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東浩紀、「SNS民主主義の夢と挫折の10年間」を語る!

僕の周辺にはデモが盛り上がるたびに「反自民勢力が結集し、もう一度政権交代が実現する」と語るリベラル派の言論人がたくさんいました。安倍政権誕生直後にも「今回の選挙結果は子細に見たらリベラルの勝利だ」とか、「次の選挙で自民党は割れる」と真顔で語る人がいました。

僕は彼らの現実逃避の姿勢に対して幻滅するようになりました。2011年は曲がりなりにも民主党政権で、リベラルは政権にいました。ところが2012年に安倍自民党に大敗を喫し、その後も選挙のたびに政権奪取から遠のいている。まずそれを見てくれ、と。

自民党が割れて勝手に与党から降りてくれるなんて都合のいいことは起きない。みんなが存在しない希望に無理やり飛びついていたようで、ギャップを感じました。

東 デモが日常的に起きる国になったのは事実ですが、だから何がよくなったのかはわかりませんね。現実には政治的麻痺が進んでいるように思います。デモが起きても何も変わらないし、リベラル系知識人の言葉は現実離れしていると思われ、社会に届かない。そしてそれ自体も忘却している。

本当はこの10年、この世代の活力が社会に向いていき、政治やビジネスでも変革の原動力になっていけばよかった。でもそうはならなかった。僕が60歳になるまでに強い野党が誕生し、もう一度政権交代が起きる可能性は相当低い。つまり、団塊ジュニアが定年を迎えるまではこのまま自民党政権が続く可能性が高い。

そうなると、もう夢はいいから、足元を見ようという話になりますよね。実際僕ももう、自分の会社をきちんと守ることくらいしか考えられなくなっている。いわば「公共のことを考える」などという「贅沢」に自分の人生をかけていられなくなっている。このように言うとリベラル知識人は批判するでしょうが、彼らだって、本当は大学に守られて論争ゲームをやっているにすぎないのです。

この程度の認識を得るのに50年かかるって逆にすごいな。どれだけふわふわした世界に生きてたのかって感じだ。