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AIにおける古い考え方「世界モデル」が再注目されている理由とは?

要約:

■ 1. 世界モデルの概要と歴史

  • 定義: AIが外界や環境を内部的にシミュレーションし、未来予測や因果関係を理解するための内部モデルである。
  • 起源: 1943年、心理学者ケネス・クレイク氏が提唱した「生物が世界の内部モデルを持つことで、行動の結果を予測できる」という考えに由来する。
  • 歴史的変遷:
    • AI研究初期には「ブロックの世界」を理解する「SHRDLU」などで世界モデルの考えが取り入れられた。
    • しかし、当時のモデルは現実世界の複雑さを再現できず、「明示的な世界モデルを持たなくても環境に適応できる」という世界モデル不要論へと傾いた。
    • 近年の深層学習の向上と膨大なデータの利用により、再び世界モデルが注目されている。

■ 2. 世界モデルと大規模言語モデル(LLM)

  • LLMの「創発能力」:
    • 絵文字から映画タイトルを推測したり、訓練されていないオセロをプレイしたりする能力が創発されることから、研究者の間で「LLMがすでに世界モデルを内部に持っているのではないか」という疑問が生まれている。
  • 「世界モデル」と「ヒューリスティックの塊」の違い:
    • パヴラス氏の見解によると、LLMはあくまで「ヒューリスティックの塊」である。
    • ヒューリスティック: 膨大なデータから得た「断片的な経験則の網羅」を組み合わせる近似アルゴリズムであり、高精度な対応はできるものの、一貫性や確実性に欠ける。
    • 世界モデル: 道路の1%が遮断された場合でも、地図全体を再構築して最適な経路を見つけるなど、因果関係を深く理解できる。ヒューリスティックの塊であるLLMでは、このような状況で精度が急落する。

■ 3. 世界モデルの意義と展望

  • 汎用人工知能(AGI)の実現: 世界モデルはAGIを実現するための重要な目標である。
  • 応用分野: 自動運転車の未来予測や、ロボットの安全な行動計画などへの応用が期待されている。