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システム開発「内製」ブームに危惧、重なってみえるあの状況

内製化ブームの兆しがみえつつある今の状況は歓迎すべき流れである一方、記者が懸念しているのはブームに乗っかり「何となく内製」に向かう企業が相次ぐことだ。内製先進企業の成功をみて、経営トップが「今はシステム開発の内製が重要らしいから、うちもやるぞ」と、IT部門長にむちゃぶりし、ビジョンがないまま内製に取り組むような動きだ。

話を内製化に戻すと、内製についても「内製開発すること」を目的にしてしまうと間違いなくうまくいかないだろう。というのも記者は雑誌「日経コンピュータ」の特集取材でカインズやエディオン、星野リゾート、グロービスなど内製先進企業をインタビューしたが、各社は共通して内製を手段と位置付けていた。迅速な開発体制を整えるために、結果的に内製に至った格好だ。

例えば社内の意識改革やプロセスの変更もなしに内製しようとすれば、社内における外注状態に陥りやすい。これはユーザー部門が情報システム部門にシステムを「外注」しているような状態で、社内に小さなITベンダーがいるようなものだ。

ただ誤解を招かないためにお伝えすると、システム開発は「内製」「外注」のどちらか一択ではない。そもそも内製先進企業は何でもかんでも内製するのではなく、アウトソースをうまく使う。内製すべき領域をきちんと見極め、戦略的に社内のエンジニアリソースをそこに集中させている。競争領域ではなかったり、変化が少なかったりするシステムはむしろ積極的にアウトソースしたり、SaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)を活用したりしているのだ。ただし外注であってもシステム開発のイニシアチブ(主導権)を社内に持っていることは、内製巧者に例外なく共通する。