■ 1. スコープ(作業範囲)の曖昧さ
- 原因:
- 作業範囲の未定義: プロジェクト開始時に「何を作るか」が明確になっていない。
- 追加作業の発生: 要件確認の段階で、当初の想定外の作業(業務フロー作成、システム選定、役員向け資料作成など)が次々と追加される。
- 対策:
- アウトプットの定義: 最終的に「何を作るか」を事前に明確にする。
- WBS(Work Breakdown Structure)の活用: WBSはスケジュールのツールと思われがちだが、本来は作業範囲(スコープ)を定義するためのツールである。これに記載されていないアウトプットは作成しない、という合意を形成する。
- 成果物定義の具体化: 「要件定義書」のような曖昧な成果物ではなく、「業務フロー」「要件一覧」など、より詳細な要素で定義する。
■ 2. スケジュール作成のスキル不足
- 原因:
- 経験不足: 作業ステップや工数(かかる時間)が分からず、感覚的に計画を立ててしまう。
- 楽観的な見積もり: 実作業にかかる時間を過小評価し、無理なスケジュールを作成する。
- 対策:
- 過去データ・有識者の知見活用: 過去のプロジェクトデータや経験者からの意見を参考に、見積もりの精度を高める。
- 計画段階でのレビュー: 期間に合わせるような辻褄合わせの計画ではなく、現実的なスケジュールになっているか、入念にレビューする。
■ 3. 関係者への配慮不足
- 原因:
- 自社作業のみの計画: 顧客や他チームなど、利害関係者の状況を考慮せずにスケジュールを立てる。
- 認識のずれ: 相手側のレビューや確認にかかる時間が考慮されていないため、後から大幅な遅延が発生する。
- 対策:
- 巻き込み時期の考慮: 相手側の繁忙期や都合を事前に確認し、いつ、どれくらいの時間を取ってもらう必要があるかを計画に盛り込む。
- リスクの考慮: 依頼した作業がスケジュール通りに進まない可能性を考慮し、バッファ(余裕時間)を設ける。
■ 4. 遅延の認識不足
- 原因:
- 進捗管理の不足: 作業量を定量的に把握しておらず、漠然と「順調」と判断している。
- 比較対象の欠如: そもそも具体的な予定を立てていないため、進捗が「遅れている」という事実を把握できない。
- 対策:
- 作業内容の定量化: 「完了すべき作業数」や「作業ステップ数」など、客観的に数えられる単位で進捗を管理する。
- 予定と実績の管理: 具体的な数値で立てた予定と、実際の進捗を比較し、遅れを早期に認識する。
■ 5. 遅れをごまかそうとする行動
- 原因:
- 報告への抵抗感: 遅れていることを報告しづらいため、スケジュールをサイレント修正したり、先行着手タスクやバッファを理由に遅れを隠蔽する。
- 対策:
- クリティカルシンキングの活用: 報告が事実に基づいているか、疑いの目を持って確認する。
- 目的の共有: 進捗報告の目的は、遅れのリスクを早期に発見し、対策を打つことであることを、チーム全体で共有する。
■ 6. コミュニケーション不足
- 原因:
- 利害関係者への遠慮: 顧客などへの依頼に遠慮が生じ、調整が後回しになる。
- フォローアップ不足: 依頼した作業の進捗を適切にフォローアップしないため、気づかないうちに遅延が発生する。
- 対策:
- プロジェクトの一体感形成: 依頼された作業を「やらされ感」ではなく、主体的に取り組んでもらえるように配慮する。
- 目的と期日の共有: 依頼する際は、その作業の目的と期日を必ずセットで伝える。
- 頻繁なコミュニケーション: 定期的なフォローアップを行い、進捗や課題を共有する。