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白饅頭日誌:3月20日「とぼけるなよ。本当は気づいているだろう?」

世界的ベストセラー『サピエンス全史』の著者、ユヴァル・ノア・ハラリは、同書のなかで透徹で明晰な分析を展開している。日本でも大きな話題となったため、読まれた人は多いかもしれない。けっして話題先行ではなく、たいへん示唆に富んでおり、2020年代の社会問題を考える上では必読書のひとつに挙げられるだろう。

しかしそんな同書にもひとつ、とても歯切れの悪くなっている部分がある。それが第8章「想像上のヒエラルキーと差別」にある「家父長制」あるいは「男尊女卑」に言及する箇所だ。

その答えとはすなわち――女性が優位性を発揮する「家母長制」あるいは「女尊男卑」的な共同体は存在しただろうが(ホモ・サピエンスと遺伝的に近縁な霊長類であるボノボは「家母長制」の形態をとっている)の社会は、それらはみな「家父長制」あるいは「男尊女卑」的な構造を持つ共同体との競争に敗れ、淘汰されてしまった、というものだ。

社会は女性が身体的・精神的・認知機能的に劣っているから、などといった理由(共同幻想)をでっちあげて「男尊女卑」を形成したのではなくて、女性が優位に立った場合、女性は「自分より劣る者」を扶養するようなインセンティブを(生物的動機によって)ことごとく喪失してしまい、それが「女性の意思にかかわらずに男性とつがわせる」男尊女卑的コミュニティよりも、とりわけ人口再生産性の面で劣りやがては敗北してしまったのだ。