■ 1. 問題提起: 約束を機能させる人と仕組みの衰弱
- グテーレス事務総長の自己評価:
- 9月17日のAP通信の取材で、軍隊も情報機関も資金もなく、あるのは声を上げる力と人を集める力だと語った
- これは諦めではなく、事務総長という仕事の本質を正確に表した言葉と受け止める
- 国連の権威の揺らぎ:
- 師のセルジオ・デメロ氏が2003年にバグダッドの爆破テロで死去した当時、国連は力はなくとも権威はある存在だった
- 20年余りを経て、いまはその権威すら揺らいでいる
- 調停者の減少より深刻な問題:
- 約束を約束として機能させる人と、そのための仕組みが弱っている
- 約束が機能する条件:
- 約束は言葉にしただけでは成立せず、相手が破らないと信じたとき初めて抑止や交渉の土台になる
- 当事者同士で信じ合えないとき、約束を預かり履行を見届けるのが本来の調停者の仕事
- 今週の各地の出来事:
- 国連総会で米大統領はICC脱退を呼び掛け、日本の首相は旧敵国条項の削除を求め、ウクライナ大統領は対ロ圧力の継続を訴えた
- 武装勢力がバベルマンデブ海峡に手を伸ばし、サウジアラビアはホルムズと紅海の「二重封鎖」に追い込まれた
- ロシアでは与党が下院選で過去最多の議席を得て、侵略継続への「信任」を演出した
- 9月24日にワシントンで米中首脳会談が行われた
- 共通する構図:
- 約束を預かる器が弱り、履行を保証する者がいなくなっている
- その空白を地域大国、武装勢力、二国間の取引が埋め始めている
- 国際秩序の軸足が「ルール」から「取引」へ移りつつあり、日本が自らの言葉を「約束」に変えられるかが問われる
■ 2. 調停者の椅子が空いている: 国連の弱体化
- 第81回国連総会のテーマ:
- 9月22日開始の一般討論のテーマは「信頼の回復、変革の管理:すべての人のために成果を出す国連」
- 今年ほどこのテーマの重さが際立った年はない
- 主要首脳の欠席:
- 習近平国家主席、プーチン大統領、モディ首相はいずれもニューヨークに来なかった
- 習近平国家主席は総会ではなく9月24日の米中首脳会談を選んだ
- 主要国が多国間の舞台より二国間の取引を優先する姿が日程に表れている
- 会合はあるが実行力が伴わない:
- 9月23日に事務総長主催で気候行動と公正な移行に関する会合「気候サミット2026」が開かれた
- 問題は会合の有無ではなく、確認された言葉を各国の行動に変える力がどこまで残っているか
- グテーレス事務総長の最後の一般討論演説:
- 世界の断層は広がっていると述べ、相互依存の上に築かれた世界を訴えた
- 大国に向けて、その力はそれほど「超」ではないと釘を刺した
- 10年間、大国の拒否権と自国第一主義に阻まれ続けた人物の静かな抵抗と受け止める
- グテーレス事務総長への評価:
- 国連難民高等弁務官、ポルトガル首相を務め、国連システムに精通した適材適所の人選だった
- 在任中は自国中心的な常任理事国、パンデミック、常任理事国自身による侵略戦争に直面した
- 調整機能とモラルリーダーとしての役割を十分に果たす機会を得られなかった
- 違う時代であればもっと大きな仕事ができた人物であり、個人的に残念に思う
- 紛争の急増を示すデータ:
- ウプサラ大学によれば2025年の国家間紛争は8件で、2年連続倍増し1946年以降最多
- 国家が当事者となる紛争も過去最多の65件にのぼった
- 組織的暴力による死者は約24万4,600人で、1994年のルワンダ以来2番目の多さ
- 本稿の問い:
- 紛争が増えるほど調停者が必要になるのに、調停者の力が最も弱っているという逆説
■ 3. 「無法者」と呼ばれた米国
- トランプ大統領の国連演説:
- イランへの軍事行動を正当化し「交渉か、殲滅か」の二択を突き付けつつ、米イラン協議にも触れ硬軟を使い分けた
- ICCを「邪悪な人々だらけ」と非難し、全加盟国に脱退を呼び掛けた
