ヤクザ専門誌の編集長だった頃、現役幹部にいじめ対策を聞いて回ったことがある。
「シャーペンで刺しちゃえ。ふとももあたり」
「授業中なら油断してる。後ろからバットで殴れ」
「怒れ、キレろ、反撃しろ、暴力を使え」は共通してて、ヤクザっぽくて面白かったんだけど、不穏当すぎてボツった。
「いじめは楽しい。なくならない。でもいじめられる側は本当に辛い。死にたくなるほど追い詰められる」
と語った親分もいた。
「いじめられる側の辛さを体験させてやればいい。そのガキをうちに連れてこい」
なんとか記事にしたかったのだが、のち裁判で証拠採用されたらまずいのでボツった。
この親分はいつも「食事会(平和共存のため、近隣の暴力団が集まって懇親会を開催していた)がしたくてヤクザになったんじゃねぇんだよ。ヤクザがネクタイ締めてどうすんだ。喧嘩させろ喧嘩」と口癖のようにいってて、俺はとても好きだった。けっこう早くに病気で死んでしまった。
実際問題、暴力は大抵の問題を解決できる。
前歯をへし折って慰謝料60万と言うのは罰金ではない。60万で相手の前歯をへし折る権利を買うということなのだ。