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伝統的なIT産業の構造を崩壊させる大事件

大手ITベンダーを頂点とする日本のIT産業構造を崩壊させる大事件が起きた。NTTコミュニケーションズやNEC、日本ビジネスシステムズ、医療ベンチャーのアルム、ブレインの5社で構成するコンソーシアムが2021年早々に落札した、東京オリンピック・パラリンピックに向けた入国管理アプリ開発の契約金額を、政府が約73億円から約38億円に引き下げたことだ。管理アプリの開発などに20社以上の下請け受託ソフト開発会社が携わっており、彼らへの支払いをどうなるのだろう。元請け以上に厳しい経営に追い込まれなければと心配する。

報道によれば、事業内訳はアプリ開発に約18億円、データ連携基盤に約14億円、顔認証サブシステムに約5億円、サポートセンター構築に約17億円、多言語対応などに約15億円というもので、実はNECが担当する顔認証サブシステムは仕様変更で契約額はゼロになったという。

報道による今回の大幅な引き下げを知った業界関係者に意見を聞いたところ、著名なITアナリストは「開発途中に、その機能はいらないので金は払わない、と言われたようなもの」とあきれる。ある有力SI(システムインテグレーター)の元経営者は「開発が終わってからの機能削減の議論は、あり得ないこと」と驚く。大手ITベンダーの元役員は「そもそも丸投げは、高くなるのが当たり前」と、政府の丸投げ体質に大きな問題があると指摘する。