ではなぜ社員ドライバーではなく、個人事業主のドライバーに対する需要がこれほどあるのか。最大の理由は、社員ドライバーでは改善基準告示など、労働関連法令を順守しなければならないからだ。一方、個人事業主なら雇用関係ではなく委託契約なので、労働関連法令が適用外だった。
ある協力会社の経営者は「めちゃくちゃ働かせられるので、社員ドライバーでは労働時間が守れないため、個人事業主と委託契約して宅配をしてもらっている」と打ち明ける。
従来は社員ドライバーでは労働時間が守れないゆえ、個人事業主の貨物軽自動車運送事業者に委託していたのだが、法的にもそれができなくなってきた。国交省が2018年4月20日に「貨物自動車運送事業輸送安全規則の解釈及び運用について」を出したためだ。そのため個人事業主にも改善基準告示などが適用されることになった。国交省が個人事業主でも労働関連法令が適用されることを文書化したのは初めてだ。
つまり、「労働時間の制約なし」が貨物軽自動車の個人事業主に委託する最大の”メリット”だったが、ついにはそこに法的規制がかかったというわけだ。現在、大手ネット通販会社では、自前の宅配ネットワークの構築を急いでいる。が、宅配便ドライバーの過重労働などの負担を、個人事業主である貨物軽自動車運送事業者に転嫁しただけのビジネスモデルでは、もう成り立たなくなってきたのだ。