佐藤優氏がプーチンのシンパになったことは間違いないようだ。
佐藤氏の初期の著作にサーシャという人物が出てくる。佐藤氏のモスクワ大学での親友で、ラトビア出身のロシア人、ラトビアの独立のために活動するサーシャは読者に強い印象を残す。
だが、その後どうなったかは知られていなかった。
今日、書店で佐藤氏が昨年出した翻訳書の後書きを読んでいたら、その本の著者がサーシャであることがわかった。
サーシャと佐藤氏は20年ほど音信不通だったが、2012年に友情が復活した。なんとサーシャはプーチンのイデオローグになっており、ウクライナ東部にできた傀儡国家にも深く関わっている。
サーシャは佐藤氏の青春時代の英雄である。佐藤氏はサーシャが変節したとは思っておらず、サーシャの主張を入れて、プーチンが歴史的役割を果たそうとしているのだと信じることにしたようだ。
友情は美しいものだけど、そのために眼が曇ることもある。この本の後書きで佐藤氏は、プーチンに北方領土問題を解決する気があると主張している。
そんなことは到底ありそうにない。
量産体制になってからは読んでないが、初期の佐藤氏の著作は割と熱心に読んでいたので、サーシャことアレクサンドル・カザコフ氏が佐藤氏にとってどれほど大きな存在かは理解している。
その彼がプーチンのイデオローグになったという顛末は個人的にもショックで、考え込んでしまう。
私たちの人生には時折、輝かしい他者が現れる。その人の周囲はいつも光輝いて見え、私たちはその人のようになりたい、それが出来ないならせめて共に歩みたいと願う。その人が誤っているのなら、いっそ共に過ちを犯したいとすら思うのである。
モスクワ大学に留学した佐藤氏にとって、ソ連軍の戦車に立ち向かい、ラトビア独立に貢献した親友サーシャこそそんな輝ける他者であった。激動のなかで音信不通になっても、彼は記憶の中で輝かしい存在であり続けた。そんなサーシャが、50歳を超えた佐藤氏の前に再び姿を現したのである。
佐藤氏がはまった落とし穴は人間的なもので、同情に値する。ただ、今後佐藤氏がロシアについて何を言おうが、一切信用出来ない。彼はもう立場を決めてしまった。プーチンについて一見批判的なことも書いているが、それは中立の見せかけに過ぎず、佐藤氏の心は常にサーシャとともにある。