- グリーンランドについて前例のない合意に達したとし、大規模な軍事基地を二つ建設すると表明した
- キューバを「破綻国家」と呼び、キューバ代表団とイラン代表団の大半が退席した
- 国際危機グループ(ICG)の評価:
- 9月21日の特別報告で、米国は国際法秩序の擁護者から「公然たる無法者」へ変わったと評した
- 多国間体制は否定しないものの、PKO縮小要求、拠出金の支払い遅延、イデオロギーの押し付けで国連に深い傷を負わせている
- 安保理は米中ロの「二線級の案件」では折り合えるが、米イスラエル対イラン、ウクライナ、スーダンでは動けないことでしか存在感を示せていない
- 現場経験との符合:
- イラク占領統治期、米国主導のCPAと国連の間には正統性や主導権をめぐる摩擦が絶えなかった
- それでも当時の米国は国連の看板を必要としていたが、いまはその看板すら不要と言い始めている
■ 4. 資金が止まると調停も止まる
- 米国の分担金未払い:
- 9月11日と15日に計8億2,700万ドルを支払ったが、なお約42億ドルが未払い
- PKO予算に11億ドルを送る計画は外交筋の情報にとどまり未確認
- IAEAの資金難:
- 年間予算の約45%を米中2カ国が負担しているが、いずれも支払いが遅れがち
- グロッシ事務局長はイランで約6カ月間現地査察ができていないと述べ、深刻な拡散懸念を表明した
- 核査察の必要性と矛盾:
- 戦争終結には60%濃縮ウラン約440キロの行方確認と、瓦礫に埋もれた核施設の査察が必要
- それを担う機関が資金不足に陥っている
- 査察を求める大国が査察の費用を払っていないのが核不拡散体制の実態
- 開発資金の激減:
- OECDによれば2025年のODAは実質で前年比23.1%減と統計史上最大の落ち込み
- 戦争にお金が流れ、平和と開発からお金が引き揚げられている
■ 5. 次期事務総長に求められる資質
- 後任選びの状況:
- グテーレス事務総長の任期は2026年12月31日まで
- 9月18日の第3回非公式投票でグリンスパン氏(コスタリカ)とロドリゲス=バーケット氏(ガイアナ)が支持を集めた
- チリのバチェレ元大統領は撤退を表明し、候補は7人に絞られた
- 誰がなるかより何ができるか:
- 誰が就任するか以上に、何ができる人物かが重要
- ICGが求める三つの役割:
- 合意できる領域を探す実務的な仲介者
- 資金削減のなかで中核機能を守る組織の改革者
- 国際法と国際協力の価値を訴え続ける擁護者
- 付け加えたい四つ目の資質:
- コフィー・アナン事務総長のように、大国に「使われる」のではなく大国が「使いたくなる」調停者であること
- 仲介者の価値の源泉:
- 権限の大きさではなく、当事者がその人を通さないと得られないものを持っているかで決まる
- それは情報、信頼、面子を保ったまま譲歩できる出口
- 声を上げる力と人を集める力は、この出口をつくるための道具でもある
- 見るべき基準:
- 演説のうまさではなく、対立する当事者が自分の約束をその人に「預けてもいい」と思えるかどうか
■ 6. 米イラン戦争の構図
- ラックマン氏の三つの次元:
- 英FT紙のギデオン・ラックマン氏は、米イラン戦争を戦場、経済戦争、ナラティブの戦いの三次元で捉える
- 三つとも米国に不利な方向に動いているとの指摘に同意する
- 開戦からの推移:
- 2月28日に米国とイスラエルが攻撃を始め、圧倒的な軍事的優位で短期決着を見込んだ
- イランは最初の攻撃に耐え、ホルムズ海峡を封鎖し湾岸諸国に反撃した
- 経済戦争への移行:
- 米国は軍事力での海峡再開は容易でないと判断し、イランの港湾封鎖に軸足を移した
- 米軍の護衛で海峡の輸送量は一時戦前の約3分の1まで回復し、原油は100ドルを下回る水準に抑えられていた
- その計算を狂わせたのがイエメンのフーシ派
■ 7. バベルマンデブ海峡に伸びた手
