主に3つの理由があると思います。1つめは、10年前に比べ競合が多くなったということです。ワールドワイドで非常にアグレッシブに競争しているということで、各企業はこれまで以上に短期間で製品をリリースしたり、コストを削減したりする必要が出てきました。滞在中にお会いしたある日本企業でも、毎年20%以上ものコスト削減していると聞きました。10、20年前よりも状況はシビアになっているのです。
2つ目の理由として、コンピュータ技術が進歩しようと、コンピュータ技術に対する人々の願望はつきないことが挙げられます。例えば、わたしが今回日本で使用している携帯電話は言うまでもなく10年前から大きく進歩していますが、人々は携帯電話に高性能のカメラを必要としたり、音楽を聴きたがったりというように、さらに大きな願望を抱くことでしょう。だから技術は進歩してもデスマーチプロジェクトは続くのです。
3つ目の理由としては基調講演でも述べたように、政治的な面でデスマーチプロジェクトが発生するということです。40年以上も前にわたしがエンジニアとして働いていたときも政治的な面で衝突がありました。技術が進化した現在にあっても、人々は変わらず、同じように衝突が続いているのです。