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メンバーが増えると出力が落ちる「リンゲルマン効果」と対策としてのDRI

一方、アップルではスティーブ・ジョブズの時代から「DRI」(Directly Responsible Individual)という責任の所在の明確化を行なってきたことで知られています。直訳すると「直接責任を負う個人」です。DRIはアップルの社内用語が外部でも広まったものと言われています。アップルの地図アプリの混乱で解雇されたのは、まさにDRIだったのではないかと思います。

DRIを運用する組織では、プロジェクトの大小を問わず、それぞれ特定個人が責任者にアサインされ、プロジェクトの推進や必要なリソースの確保といったことに責任を持ちます。そのように担当を明確にしないと、いわゆる「ボールが落ちた状態」になることがあるからです。担当者がいくらたくさんいても、誰もが最終的な責任者ではないと考えていれば、物事の進捗は止まりがちになります。中途半端な状態を成果として出すことにストップをかける人もいません。品のない言葉ですが、DRIは日本語だと「ケツを持つ」と言い換えられるかもしれません。ただ漠然とした「トップが責任を持つ」という話とは違い、粒度を細かくしてタスクやイニシアティブについて責任者を明確にする、というのがポイントだと思います。

DRIの発展型として、RACI(レイシー)というフレームワークも良く使われます。私は大組織の中の6人のチーム(+社内の他部署関係者)で使ったことがありますが、膨大なタスクと錯綜する役割がクリアに可視化できる便利なものだなと感じていました。

RACIは、Responsible(実行責任者)、Accountable(説明責任者)、Consulted(協議先)、Informed(報告先)の頭文字をとった略語ですが、それぞれのプロジェクトやイニシアティブに対して4つの役割別に人をアサインするやり方です。実行責任を負う人は1人ですが、それに加えて説明責任を負う承認者、専門家として協議するものの実行自体や成果の責任を負わない人、進捗報告を受ける人といった4種の役割をアサインします。必ず全部埋める必要はありません。