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ChatGPTが論文のライティングスタイルにもたらした変化

論文執筆は、多くの研究者にとって時に苦痛を伴う作業です。英語を母語としない研究者にとっては特に、言語の壁が大きな障害となります。ChatGPTは、この障壁を一気に取り払ってくれます。翻訳、校正、要約作成—かつては数日を要したこれらの作業が、数分で完了する。その魅力は、抗いがたいものです。

特定の分野、特にコンピューターサイエンスや工学系の論文において、ChatGPT特有の言い回しや表現が急増しているという傾向があります。これは、多くの研究者が既にChatGPTを論文執筆に活用していることを示唆しています。

この傾向は非英語圏の研究者の間でより顕著とのことであり、言語の壁を越えるためのツールとして、ChatGPTは確かに強力です。しかし、それは同時に、学術論文の画一化、さらには研究の多様性の喪失につながる危険性を孕んでいます。

私たちは今、学術界の大きな転換点に立っています。AIによる支援は、確かに研究のスピードと効率を飛躍的に向上させる可能性を秘めています。しかし同時に、研究の本質ー独創性、批判的思考、そして何よりも人間の知性による深い洞察—を脅かす存在ともなり得ます。

この新しい時代において、私たち研究者には、これまで以上に高い倫理観と批判的思考力が求められています。AIを賢く活用しつつ、真の学術的価値を守り抜く、そのバランスを取ることこそが、現代の研究者に課せられた使命かもしれません。

ChatGPTがもたらす功罪:効率と倫理のジレンマ

ChatGPTの登場は、学術界に変革をもたらしています。しかし、この技術は、メリットとデメリットを併せ持つ諸刃の剣です。ここでは、その功罪を詳細に分析し、我々研究者が直面する倫理的ジレンマについて考察します。

メリット:効率化の誘惑

  • (1) 時間の節約:単純作業の自動化

    • ChatGPTは、文献レビュー、要約作成、参考文献のフォーマット調整など、時間のかかる単純作業を驚異的なスピードで処理します。例えば、数百件の論文要約を数分で生成することも可能です。これにより、研究者は 本質的な研究活動により多くの時間を割くことができます。
  • (2) 言語の壁の低下:非英語圏研究者の支援

    • 英語を母語としない研究者にとって、ChatGPTは 頼れるツールとなり得ます。文法の修正、適切な学術的表現の提案、さらには全文の翻訳まで、言語面でのサポートは極めて強力です。これにより、研究成果の国際的な公表が促進される可能性があります。
  • (3) 文章の洗練:文法的正確性の向上

    • ChatGPTは、文法的に正確で読みやすい文章を生成する能力に長けています。この特性は、論文の可読性を高め、査読者や読者の理解を助けるポテンシャルを秘めています。

デメリット:学術の本質への脅威

  • (1) 正確性の欠如:ハルシネーションと出典捏造の危険性

    • ChatGPTは時として、存在しない情報や事実と異なる内容を「ハルシネーション」として生成することがあります。さらに危険なのは、実在しない論文や著者を引用するケースです。これらは、学術的誠実性を根本から揺るがす重大な問題です。(筆者注:このあたりは対策すれば防げます)
  • (2) 独創性の喪失:既存の再構成に過ぎない文章生成

    • ChatGPTの生成する文章は、既存の言葉の再構成に過ぎません。真に革新的なアイデアやパラダイムを変えるような概念を生み出すことは、現状のAIには不可能です。過度の依存は、学術界の知的停滞を招く恐れがあります。
  • (3) 倫理的問題:盗用、AI authorship、論文millsの横行

    • AIが生成した文章をそのまま使用することは、盗用と見なされる可能性があります。(筆者注:参照なしに他の論文を引っ張ってくる可能性は少ないですがAIの書いた文章をそのまま使うこと自体には倫理的に問題があると思います)また、AI自体を著者として認めるべきではないという AI authorship の問題や、ChatGPTを使用して大量の低質な論文を生産する「論文量産工場」の出現など、新たな倫理的課題が浮上しています。