人間は意志のある生き物でそれをアイデンティティにしているが故に、世界は意志によって動いているという事にしたがる
良いことが行われた場合は善意のおかげ、悪いことが行われた場合は悪意のせい、といった具合にな
しかし、人間社会で起こることの殆どは人間の意志とは関係がない
階段を上るのがしんどいとき、人間は「階段上りてぇー!」なんて考えてないし、建物を作った人間も「階段上らせてぇー!」なんて考えていない
階段は色々な理由で配置され、上る側も理由あって上るものだ
人間社会には、階段を上って息を切らす人間のように「誰の意志によるものでもない、悪意なき苦痛にさいなまれる人間」が大勢いる
その反対方向には「誰の意志によるものでもない、善意なき善行に救われる人間」も大勢いる
故に、善人や悪人に大した意味はない、善人が成す善行も悪人が成す悪行もたかが知れているし殺せば片付く
だが階段のようなものは違う。階段は階段を作った人間が死んだ後も残り続ける。誰かが改善するまでは永遠にそのままだ