■ 1. 発端となった逸話
- コーヒーをこぼして退席した外資系企業:
- ある業界団体の会合で、意図せず出席者から価格の話が出た
- その瞬間、外資系企業の出席者が自席のコーヒーを派手にこぼして注目を集めた
- そのうえで「当社はここで失礼します」と告げて退席した
- 昔聞いた話であり、都市伝説かもしれない
■ 2. 派手な振る舞いの狙い
- 退席者を印象づける効果:
- コーヒーをこぼすことで、誰が退出したかを同席者の記憶に残せる
- 後の調査で追及されても、同席者がその会社は参加していなかったと思い出せる
- 同様の手法:
- テーブルを叩き、その話は聞けないと言って退席する方法を資料で読んだ例がある
- 机をひっくり返す、靴を脱いで机に置くなど、印象に残る奇行を推奨するコンプライアンス部門もある
- コーヒーをこぼすのはパフォーマンスだが、それ以外はマニュアル通りの対応
■ 3. 都市伝説ではなく通常の実務
- 同業他社との価格の話題への対応:
- 明確に拒絶して退席し、その顛末を記録に残すのが普通の実務
- 黙ってその場にいてはいけない
- 「そういう意図ではない」という言い訳は通用しない
- 同席だけで共犯とみなされるリスク:
- 会話に参加しなくても、談合の会議にずっといたと言われるだけで共犯認定される
- 本題に入る前にすぐ退出したと示すことはリスク管理上も重要
■ 4. 企業での教育とルール
- 外資系企業のeラーニング:
- 競合と価格の話が出たら席を立ち、その場を離れるよう教えている
- その場にいること自体がまずい
- 日本の外資系企業でも同じeラーニングを受ける
- 営業以外でも客に会う人は、価格の話をするなと繰り返し念を押される
- 毎年の必須教育として学ぶ
- ある英国企業の慣行:
- 営業メールの署名に全員「Pricing is at the sole discretion of the retailer.」と入れる
- 社内で価格の話をする際にも毎回この文言を唱える
- 記録の残し方:
- 会合の議事録にも、席を立って退出した旨を記録してもらうよう教わる
- 退席宣言をして議事録に残すよう指示したうえで退室する
- 退出の経緯と議事録等を上司確認のもとで作成する
- 自社の法務部に連絡し、顛末を公式に残す
- 教科書的な対応:
- 独禁法コンプライアンスプログラムでは「この話には参加できません」と宣言する
- 退席後は経緯と退席した旨を社内メールで報告する
- IBMのビジネスコンダクトガイドライン5.5にも同様の規定がある
- 日系企業での取り組み:
- 10年以上前から営業へ毎年直接講習し、対応マニュアルを整備して実務に落とし込んでいる企業がある
- 外資でない会社でも、その話は聞けないと明確に断って直ちに退席することを社内ルールにしている
- 会合の冒頭で、生産計画や価格の話をしないなどの競争法対応規約を確認する業界団体がある
■ 5. 海外での意識の高さ
- ニューヨーク弁護士会の例:
- メーリングリストで価格の話題が出た直後、やめろ、自分を外せという投稿が相次いだ
- 米国の法律家は価格の話題を真剣に気にしている
- 欧州委員会の罰金を受けた企業の例:
- 価格カルテルを疑われ、欧州委員会から巨額の罰金を科された
- 競合と会う際は事前報告と会社の承認が必要で、ほぼ承認されない
- 社員全員がこのルールを遵守している
■ 6. 企業間の意識の格差
- 価格表を共有する業界:
- 別の業界では競合間で価格表を共有しており、単に無知による
- 事業場ごとの差:
- 厳密に清廉潔白を守る事業場と、何が悪いかもわかっていない事業場の差が大きすぎる