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白饅頭日誌:8月11日「専業主婦という鳥籠についての雑感」

「あなた自身がキャリアのブランクがどれだけ大きなリスクになるのかを主体的に判断せず専業主婦になってしまったのがそもそもの落ち度」と言ってしまえばそれまでだが、それでは客商売として成立しないからこそ「あなたは望んでいなかった。それなのに、夫が、世間が、男性優位社会が、あなたを専業主婦という不幸な立場に閉じ込めたのだ」という聴き心地のよいストーリーを提供するという側面もあるのだろう。

総合職の門戸が女性にも開かれ、退職や雇用形態の変更などによってキャリアコースを変えるまでは、男女の実質的な所得はもはや平等を達成している。そのような状況下でもなお「自身の選択の結果」によって生じた諸問題について、ほとんど非実在の「男からの抑圧」を設定してしまうのは、女性の主体的な問題解決を阻害し「女性には選択する自由も意志も覚悟もないような存在である」と言っているに等しい。

「自分のつらさは自分の外側にこそ原因がある」というメッセージはたしかに甘美で心地よい味わいがある。だがそのような美酒も飲み過ぎれば前後不覚になる。自分が直面するなんらかの苦境について、わかりやすい加害者、抑圧者を想定するのは、原因を自分に求めなくてよいので気が楽だが、次第に「自分のことを自分のこととして」考えられなくなる。

自分のおかれた状況には、いつだって自分の責任が100%あるわけでもないが、だからといって100%外部性によるものでもない。真実はおおよそ、その中間だ。これは私たちへの戒めでもある。