/note/social

マガジン限定記事「いつも不安な暴君」

彼は昔からプライドが高かった。プライドが高いが、しかし堂々としているわけではなく、一方でつねに不安がつきまとっていた。端的にいえば内気で臆病な性格だった。自分の自尊心がつねに脅かされているような感覚にとらわれていたように見えた。彼はその不安を打ち消すため、自分の見えている範囲のすべての他人が、自分に対して友好的で、自分に対して恭順的で、つねに自分の意に沿った言動をとり、自分の感情を逆なでしないようにコントロールできなければ気が済まないようだった。

他人が自分の思いどおりにならないことがあるたび感情を爆発させて「自力救済」という名の殴打を他人に向けていた。その傾向は中学、高校と上がるにつれますます顕著になっていった。私と彼は進学する高校は別になってしまったが、彼は市内でも有数の荒れた高校で周囲をイエスマンで固め、相変わらず「いつも不安な暴君」を続けていた。

男のメンヘラは救いがないという話だ