株式会社グリッドは、エネルギー分野における「不確実な環境における深層強化学習による最適化」の開発に成功した。これは現在のAIにとって最大の課題のひとつとされている「フレーム問題」を解決する糸口になる、と言う。そして、その成果を、米国物理学協会が発刊する「Journal of Renewable and Sustainable Energy」に評価され、論文が掲載されたことを発表した。
曽我部氏は「1つのAIモデルで学習しようとすると精度は高くなるが、状況の変化には順応できず、想定外のことがあると特定の答えを出してしまうという欠点がある。サンプル学習ではそれぞれモデルがそれぞれの状況による答えを出すので、結果的に幅広い状況に答えられるモデルが作れる。アウトプットはそれぞれ適度にバラけながら、これを多数並列化させて、多数決を取ることによって、最終的には精度が高い答えを得るという考え方」と説明した。
「フレーム問題」はAIに行動させる前に、環境下で発生しうる全ての事象を厳密に判断させようとするが故に、考慮すべき事項が多すぎて対処できなくなることで生じる。一方で、人間は行動する前に厳密な判断はせず、将来の状況をいくつか想定し、平均値的な手段をとるという曖昧性によって、様々な変化に対応しているという。この研究では、こうした人間が持つ曖昧性の高い手法に着目し、アンサンブル学習を採用した。
この結果、アンサンブル学習を適応しない手法と比較して未知のデータに対しても経済的に合理性のある電力の需給計画を立案することが可能であることを確認したという。さらに、算出された計画に対する年間単位でのリスク分析も可能とし、実運用において計画を採択する上での判断材料を示すことに成功した。