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議事録のない会議体は何故できるか

情報の作成者が守られるのは、マスコミにおいて情報源が秘匿されるのとそれほど意味的には違いがありません。うっかり公文書に情報提供者の名前が出てしまうことになると、誰も調査やヒヤリングに応じてくれなくなります。当たり前のことですが、調査をするということは何かが問題だからです。それを解決しなければならないという目的のために組成された会議体に情報を提供することが求められる以上、そこで扱われる話というのは大概にしてセンシティブだったり犯罪そのものの事情だったりし、それを調査という名目で漁る人たちや、そういう取材や調査に応じた人たちは文字通り、身体を張って情報を取ってきたり証言をしたりします。

さらには、それらの情報を元に議論する偉い有識者や偉い委員というのは一定以上の見識があり、役所の側からも「この人なら」ということでサインアップされたピッカピカの人たちばかりです。そういう人たちに状況をレクし、取りまとめた資料という形で目を通していただいたうえでご高説を賜るにあたり、会議の席上でありのままの見解を仰ってもらわなければ諮問する意味がないのです。

俗に「チャタムハウスルール」というものがあり、これらは主に外交や安全保障の場面だけでなく、よりセンシティブな(ヤバい)国内問題について偉い有識者たちの意見を集約するために活用されます。例えば、北朝鮮で金正恩が死んでいるかもしれないという重要な状況で北朝鮮政策を我が国はどう着地するべきかという議論をするに際して、そもそも金正恩が死んでいる前提で議論をすること自体が外交問題になりかねないし(少なくとも北朝鮮はそういう会議が我が国政府内で行われたと知ったら挑発だと受け止める可能性は否定できない)、その事情を知って意見を述べた人が誰なのかはもちろん、その会議に呼ばれている人の個人名も秘匿されることになり、ましてやその会議がどういう議論の果てにどのような結論となって我が国の対北朝鮮外交の方針として合意が得られたかなどという話は絶対に表に出ないわけであります。