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「心中」という呼び名の変更について思うこと

要約:

■ 1. 「心中」から「保護者の自殺を伴う虐待死」への名称変更

  • 検察官時代の経験:
    • 親が自殺に先立って子どもを死なせる事件を、主任検事として捜査・公判で担当した
    • 処分や求刑、取調べでどのような問いを投げかけるべきか悩み抜いた
  • こども家庭庁専門委員会による分類変更:
    • 児童虐待の分類で、従来の「心中」を「保護者の自殺を伴うこどもの虐待死」に変更した
    • 「保護者に殺害される虐待」であることを明確化する趣旨
  • 「心中」という語の不適切さ:
    • 心中は合意の上でともに死ぬことを指す言葉
    • 子を残せないと考えて親が子を死なせる行為は、明らかに心中ではない

■ 2. 名称変更への疑問

  • 第一印象:
    • 趣旨にも変更自体にも異論はない
    • ただし、名称変更より先にやるべきことがあると感じた
  • 名称変更の狙い:
    • 子どもの巻き添えは心中ではなく虐待であり殺人だと社会に認識させること
    • 子どもは親の所有物ではなく独立した人間であり、命を奪うことは絶対に許されないと示すこと
    • いずれも当然必要なことではある
  • メッセージの受け手への疑問:
    • 死を選ぼうとする親は、子の将来を想像して絶望し、子を連れて行くことが子のためだと思い詰めている
    • そうした親がこのメッセージを目にする機会はそもそも乏しい
    • 仮に思い出しても、犯罪であり虐待だという事実を突き付けられるだけになる
    • それが親を引き戻す力になるとは限らず、より深い絶望を招くおそれがある

■ 3. こども家庭庁の資料「心中事例とその背景について」

  • 提言の内容:
    • 周産期・乳幼児期の母のメンタルケアと伴走支援
    • 子どものSOSを受け止める体制作り
    • 複合的な課題を抱える家庭への関係機関連携による支援
    • 自殺対策関連施策との連携
    • 「心中は虐待である」という認識の周知・啓発
  • 資料の結び:
    • 国は社会全体に対し、心中は虐待であるという認識を持てるよう周知・啓発を推進すべきとする
    • 子どもは保護者の所有物ではなく、権利の主体であるという認識の啓発も重要とする
  • 期待と失望:
    • 親が何に追い詰められ、どの時点でどんな助けがあれば引き返せるかの切実な検討を期待した
    • 実際には、大切ではあるが通り一遍に見える提言にとどまっていた
    • 最後も周知・啓発で締めくくられ、それを伝えて何が変わるのかという思いが残った

■ 4. 追い詰められた親が直面する相談窓口の現実

  • 複数の事情が重なる追い詰められ方:
    • 子どもの障害や医療的ケア、経済的困難が重なる
    • 孤立や自身の心身の不調も加わる
    • 今この瞬間に助けてほしいという状態に陥ることがあり、自分自身にもその経験がある
  • 窓口の対応:
    • 児童相談所や自治体の障害者支援窓口に電話しても、後日の来所予約を案内されることが多い
    • 後日では間に合わないと訴えると、切迫しているなら警察へと言われることもある
    • 制度上・人員上の事情があり、窓口を一概に非難はできない
  • 相談者側の切実さ:
    • 相談までの数日をどう生き延びればよいのかという問題が残る
    • 子どもを傷つけそうな人や消えてしまいたい人に、予約の案内だけでは足りない
  • 見過ごされるSOS:
    • 死を選ぶ前に、何度も形を変えて助けを求めていた人もいるはず
    • 気付いてほしくて、外出先でわざと大声で子どもを叱ることもあり得る
    • 周囲には「困った親子」に見える場面が、実は切実なサインである可能性がある

■ 5. 必要な仕組みと支援

  • 行政だけでは担えない危機:
    • すべての危機を行政だけで受け止めることはできない
    • 個々の支援者が一人で背負える問題でもない
  • 地域ごとの受け止めの仕組み:
    • 正しい言葉を広めるだけでなく、助けを求める声を受け止める仕組みが必要
    • 緊急度に応じてその日のうちに人や場所につなぐ体制を、地域ごとに本気で整えるべき
  • 具体的な支援の姿:
    • 窓口は「担当外です」で終えず、次につながるまで伴走する
    • 親と子どもの安全を含め、福祉、医療、保健が連携する
    • 教育、警察、民間支援もためらいなく連携に加わる
    • 夜間・休日も含め、今から行ける場所や今夜を越えるための支援が見えるようにする
    • 具体的な支援の積み重ねこそが、取り返しのつかない事態を防ぐ力になる

■ 6. 周囲の人々と弁護士としての役割

  • 社会全体の責任:
    • 国や自治体だけに求める話ではない
    • 家族、学校、医療者、支援者、地域の人、法律家も、できることを考え続ける必要がある
    • 相談をためらう人が、自ら助けを求めるまで待たずに済むようにすべき
  • 弁護士としてできること:
    • 明確な答えはまだないが、制度の隙間に落ちる声を丁寧に聞くことはできる
    • 必要な支援先につながる道筋を一緒に探すことができる
    • 支援につながらなかった出来事を個人の問題で終わらせず、仕組みの課題として伝えることができる
    • 小さくても一つ一つ実行していく
  • 「心中は虐待である」という言葉のあるべき姿:
    • 人を責めるための言葉で終わらせない
    • 子どもの命を守るため、親を孤立から引き戻す具体的な支援につながる言葉にする
    • そのために何が足りないかを考え続ける

MEMO: