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7年前にCNCFへ譲渡されOSS化されたソフトウェア、今さら開発元が譲渡とOSS化の撤回を要求。(その後...

Linux Foundation傘下でKubernetesを始めとする多数のクラウドネイティブ関連のプロジェクトをホストするCloud Native Computing Foundation(以下、CNCF)は、2018年に同団体に譲渡されオープンソースとして開発が続けられてきたメッセージングミドルウェアのNATSの開発元であるSynadiaが、NATSプロジェクトをCNCFから撤退させ、非オープンソースライセンスであるBusiness Source License(BUSL)を適用する意向であると通知してきたことを明らかにしました。

さらにSynadiaの法律顧問はCNCFに対して書面にて、NATSプロジェクトのドメイン名である「nats.io」とGitHubのリポジトリの完全な管理権を2週間以内に引き渡すことも要求してきたとのことです。

CNCFはSynadiaからの要求に対してこれを拒否し、GitHubには関連のIssueを提起、メンテナに連絡を取るなどの措置を講じていると説明しました。

後述するようにSynadiaは後日この要求を撤回し、CNCFとともにNATSのプロジェクトの発展に貢献することを表明。本件は落着しています。

一方で今回のNATSの例は、開発元からCNCFへとソフトウェアが譲渡され、コミュニティによってそのソフトウェアが育成された後に、開発元が自社都合でそれを撤回したいという主張です。契約面でも信義の面でも受け入れられるものではないでしょう。

もしこれがまかり通るようなことがあれば、Linux FoundationやCNCFのようなオープンソースの団体が築いてきた信用や、オープンソースソフトウェアに対する信頼に傷が付くことになりかねません。

CNCFがこの問題を明らかにしてから約1週間後の5月1日、CNCFはSynadiaとの話し合いの結果、NATSプロジェクトを引き続きCNCFがホストし、SynadiaはNATSの名称とロゴをCNCFに譲渡すること、同社が今後もNATSへの主要なコントリビュータとして活動を継続すること、などにより本件が無事に決着したことを明らかにしました。

Synadiaがなぜ要求を撤回したのか、などについての説明は行われていませんが、GitHubでの議論を見る限りNATSへの失望とプロジェクトのフォークを要望する声が多く見られました。

つまり、もしもSynadiaがCNCFからNATSを取り戻せたとしても、CNCFのプロジェクトとしてNATSのフォークが採用され、現在のNATSのコミュニティとエコシステムはそのフォークされたプロジェクトのものになる可能性が高いと考えられます。

そうなった場合、SynadiaがNATSを取り戻す価値は薄れてしまいます。あくまでも想像ではありますが、こうした状況がSynadiaの当初の要求を撤回させたことにつながったのではないでしょうか。

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