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10年間で500人を治療してわかった「痴漢」を取り巻く問題(原田 隆之)

まずは、再犯率に関する問題である。性犯罪全体の再犯率は、一般に思われているほど高くはなく、約5%にとどまっているが、それに比べると痴漢の場合は再犯率が高い。

法務省のデータによれば、痴漢の性犯罪再犯率は執行猶予者で約20〜30%、刑務所出所者で約50%1。しかもその特徴は、同種犯罪、つまり痴漢ばかりを繰り返している者が多いことである2。

第2の問題点は、痴漢の場合、刑罰といっても、1度や2度での逮捕では、罰金や執行猶予などで済む場合がほとんどで、その場合、すぐに日常生活に戻されることとなる。

すると、しばらくの間は再犯に歯止めがかかっても、長い月日が経過するにしたがって、ふとしたことでまた再犯となってしまうケースが多い。

精神障害の診断のために世界中で用いられている診断基準である「精神障害の診断と統計の手引き」(DSM-5)には、「窃触症」という病名があり、その定義としては、同意のない他人の身体を触ったり、自らの身体をこすりつけたりすることに強い反復的な性的興奮を抱く一種の性的倒錯であり、それが社会的、職業的分野に重大な問題を起こしている場合、こう診断される。

「窃触症」は、「パラフィリア障害」というカテゴリーに分類されている。これは性行動の対象や方法の異常のことであり、ほかには「窃視症」(覗き、盗撮)、「露出症」などがリストアップされている。

報酬系とは、われわれに快感をもたらす神経系の総称であるが、薬物摂取でも、性的行動でも、人が大きな快感を抱いたとき、ドーパミンと呼ばれる神経伝達物質が多量に分泌される。

それが一種の「記憶」となり、脳は再び同じ快感を得ようとして、その行動を行うように命令を下す。それが、抗い難い強い衝動となる。

ふーむ