■ 1. DHH(David Heinemeier Hansson)の問題点
- DHHの人物像: Ruby on Railsの生みの親であるDHHは、成功した賢い人物であると評価されている一方、「Ruby界のFox News」と表現され、議論好きで反動的、反知性的、そして無礼な人物であると批判されている。
- 思想の変遷: DHHは、自身のブログで、当初は中道的な政治的信条を持つように見えたが、数年かけて反キャンセルカルチャー、反DEI、反トランスジェンダー、そして最終的にはナショナリズムへと傾倒していった。
- ファシズム的言説: ロジャー・グリフィンのファシズムの定義(国民の再誕を求めるポピュリスト的な超国家主義)を引用し、DHHの最近のロンドンに関するブログ投稿が、この「ファシズム」に該当すると指摘している。彼は、人種的多様性を否定し、人種的に純粋だった過去を賛美している。
- 矛盾: DHHは過去に「郷愁を嫌う」と述べていたにもかかわらず、近年の投稿では、DEIやキャンセルカルチャーが問題視される前の時代への郷愁を強く示している。
■ 2. RubyおよびRailsコミュニティのガバナンスの問題
- DHHの権力: DHHはRailsの著作権を保有し、Rails Foundationの創設者兼議長であり、彼の政治的信条にもかかわらず、Ruby Centralのような組織や、カンファレンスやポッドキャストなどのコミュニティから引き続き発言の場を与えられている。
- Ruby Centralへの不信感: Ruby Centralは、明確な事前通知やコミュニケーションなしに、RubyGems.orgのGitHubコードベースの管理権を強制的に引き継ぎ、全てのメンテナーのアクセスを取り消した。この不透明な行為により、コミュニティからの信頼を失っている。
- 企業の影響力: Railsの運営はShopifyからの資金に大きく依存しており、DHHやShopifyのCEOであるTobi Lütkeのような、右派の思想を持つ人物にコミュニティの方向性が左右されている。
- 行動規範の機能不全: RubyおよびRailsの行動規範は「寛容のパラドックス」に陥っており、憎悪に満ちた言説を排除できない構造になっている。
■ 3. 解決策と今後の展望
- 民主的な組織への移行: 企業スポンサーに依存するのではなく、コミュニティが主導する民主的な組織を設立することを提案している。この組織は、公開されたメンバーシップと民主的に選出されたリーダーシップを持ち、RubyGemsやRailsといった重要なプロジェクトを管理する。
- フォークの可能性: DHHがRailsの著作権を保有しており、自ら辞任する可能性が低いことから、RailsやRubyGemsのコミュニティ・フォーク(分岐)が必要になる可能性がある。
- 行動の呼びかけ: コミュニティは現状に甘んじるべきではないと主張している。DHHやRuby Centralに反発してコミュニティを去ったメンテナーたちが、新しいガバナンスの下で復帰することを呼びかけている。