オブジェクト指向分析に対する現時点での率直な感想としては「使い物にならない」の一言に尽きる。
その理由は、オブジェクト指向分析で導出されるモデルが以降の工程で何の役にも立たないことにある。
伝統的なデータ中心アプローチであれば、分析工程で導出されたデータモデルはそのままDB設計に活用できる。それどころか分析工程の成果物としてDB設計が完了することも珍しくない。
一方、オブジェクト指向分析では成果物として作成されたモデルはRDBで構築するデータモデルとしては粒度が大きすぎる為、別途DB設計を行うことが必要になる[1]。
にも関わらず、それはプログラムのコードとしても不十分である。何故なら多くの場合、ドメインモデル以外の情報がごっそり欠落したものになりがちだからである。
確かにそのようなモデルは分析工程で導出されるモデルとしては間違いではないが、システム開発の一工程の成果物としては後工程の役に立たないモデルに価値はない。
また、折角ドメインの情報をドメインモデルとして表現しても、実装の都合で改変されてしまう可能性が高く、結果的に実装されたクラスはドメインモデルの痕跡を留めないものになっていることが多い。
それらは開発スタイルや開発要員のスキルに依存する面も大いにあるのは事実であるが、現実問題として開発は行われなければならない。
したがって、必要とされるのは実際に使い物になる技術・方法論である。その観点に立って考えた時、先述したようにオブジェクト指向分析は「使い物にならない」という評価を与えざるをえないのである。