味:
- 戦争が泥沼化する中、クレムリン内部で早期停戦論をめぐる意見対立が存在する
■ 2. トカエフ発言とロシア国内の停戦論
- トカエフ大統領の発言:
- 7月25日、西シベリアのオムスクでプーチンと会談
- 紛争の性質を理解するのは難しいと述べた
- 若い人々が命を落としており、止めるべきだと訴えた
- 各国からこの旨を進言するよう要請を受けたと説明
- 二人のやりとりはロシア国営テレビで報道
- エリート層への影響:
- 独立系テレグラムチャンネル「クレムリンのたばこ入れ」(7月27日)の情報
- トカエフ発言がロシアのエリート層を動揺させ、停戦支持派が急増
- 軍内部でも生きたいという気持ちから、特別軍事作戦の終結を求める声が増加
- 背後に習近平がいる可能性:
- 同チャンネルはトカエフの呼び掛けの背後に習近平国家主席がいる可能性を指摘
■ 3. 習近平の姿勢とプーチンの動揺
- 習近平のプーチン評:
- 5月の米中首脳会談で、プーチンはウクライナ侵攻を後悔するだろうとトランプに発言
- 英フィナンシャル・タイムズが報道
- トカエフ経由のメッセージ:
- 習近平は中国語が堪能で個人的に親しいトカエフを通じてメッセージを送った可能性がある
- プーチンの反応:
- トカエフ発言に一瞬戸惑い、言葉を失った様子を見せた
- ペスコフ報道官は会談後、戦場の目標達成には現戦線での凍結は不可能と説明したと発言
- トカエフ発言は意表を突くもので、やりとりの公開は異例
- ゼレンスキーの発言:
- 7月初め、ロシア大統領の側近に停戦を支持する勢力がいると発言
- プーチン政権の攪乱を狙った発言とみられる
- プーチン周辺の調査が行われたとの情報もある
- コザク副長官の離脱:
- 長年の腹心であるドミトリー・コザク大統領府副長官が昨年秋に政権を去った
- 早期停戦、民主化、情報機関改革を直訴していた
- 公の場で発言しなかったため、政権への打撃はなかった
■ 4. 対ウクライナをめぐる政権の分裂
- 停戦支持派:
- テレグラムチャンネル「インサイダーT」の情報
- ナンバー2のミシュスチン首相
- 経済閣僚らテクノクラート
- ソビャーニン・モスクワ市長
- 多くのオリガルヒ(新興財閥)
- 国防省による戒厳令提案:
- 「クレムリンのたばこ入れ」(7月25日)の情報
- ウクライナ軍の攻撃強化により、現状ではロシアを守り切れないと大統領に報告
- モスクワ郊外の大手通販ワイルドベリーズの倉庫がドローンで初めて爆破された直後に提案
- ベロウソフ国防相の要請:
- 大統領に個人的に接触し、戒厳令の発動を要請
- 全土でなくとも、重要インフラのある防衛困難な地域への発動を求めた
- 戒厳令の憲法規定:
- 施行されれば戦時体制が導入され、選挙や集会が禁止される
- 動員や軍需関連の労働が国民に義務付けられる
- 2022年10月、ロシアが実効支配するウクライナ南東部4州に施行済み
- 動員のリスク:
- 国民の反発が予想され、政権にとってリスクが大きい
■ 5. 軍・治安機関内の権力闘争
- ゲラシモフとベロウソフの対立:
- ロシアの軍事ブロガーによれば、制服組トップと背広組トップが犬猿の仲
- 国防相が頻繁に軍事作戦を大統領に報告することに、参謀総長が激怒
- 参謀総長が戦況を大幅に水増しして報告していることに、国防相が激怒
- ベロウソフの立場:
- 経済学者出身で大統領の信頼が厚い
- 首相に転出するとの憶測がある
- ゾロトフ長官の猟官運動:
- 大統領のボディーガード出身で強硬派の国家親衛隊長官
- 次期国防相ポストを目指しているとの未確認情報がある
- FSB長官の更迭説:
- 情報分野で失態が続いたボルトニコフ長官が更迭されるとの憶測
- 後任にコロリョフ第一副長官が起用されるとの見方が独立系メディアで報道
- ショイグへの捜査:
- この2年、ショイグ安保会議書記(前国防相)の側近らが次々に検挙された
- ショイグ本人にも捜査が進み、刑事事件の被疑者になる可能性がある
■ 6. 開戦後初の下院選
- チャイコ総司令官の誕生日パーティー爆破事件:
- 8月1日、モスクワ中心部の高級レストランで爆弾が爆発
- 5人が死亡、20人以上が負傷し、軍部や情報機関を震撼させた
- 軍高官の爆殺の続発:
- モスクワでロシア軍高官が爆殺される事件が続発している
- 軍内部にウクライナへの協力者がいるとの憶測が出ている
- 下院選の実施:
- 9月18日から20日にかけて、開戦後初の下院選が実施される
- 国民の不満の高まり:
- ロシアの選挙は毎度「官製無風選挙」である
- 今回は戦況長期化、インフレ、税金・公共料金値上げへの不満が高まっている
- 与党の支持率低下:
- 全ロシア世論調査センター(VTsIOM)の調査で統一ロシアの支持率は30%程度
- 開戦後最低水準であり、与党はプーチンを前面に立てて選挙戦を乗り切る構え
- 共産党の反戦姿勢:
- 野党第1党の共産党は反戦を前面に掲げつつある
- マルハエフ下院議員は現状が続けば社会不安や混乱が拡大し、社会的爆発を招くと警告
- ジュガーノフ委員長はこのままでは1917年のような革命が起きると予測
- 今後の注目点:
- ウクライナ戦争の展開を探る上で、下院選前後の動向が要注意