(1)先日、ある授業で教授がチョコレートケーキを持って来た。んで、平等に分けなさいと。クラスにいた学生は17人。数学科出身のやつが得意げに定規とコンパスで紙に正十七角形を作図して、その図を使ってケーキを17等分しようとした。
(2)「その分け方は不平等だ。」一人の学生が主張した。「小テストを行い、ケーキはその成績に応じて分配されるべきだ。メリットベースの分配こそが平等だ。」
(3)「不平等だ。」ある男子学生が言った。「女性は日頃からケーキにアクセスしやすい環境にある上に、しかもこのクラスは女性の方が多い。実質的な平等を実現するためには、アファーマティブ・アクションが必要だ。ケーキは、まず2等分し、半分は女性用、もう半分は男性用とするべきだ。」
(4)ある女性の学生は次のように反論した。「不平等だわ。先日のクラスの食事会で男子は女子よりも多く食べてたわ。その食事会ではデザートが出されなかったんだし、このケーキは女子に多く分配するのが平等だわ。」
(5)経済学部出身の学生は次のように言った。「私は生まれつきグルテンが消化できないので、ケーキはいりません。本当にケーキを必要としている人に分配してください。各学生に真の選好を表明させて、その選好に応じて分配するのが効率的かつ平等ではないでしょうか。」
(6)翌日、この話は、他の教授陣にも伝わった。ある教授が次のように主張した。「ケーキの分配は学部の序列に応じてなされるべきだ。つまり、学部長は、ケーキ一切れとたっぷりのクリーム。教授は一切れ。準教授は小さい一切れ。大学院生は一口サイズ。学部生は残りカスを食べればいい。」
(7)「不平等だ。」その日クラスを欠席した学生が主張した。「ケーキが配られることを知っていたら授業を休まなかった。」さらにまた別の学生は、「不平等だ。講義要綱にケーキのことは書いてなかった。書いてあったらその授業を履修した」と主張した。
(8)「おいおい、めんどくさいことやってんなー、お前ら。」MBAの学生が言った。「平等なんて簡単だよ。みんなフォークを持って、ヨーイ・ドンで一斉にケーキに喰らいつくんだ。競争だ。平等だろ?」
(9)「それは不平等ですね。」統計学専攻の学生が言った。「くじ引きで決めましょう。当たりを引いた人が全部もらう。これならケーキを勝ち取る確率はみんな一緒だから平等ですよね。」
(10)政治学専攻の学生は反論した。「競争もくじ引きも平等じゃない。民主主義こそが平等を実現する最善の方法だ。ケーキの分配は投票で決めよう。」
以上、10通りの「平等」でした。「平等」を実現するのは難しい。冗談のような例だけど、現実の行政・公共政策はほんとにこんな感じ。元ネタは、Stone, D. (2012). Policy Paradox.
石巻市だったか、「全員に平等に配れない差し入れは、配らない」という方針の被災地があったそうで。 平等その11 「ケーキは捨てる。これこそ平等」