■ 1. 警察によるSNS公開警告への問題意識
- 警察のX上での公開警告:
- 各地の警察が、児童の性被害につながると判断した投稿に「警察からの警告です」と公開返信している
- 警告を称賛する世論:
- SNSでは「仕事が早い」「よくやった」と警察の威圧行為を称賛する声が散見される
- 特に「キモい奴らは国家権力が威圧しても構わない」という意見には辟易とする
- 批判者への決めつけ:
- 警察権力の横暴に異議を唱えると、小児性愛者だから文句を言うのだという趣旨のコメントが付く
- 問題の核心:
- この警察の行為は、端的に言えば「文化の上塗り」である
■ 2. 前提: 警察庁主導の組織的施策
- 当初の誤認:
- 雑な判定やテンプレ的な対応から、一部の県警がAI判定Botを導入したと思い込んでいた
- 警察庁の通達:
- 2025年12月の通達で、警察庁は各県警にSNSのサイバーパトロールを求めた
- 「児童の性被害等につながるおそれのある不適切な書き込み」を発見し、警察アカウントから注意喚起・警告する内容
- DMではなく公開で警告することが明記されている
- 警告が妥当な場面:
- 隠語を用いた闇バイトなど違法行為の計画に対する警告なら理解できる
- 未成年者と思しき相手に性行為の交渉や画像の売買を明確に依頼している場合も理解できる
- 今回の対象:
- 取り沙汰されたのは「かぶりつきたい」という返信にすぎない
■ 3. 「かぶりつきたい」の意味
- 問題となったやり取り:
- JKを名乗るポスト主の「性的」な画像に対し、あるユーザーが「かぶりつきたい」と返信した
- 事案自体の不確かさ:
- ポスト主の画像は厳密な意味で性的なものではない
- ポスト主が本当に女子高生かは分からない
- 返信したユーザーの年齢も明らかではない
- 儀礼的コミュニケーション:
- 「かぶりつきたい」は儀礼的コミュニケーションにすぎない可能性が極めて高い
- 性的なニュアンスがあり、人によっては「キモい」と感じることは確かである
- 実際に会って身体にかぶりつくという意思表示ではない
- SNS独特の掛け合い:
- 蠱惑的な写真に少し大げさなリアクションを返す、上の句に対する下の句のようなもの
- 「投稿を受け取った」「そのノリに参加する」という意味合いが強い
- 手料理写真の例:
- 手料理写真に「一口食わせろ」と返すのが強盗の意思表示ではないのと同じである
■ 4. 警察の警告による文化の規範的上書き
- 萎縮の発生:
- 定型的な掛け合いに警察がいちいち警告すると、ユーザーの間で萎縮が生じる
- 「いつもの悪ノリ的な応答」に、警察が児童性犯罪の文脈でマジレスをしてくる
- 警察は国家の暴力装置であり、権力である
- 規範による上書き:
- 警察は権力を用い、「けしからん」と考える文化を警告で萎縮させようとしている
- 特定のコミュニケーション文化を自分たちの規範で上書きしようとしている
- 警察庁の自覚の程度は不明だが、運用の実情から結果的にそうならざるを得ない
- 表現の自由の焦点:
- この点が表現の自由の観点から考える際の最大の焦点である
- 是正の担い手:
- 文化自体が不健全だという問題提起はありうる
- ただしそれは市民間の言語活動で為されるべきで、国家権力が半強制すべきではない
- 警察は少なくとも自らの権力に自覚的、抑制的であるべきである
- 介入の限度:
- 明確な犯罪行為が読み取れる場合は警察の介入もやむを得ない局面がある
- 文脈を無視して特殊なコミュニケーション文化を公開で警告するのは、国民の文化活動への不要な介入である
■ 5. 警告の陳腐化
- 警察の威信の失墜:
- 「かぶりつきたい」に警告するような雑な運用を続ければ、警察の威信が失墜しうる
- ユーザーの反応は「萎縮するか」「無視するか」のいずれかになる
- ブロックによる無効化:
- Xではブロックもミュートも可能で、警察アカウントをブロックすれば終わりである
- 誤作動する火災報知器:
- 誤作動を繰り返す報知器は軽んじられ、本当の火事でも人が逃げなくなる
- 雑判定の警告が無視されるようになれば、本当の「警告」も届かなくなる
- 最悪の帰結:
- 警察を恐れる人は合法的なコミュニケーション様式にまで萎縮する
- 警察を恐れない人は陳腐化した警告を無視するだけである
- その結果、税金が無駄に費やされる
- この「パトロール活動」に用いられる人件費も問題となる
■ 6. 「キモいから強権で威圧していい」の否定
- 権力による威圧の不当性:
- 主観的にいかにキモくとも、違法性の薄い言動を権力者が濫りに威圧して良いわけがない
- ソフトな行動統制:
- 「もし犯罪を犯したなら」という条件文で巧みに法の網目をかいくぐっている
- 実態は警察権威を利用したソフトな行動統制である
- 予防名目の危うさ:
- 児童性犯罪は嫌悪が強いテーマのため、予防なら多少広く警告してよいと考えがちである
- しかしこの原理は児童性犯罪以外にも射程を広げられる
- 拡大適用の想定:
- 薬物使用、闇バイト、違法風俗を示唆するように"見える"投稿にも同様の警告が付きうる
- 「犯罪とは断定していない」としつつ公式警告が大量に付く状況が想定される
- 具体例:
- 「月曜つらすぎ。もうクスリでもキメんと会社行けんわ」という投稿にも警察の警告が付きうる
- そのようなSNSのあり方を受け入れられるかが問われる