■ 1. 国連総会と各国指導者の主張
- 9月第4週の位置づけ:
- 日本のシルバーウィークにあたり、世界の現在地を知らしめる週となった
- 国連総会一般討論での主張:
- イランのペゼシュキアン大統領は、決して頭を下げず、ひざを屈することもないと主張
- ウクライナのゼレンスキー大統領は、プーチンを止めるにはロシアの財政と生産を止める必要があると訴えた
- イスラエルのネタニヤフ首相の演説時には、多くの国の代表団が退席した
- 世界の関心の所在:
- 国連総会よりも、9月23日からの習近平国家主席の米国国賓訪問に関心が集まった
- トランプ大統領は大喜びだったが、結果は中国の完勝
■ 2. 米中首脳会談における中国の「完勝」
- トランプ氏の友情発言:
- 歓迎式典で、2016年以来習主席と相互尊重に基づく素晴らしい友情を築いてきたと語った
- 東京大学大学院の李昊准教授によれば、これは中国が長年米国に求めてきた発言
- 中国にとっては「ようやくわかったか」という心境
- 「競争」の文字の消失:
- 米政権は従来、対中関係を「競争」と表現し、中国の「協力」の主張を退けてきた
- 9月25日のファクトシートには「競争」という言葉がない
- 5月の首脳会談を踏襲し、尊重・公正・相互性に基づく建設的な戦略的安定関係の構築で合意した
- 「戦略的安定」の危うさ:
- カーネギー国際平和基金のトン・ジャオ上級研究員は、破滅的行動へのレッドライン等を具体的に定めるべきと論じた
- 中国は、日韓など非核保有国に配備される通常ミサイルが安定を脅かすと示唆している
- 中国に解釈の主導権を与えれば、日本の防衛力強化も「安定を脅かす行為」とされうる
- 南シナ海での中国の違法行為を防ぐ活動も同様に解釈される可能性がある
- 米側公表資料の欠落:
- 台湾への言及がない
- 朝鮮半島について従来目標である「非核化」にすら触れていない
- 広がる混乱:
- パーデュー駐中国大使が、トランプ氏が習氏に米国製兵器の輸入への興味を尋ねたと証言し、大きく報じられた
- 米国の安全保障専門家は、トランプ政権が第1列島線から第2列島線へ後退することを真剣に懸念している
- 第1列島線は日本列島から沖縄、台湾、フィリピンを経て延びる線
- 第2列島線は小笠原諸島からグアム、パラオなどを経て延びる線
■ 3. 米国を頼る日韓と梯子を外された日本
- 韓国の対応:
- 直前まで日程未定だった米韓首脳会談を9月22日にニューヨークで実現させた
- 背景には、米テキサス州の約220億ドル規模のガス複合火力発電所への投資協議の進展がある
- 韓国外交ブレーンは、会談を投資で買ったようなものだと語る
- トランプ氏がホルムズ海峡の協力要請に韓国が「ノー・サンクス」と答えたと公言し、不満を示したことも焦りの背景
- 会談は約30分間で、李在明大統領が公然と批判される事態は避けられた
- 日本の対応:
- 高市早苗首相は9月22日にトランプ氏と会談し、米中会談前に対中認識をすり合わせる狙いがあった
- しかしファクトシートには、米中が第二次世界大戦中に同盟国として共に戦ったことを想起したと記された
- 歴史認識での梯子外し:
- 米中を大戦中の「同盟国」と表現したことは日本国内で反発や懸念を招いた
- 高市首相は9月26日の電話会談で、日米は今や最も信頼し合える同盟国だと伝えたと説明
- それでも、米中の歴史的協力をファクトシートに盛り込んだ点に対日姿勢への不安が残る
■ 4. 日本が取るべき対米・対中姿勢
- 対米関係の維持:
- 米国と手を切れと言いたいわけではない
- 欧州諸国やカナダと比べ、日韓は安全保障面で米国への依存度が高い
- 「下駄の雪」ではないが、米国との関係を可能な限り維持することが求められる
- 米国は依然として民主主義国家であり、政権方針に異論を唱える人も大勢いる
- 対中関係の課題:
- 安全保障上の脅威は一般に「能力」と「意思」で決まる
- 軍事力では中国軍が自衛隊を圧倒している
- 日米同盟と自国の防衛力を強化し、中国の力による一方的な現状変更を抑止する必要がある
- 同時に、中国が日本に敵対する意思を持たないよう対話と危機管理に努める必要がある
■ 5. 対話を「売国奴」と罵る世論
- 岩屋毅前外相の訪中:
- 国貿促会長として企業関係者ら約50人の代表団を率い、9月27日から訪中した
- 28日に王毅外相、29日に何立峰副首相と会談した
- 日中関係が厳しい時こそ対話で改善の道を探ることが大事だと語り、至極まっとうな主張
- SNS上の暴言:
- 岩屋氏の行動を巡り、SNSなどで「売国奴」といった暴言が飛び交っていることを懸念する
- 日本人の独特な対中感情:
- 政治部員時代、日本政府の知人から日本人の対中感情は世界でも非常に独特だと聞いた
- 中国の経済規模が日本を上回る前の時代を記憶する人は少なくない
- 中国の台頭への不満や不安が、知らず知らずのうちに噴き出すこともある
■ 6. 感情論が国を滅ぼす
- 昭和初期の教訓:
- 相手の国力を冷静に見極めず、軽々しく相手をそしる危うさを昭和初期の歴史から学ぶ必要がある
- 当時は「鬼畜米英」という敵愾心や、戦争を支持する世論につながった
- 朝日新聞の論調転換:
- 当初は軍部に批判的だったが、1931年の柳条湖事件に端を発する満州事変の前後に論調を変えた
- 背景には、右翼などからの圧力や不買運動に悩まされたうえでの判断があったと指摘されている
- 現在との類似:
- 岩屋氏らを「売国奴」と呼ぶ人々には、1931年前後に軍部批判の言論を罵倒した人々を想起させる面がある
- 現在と当時を単純に同一視はできない
- 岩屋氏らは中国を礼賛しているわけでも、日米同盟を否定しているわけでもない
- 「匹夫の勇」:
- 後先を考えず、いたずらに強い言葉を吐くことは「匹夫の勇」にすぎない