- フーシ派の攻勢:
- 9月3日から攻勢を強め、イエメン西岸の紅海沿岸の大半を掌握したとされる
- 港湾都市モカを押さえた後、9月11日に海峡中央のペリム島へほぼ無抵抗で進出したと伝えられる
- 当初の情報はイエメン政府筋によるもので、確認に時間がかかった
- 海峡の新たな当局:
- ICGのアフメド・ナージ氏は、誰が通れるかを決めるのはフーシ派だと評した
- フーシ派は船舶に危険はないとしつつ、サウジ船舶は対象外と明言した
- ホルムズをイラン、バベルマンデブを親イランのフーシ派が押さえ、中東原油の出口の両方に同じ側の手がかかった
- 9月19日のサウジ攻撃:
- フーシ派はリヤドの重要施設とヤンブーのアラムコ施設をミサイルとドローンで攻撃したと発表した
- 連合軍は迎撃し被害なしとしたが、ロイターはリヤドの空港付近の黒煙の目撃証言を伝え、情報は食い違う
- それ以前の被害:
- 8月にジーザーンのアラムコ製油所が繰り返し被弾し操業停止した
- 9月8日にアブハ、ジーザーン、ハミース・ムシャイトなどが攻撃され73人が負傷したとサウジ政府が発表した
- SNSで拡散されたアブハ空港や空軍基地の被害はフーシ派側の主張にとどまり、慎重な確認が必要
- 報復の連鎖:
- 9月23日にサウジがモカを空爆し、フーシ派発表で民間人6人以上が死亡した
- 24日に連合軍はヤンブーとターイフを狙った弾道ミサイル6発を迎撃したと発表した
- フーシ派はジーザーン州に数十発のミサイルとドローンを撃ったと主張した
■ 8. 東西パイプラインへの攻撃
- サウジ最大の打撃:
- 9月10日、ペルシャ湾岸からヤンブー港へ原油を運ぶ全長約1,200キロの東西パイプラインが停止した
- ホルムズ海峡を迂回するための生命線
- 攻撃主体の事実関係:
- 攻撃はフーシ派によるものではない
- サウジ当局はイラクから飛来したドローンと非難し、イラク政府も発射地点を南部マイサン県と認め現地司令官を解任した
- イランの支援を受けるイラクのシーア派民兵の関与とみるのが自然
- 二方向からの圧力:
- サウジは南からフーシ派、北からイラクの民兵の圧力を受けている
- 復旧の見通し:
- IEAによればサウジの原油供給量は8月時点で30年以上ぶりの低水準
- 9月22日に再稼働が報じられたが、24日時点でヤンブーの積み込みは未再開で、数日以内の再開見込み
- 当面の目標は日量約400万バレルで、日量700万バレルの全面復旧には最大6週間かかる
- 復旧しても二つの脅威は消えないため楽観できない
■ 9. 同盟国はどこまで守るのか
- イスラエルへの接近:
- アクシオスによれば、米中央軍司令官主催で米、イスラエル、サウジ、UAEなどの軍高官がドイツで非公開会合を開いた
- 議題にはフーシ派へのサウジの作戦をイスラエルが支援する可能性も含まれた
- ガザをめぐる反イスラエル感情が根強いなかでイスラエルに頼らざるを得ない点に苦境の深刻さが表れている
- 英国の限定的関与:
- バーナム首相は9月21日、英空軍給油機1機でサウジ機への空中給油を行うと発表した
- 対象は防衛任務に限られ、期間を区切って見直す慎重な関与にとどまる
- 米国の攻撃見送り:
- ムハンマド皇太子は9月上旬に1日2回トランプ大統領に電話しフーシ派攻撃を要請したが、断られ情報提供にとどまった
- 再要請で米中央軍が攻撃案まで用意したが、トランプ大統領は再び見送った
- 理由は海峡のさらなる危険化、原油価格の上昇、サウジ主導に任せたい意向
- 軍事力の限界の認識:
- ラックマン氏はこれを米国が軍事力の限界を認識し始めた兆候と読んだ
- 第1次政権でタリバン打倒を断念し和平交渉に踏み切ったように、フーシ派とも戦うか「損切り」かの判断を迫られている
- 民主主義の弱点:
- 11月の中間選挙を控え、ガソリン価格高騰は共和党に大きな痛手になりうる
