■ 1. PRDの3つの役割
- 成長・評価のツール:
- PRDを一人で書ききれることが、一人前のプロダクトマネージャー(PM)の分岐点である。
- 他の職種と対話しながらPRDを完成させることで、PMの企画、開発、検証ワークフローのコントロール能力を判断できる。
- PRDはPMの育成に活用できる。
- 思考のツール:
- PRDのフォーマットに沿って企画を考えることで、プロダクトのあるべき姿を再考し、見落としがちな上流工程の事項を押さえられる。
- PRDは、多様な解決策とトレードオフを記録する装置として有用である。
- コミュニケーションツール:
- PRDは「指示書」ではなく「対話書」である。
- 開発スタイルに関わらず、PRDを介して多職種が協働・協業できる。
- 新規メンバーがキャッチアップするための「知のベースキャンプ」となる。
■ 2. PRDの正しい使い方
- 書き方:
- パワーポイントやExcelは避け、マークダウン形式で書くべきである。図はMermaidの使用が推奨される。
- WHATやHOW(要求事項)から書くのは間違いである。
- WHY(前提条件)やCORE(中心概念)から、他職種と対話しながらPRDを埋めるべきである。
- 構成:
- デザイン思考のダブルダイヤモンド(発見・定義→解決策提供)に沿ってPRDを作成する。
- 課題と解決策は1対1ではないため、PRDにはソリューション案の検討過程を残しておくべきである。
- フローに沿って作成することで、思考の質とPRDの品質が一定に保たれる。
■ 3. AI時代のPRD
- 変わらない価値:
- 人と人がコラボレーションする限り、PRDは有用である。
- AIと人との共同作業においても、共通の思考フォーマットとして機能する可能性がある。
- 意思決定の記録として、人にもAIにもコンテキスト(文脈)を伝えるために有用である。
- プロトタイプとの関係:
- 良いプロトタイプを作れる人は、PRDを書くのが上手なPMである可能性が高い。
- プロトタイプ主導の開発を進めるためには、PRDを通じて個人や組織の思考力を鍛えるべきである。
- AIによる効率化:
- PRDの一次レビューはAIに任せることができる。
- AIにPRDを書いてもらうことも可能である。この場合、PRDフォーマットの上から順に、AIと対話しながら初稿を作成することが効率的である。
■ 4. 結論
- 未来のPRD: 将来的にPRDの執筆はAIが行うようになるかもしれない。しかし、予算執行を伴う意思決定は人間の役割として残る可能性が高い。
- 人間が磨くべき力:
- 「PRDをレビューできる力」、すなわち良し悪しを判断する力が重要になる。
- そのためには、対話力と思考力を鍛えるべきである。
- PRDの役割の再定義: PRDは単なるドキュメントではなく、思考力や対話力を通じて個人や組織を変革するための「道具」として活用すべきである。