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日本はなぜCPUの開発製造をしなくなったのですか?に対する菰田 泰生 (Taiki Komoda)さんの回答

アーキテクチャと製造の視点があり、自分は製造側にいたことがあるのでその話をしたいと思います。

自分は15年ほど前に日本メーカーでロジックのFEOLの開発部門に在籍していました(IEDMに登壇したこともあります)。そこで感じたのは圧倒的な最適化の難しさ。パラメターが多い割には結果が出ることが数ヶ月後で、全然性能が出ないことはしょっちゅうでした。そんな中、intelが90nmでstrained-siliconといってスイッチ部分の横に別の物質を掘って埋め込み、性能を2倍に上げたものを市場に投入してきました。研究レベルではなく市場に投入です。これはかなり衝撃でした。日本でも研究レベルではやろうとした人はいたかもしれませんが、「ゴミが出る」、「汚染される」、「そもそも、、」とかいろいろ言われて、他社の実績無しでは多分試作すらできなかったと思います。

ここで感じたのが、海外メーカーは数人の天才・異才に指揮権を与えられているんだろうなということ。この部分でデメリットはあるけどこの部分が大きなメリットだからこれを適用する、という判断ができる体制があり、できる人がいること。分析が得意で直感にも優れた天才が指揮しないとCPUのような複雑なプロダクトで世界で戦うことはできないのを痛感しました。自分のいた部署、製造ラインのエンジニアは平均すると海外メーカーより全然優秀だと思いましたが、権限がフラットなので全体最適を取ることは至極困難でした(日本は一時期メモリで覇権を取りましたが、メモリは統合より各モジュールの平均で勝負できるので、「平均が高めの人が多い組織」で戦いになるのが突出した原因かと思います)。

いまの世の中はいままで以上に一部の変わった人を普通の人が支援する仕組みが重要になってきています。日本人は他人のやっていることに影でこそこそコメントするのを止めて、「やってみなよ、少し手伝うから!」というマインドの人が多くなると良いですね。

以下の記事もご参照ください。

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