- イラン指導部は権威主義体制で国内不満を抑え込めるが、民主主義国のリーダーは有権者の財布から逃れられない
- 経済戦争の我慢比べでは民主主義の側が先に音を上げやすい構造がある
■ 10. メッカ共同防衛協定の試験
- 協定の内容:
- 8月7日、サウジ、パキスタン、トルコがメッカで共同防衛協定に調印した
- NATO第5条にならい、1カ国への武力攻撃を全加盟国への攻撃とみなす条項を持つ
- 加盟国の不作為:
- 調印後サウジは繰り返し攻撃を受けたが、パキスタンは非難のみで軍事介入を表明していない
- トルコも連帯声明のみで航空機も部隊も送っていない
- SNSでは、抑止しない防衛協定はプレスリリースにすぎないとの批判が広がった
- トルコの説明:
- フィダン外相は要請があれば技術面の軍事支援に応じるとしつつ、サウジが米イラン紛争に引き込まれるべきではないと語った
- NATOも第5条発動は一度だけだが張り子の虎とは呼ばれない、協定は始まったばかりだと反論した
- 支援には正式な要請と協議が必要との立場
- 協定の位置づけ:
- トルコは協定を軍事同盟というより「政治的な保険」と位置づけている
- 問題はその曖昧さを相手がどう読むか
- コミットメントの信憑性:
- 交渉理論では、信憑性は約束を守らなかったときに払うコストの大きさで測られる
- 反撃しなかったときの代償が小さければ、相手は約束を割り引いて受け止める
- オバマ政権がシリアの化学兵器使用を「レッドライン」としながら軍事行動を見送ったのが典型例
- 抑止の本質:
- 抑止とは相手の頭の中に「割に合わない」という計算を植え付けること
- 協定締結後もフーシ派の攻撃は続いており、メッカ協定は最初で最重要の試験を受けている
- G7声明の限界:
- 9月21日のG7外相声明はフーシ派の海峡接近を「容認できない脅威」と断じ、イランに武器支援停止を求めた
- 声明がどれほど強くても、海上で裏付ける手段が示されなければフーシ派の計算は変わらない
- フランスの派兵:
- マクロン大統領は9月24日、ヤンブー防衛のため兵士、レーダー、防空システムの派遣を表明した
- 協定加盟国より先に、協定外の国が部隊派遣を表明したことになる
- 外交の現場で見るもの:
- 声明文そのものより、それを破ったときに誰が何を失うのか
- 紅海で注目すべきは戦力差ではなく、フーシ派が「まだ失うものがある」と考えているかどうか
■ 11. 空白を埋める者たちと米イラン接触
- 空いた椅子に座る者:
- 調停者の椅子が空けば誰かが座ろうとするが、中立な仲介者とは限らない
- 国連総会を利用した米イラン接触:
- 7月以来の接触がカタールの仲介で行われ、ウィトコフ特使らが関与した
- イラン側は23日にカタールの仲介者を通じて約2時間メッセージをやり取りしたと説明し、間接協議だったとみられる
- アラグチ外相とウィトコフ、クシュナー両氏の協議も報じられ、パキスタンとエジプトも仲介したとされるが、対面の有無は要確認
- トランプ大統領は非常にうまくいったと語り、ルビオ国務長官は大きな突破口ではないと述べた
- イラン側の提案:
- 米国が軍事的圧力を緩め、封鎖を解き、外交的解決を公式表明すれば7日以内にホルムズ海峡を再開できるとした
- 最長60日の地域停戦、海峡の段階的再開、封鎖解除、アラブ諸国への攻撃停止という行程表を示したと報じられた
- トランプ大統領はイランが先に善意を示さない限り封鎖を解かない立場
- 争点の移行:
- 争点は「何をするか」から「どちらが先に動くか」に移った
- 双方は封鎖解除と海峡再開を交換する第1段階から始める段階的合意を検討していると報じられた
- イラン高官はなお隔たりは大きいとし、トランプ大統領は合意が11月3日の中間選挙後になる可能性を示唆した
■ 12. 「順番」の壁を越える器
- 調停で最もよく出会う壁:
- 先に動いた側は相手に裏切られれば丸損になる
