/note/social

憂慮する日本の歴史家の会の声明(2022/5/9 第2次声明)

2022/5/9【第2次声明】

日本、韓国、そして世界の憂慮する市民はウクライナ戦争即時停戦をよびかける

ロシア軍の侵攻によりウクライナ戦争がはじまってからすでに2か月がすぎた。ロシア軍は目的を達したとして、兵を首都キエフ方面から撤退させ、ドンバス東部に兵力を集中させている。イスタンブールでの停戦会談ではウクライナの停戦の条件が示され、楽観的な空気があらわれた。ところが、キエフ近郊の町ブチャでの市民の遺体が発見されるや、ロシア軍の戦争犯罪を非難する声が上がり、ウクライナ軍は怒りに燃えて、さらなる戦闘に向かっている。米国をはじめとする支援国グループは競って、大型兵器、新鋭兵器をますます大量にウクライナに送り込んでおり、米国の統合参謀本部議長ミリー将軍はウクライナ戦争は数年つづくだろうと言い始めた。

一部の国々はこの戦争をウクライナの勝利まで、プーチン政府が降伏するまで続けることを願っているようだ。しかし、戦争が続けばつづくほど、ウクライナ人、ロシア人の生命がうばわれ、ウクライナ、ロシアの将来に回復不能な深い傷をあたえることになる。

それだけではない。多くの国がロシアに制裁を加え、ウクライナに武器の援助を増大させつづければ、戦争がウクライナの外に拡大し、エスカレートし、ヨーロッパと世界の危機を招来する。核戦争の可能性が現実のものになり、制裁の影響はアフリカの最貧国において世界的規模の飢餓をひきおこしかねない。

戦争がおこれば、戦場を限定し、すみやかに停戦させて、停戦交渉を真剣にさせることが平和回復のための鉄則である。われわれはあらためて、ロシア軍とウクライナ軍は現在地で戦闘行動を停止し、真剣に停戦会談を進めるように呼び掛けたい。国連のグテーレス事務総長が、ロシアとウクライナの大統領を相次いで訪ね停戦を働きかけた。国連はさらに停戦のための真剣な努力を継続してほしい。3月以来、トルコが停戦会談の仲介者として敬服に値する努力を果たしている。ヨーロッパの戦争の決定的な現段階においては、アジア、アフリカの諸国も行動をおこすべきだ。中国やインド、南ア共和国などの中立的大国、インドネシア、ベトナムなどアセアン諸国が戦闘停止を両軍に呼びかけ、停戦交渉を仲介するのに参加してくれることを願ってやまない。

これ以上戦争を続けることは許されない。プーチン大統領のロシア政府とゼレンスキー大統領のウクライナ政府は即時停戦する意思を世界の人々の前に明らかにし、停戦会談をまとめあげ、実際に停戦に向かうようにお願いする。

世界中の人々がそれぞれの場で、それぞれの仕方で、それぞれの能力に応じて、「即時停戦を」の声をあげ、行動をおこすべきときである。

もっとも大切な価値は命である。ウクライナにおいて、これ以上、人間を殺すな、人間は殺されるな、と私たちは訴える。

2022年5月9日

第2次声明の署名者

【日本】

浅田次郎 作家

石坂浩一 立教大学兼任講師

伊勢崎賢治 東京外国語大学教授、元アフガニスタン非武装化日本政府特別代表

伊東孝之 早稲田大学名誉教授

上野千鶴子 東京大学名誉教授

内田樹 神戸女学院大学名誉教授、武道家

内田雅敏 弁護士

内海愛子 恵泉女学園大学名誉教授、梨の木ピース・アカデミー代表

梅林宏道 ピース・デポ顧問

岡本厚 元岩波書店社長、元『世界』編集長

加藤史朗 愛知県立大学名誉教授

加納格 法政大学元教授

桐野夏生 作家、日本ペンクラブ理事長

鈴木国夫 「市民と野党をつなぐ会@東京」共同代表

徐載晶 国際基督教大学教授

田中宏 一橋大学名誉教授

田中優子 元法政大学総長

東郷和彦 静岡県立大学客員教授、元オランダ大使、元外務省欧州局長

富田武 成蹊大学名誉教授

豊川浩一 明治大学名誉教授

長與進 早稲田大学名誉教授

西成彦 立命館大学名誉教授

西谷修 東京外国語大学名誉教授

羽場久美子 青山学院大学名誉教授

平山茂 市民運動家

藤本和貴夫 大阪大学名誉教授、大阪日ロ協会理事長

毛里和子 早稲田大学名誉教授

矢野秀喜 無防備地域宣言運動全国ネットワーク

吉岡忍 作家、元日本ペンクラブ理事長

吉田浩 岡山大学准教授

李泳采 恵泉女学園大学教授

和田春樹 東京大学名誉教授、憂慮する日本歴史家の会代表

【韓国】

高光憲 元 ハンギョレ新聞, ソウル新聞 社長, 詩人

金世均 ソウル大学名誉教授

金峻亨 韓東大学敎授, 元 国立外交院 院長

南基正 ソウル大学教授

明盡 和尙

朴祥圭 牧師, 韓神大学理事長

白樂晴 ソウル大学名誉教授

白日 蔚山科学大学教授

徐海誠 作家

沈裁明 明Films代表

禹希宗 ソウル大学教授

李大根 又石大學校教授, 元 京鄕新聞 編集局長

李都欽 漢陽大學校教授

李海榮 韓神大学教授,元韓神大学副総長

鄭智泳 映画監督

鄭泰春 歌手

咸世雄 神父,安重根義士記念事業会理事長

韓貞淑 ソウル大学教授

洪世和 作家,社會運動家

【世界】

マーク・セルデン(ニューヨ-ク州立大学ビンガムトン校名誉教授、アジア・パシフィック・ジャーナル:ジャパン・フォーカス編集長)

ギャヴァン・マッコーマック(オーストラリア国立大学名誉教授、オーストラリア人文アカデミー・フェロー)

(注)短時間で発出するため、まず従来から交流のあった日韓の研究者を中心に声明署名者としました。日韓はアメリカとの関係で、緩衝国家という立場の共通性もあります。