- 解決の仕組み:
- 同時履行と段階的な相互措置を組み合わせる
- 第三者が双方の約束を預かり、一方の履行確認時点でもう一方の措置が発動する「器」をつくる
- ホルムズでは、米国の封鎖緩和とイランの航路安全保証を同時に行い、中立の監視団が履行を確認する形が考えられる
- フランスの決議案起草:
- フランスは米国と調整しつつ、航行回復の国際ミッション設置を柱とする安保理決議案の起草を始めた
- 過去の同様の試みは中ロの反対で頓挫し、回覧時期も未定
- それでも「順番」の問題を解く第三者の器を用意する動きとして注目する
- 続く現場の緊張:
- 米中央軍は7月再開の封鎖執行で商船109隻を転針させたと発表した
- 9月14日予定のイランと湾岸諸国の協議はオマーンが延期を発表したまま再開のめどが立たない
- 影響力競争としての仲介:
- カタール、パキスタン、エジプト、オマーン、トルコと地域の国々が入れ替わり仲介役の椅子に座ろうとしている
- BRICS首脳会議で議長国インドがプーチン、習近平、ペゼシュキアン各氏を迎えたのも同じ流れ
- インドの元国家安全保障副顧問サラン氏はこれを「インド流のパワープレー」と表現した
- 仲介は中立な善意の行為であるだけでなく、影響力を競う舞台にもなっている
■ 13. 板挟みのイラク
- 有志連合の撤収期限:
- 米軍主導の有志連合の撤収期限は9月30日で、イラク政府は「主権の日」と位置づけてきた
- クルド自治政府の閣僚は月末までの撤収完了見通しを示したが、今週の進捗は確認が必要
- 危うい均衡:
- イラクは安全保障と金融を米国に、政治とエネルギーをイランに頼っている
- 米国による金融面の圧力:
- 米財務省は4月、ドル資金のイラン流出の疑いから約5億ドルの米ドル紙幣の輸送を直前に止めた
- 7月初めの再開までにディナールは並行市場で公定レートより約15%から16%下落した
- イランによる供給削減:
- 衝突後イランはイラクへのガスと電力の供給を大幅に絞り、電力輸入は70%減った
- 現実化した懸念:
- 東西パイプライン攻撃がイラク領内から行われた
- 米軍撤収後にイラク政府が親イラン武装勢力を抑え込めるかという懸念が現実の形をとった
- 治安の空白への警戒:
- 「撤収完了」の発表と「治安の空白」という現実の間に溝ができると、最初に流れ込むのは武装勢力
- 9月30日は単なる期限ではなく新しいリスクの始まりとして見る必要がある
■ 14. 一歩引いて次を描く中国
- 市場の反応:
- ブレント原油先物は9月11日に110ドルに迫り、再稼働報道で一時100ドルを割り込んだ
- 24日にはフーシ派の新たな攻撃で一時108ドル台まで上昇した
- 中東と極東を結ぶ大型タンカーの用船料は8月末から8割上がり、モノはあっても届かない状態が価格を押し上げている
- 中国の石油消費ピーク:
- 日経の多部田俊輔氏の分析によれば、シノペック首脳は中国の石油消費が2025年にピークを迎えた可能性が高いと明らかにした
- 2030年ごろとされた予測が大きく前倒しになった
- 中国が揺らがない理由:
- ロシア、中央アジア、ミャンマーからのパイプラインを整え、原油輸入の中東比率を約3割まで下げた
- 巨大な備蓄を背景に輸入量を調整し、世界の原油価格を左右する存在になっている
- 皮肉な帰結:
- トランプ大統領は「エネルギー・ドミナンス」を掲げるが、実際の行動は米国が築いた「石油の世紀」の秩序を終わらせている
- 結果として中国の新しいエネルギー秩序づくりを助けている
- 介入しない関係者としての中国:
- CSISは、中国が「安定した、介入しない関係者」として評価を高めていると指摘した
- 中国は戦争反対を口にしつつ、イランへの実質的支援は限られ、海峡支配を手放すようイランを公に説得してもいない
- 火事場から一歩引いて次の時代の設計図を描き、主導権を握る準備をしている