■ 1. オープンソーシャルの概念
- 定義: 閉じた世界で動作する既存のSNSに対して、共通の規格に基づいて動作するSNSを指す
- 既存SNSの問題点: XやFacebookなどではユーザーのデータが各運営企業によって管理されており、投稿内容やフォロー情報を保ったまま別のサービスに引っ越すことは不可能である
- 解決策: 各ユーザーが自分のデータを自分で管理できる仕組みを構築する
- オープンプロトコルの種類: MastodonのActivityPub、ジャック・ドーシー関与のNostr、BlueskyのAT Protocolなど複数のオープンプロトコルが存在する
■ 2. アブラモフ氏の経歴と見解
- 経歴: MetaでReactの開発に携わり、2023年頃にBluesky開発チームに加わってクライアントアプリ開発を推進した
- 現在の活動: 2025年夏頃にBluesky開発チームを離れ、UIエンジニアリングに関するコンサルティングを行っている
- AT Protocolの評価: 自身はプロトコル設計に関わっていないと前置きしつつ、AT Protocolを「オープンソーシャルの好ましい一例」と絶賛している
■ 3. 昔のウェブ環境との比較
- 昔のウェブ環境: 各個人が自分でウェブサイトを開設し、コンテンツを配置したり他人のサイトにリンクしたりしていた
- データの移行可能性: ホスティングサービスが終了したりポリシーが変化した際に、コンテンツやリンク情報を保ったまま別のサービスに乗り換えることができた
- 現代SNSの制約: 投稿した文章や画像やフォロー情報などは各運営企業によって管理され、データを保ったまま別のSNSへ移行することは困難になった
- オープンソーシャルの意義: 昔ながらのウェブ環境のデータ移行可能性を現代のSNS社会に復活させるものである
■ 4. AT Protocolの特徴
- ユーザーによるデータ管理: ユーザーのデータをユーザー自身が管理できることが大きな特徴である
- ドメインによる識別:
- サービス内だけのハンドルネームではなく、各ユーザーの固有のドメインを用いてデータを管理できる
- GIGAZINE公式アカウントの場合は「gigazine.net」というドメインを使用している
- 無料サブドメインの提供: Blueskyではアカウント作成時に無料のサブドメインが発行され、技術に詳しくない人でも従来のSNSと同じような使い心地で利用できる
- サービス間の移行可能性: 投稿内容やフォロー情報を自分の管理下に置いているため、Blueskyに不満が生じた場合は各種情報を保ったまま他のAT Protocol対応サービスに移行できる
■ 5. AT Protocolの応用範囲
- SNS以外の活用: AT ProtocolはSNS以外のサービスの構築にも利用可能である
- 既存サービスの例:
- ブログサービスの「WhiteWind」
- コード管理サービスの「tangled」
- データの一元管理: これらのサービスへの投稿内容やお気に入り情報などはユーザーの管理するデータリポジトリにどんどん追加されていく
- 公開情報としての設計: AT Protocolは基本的にすべての情報を公開情報として扱うように設計されている
- サービス間の連携: 各種AT Protocol対応サービスは他サービスで作成されたユーザー情報を参照でき、tangledの利用開始直後からBlueskyと同じプロフィールやアバター画像を表示することが可能である
■ 6. オープンソーシャルの将来展望
- 現状の課題: 記事作成時点ではXやFacebookといった企業によって管理されるSNSが多くのシェアを獲得している
- 当面の依存: オープンソーシャルはしばらくは苦労をいとわず活動する頑固な熱狂的ファンたちのコミュニティに依存することになる
- 相乗効果: オープンソースと同様にオープンソーシャルも相乗効果を生み、あるオープンソーシャルアプリが成功すれば他のオープンソーシャルアプリにも貢献する
- 将来的な勝利: いずれオープンソーシャルは勝利を収め、一定の地位を得ることになるとアブラモフ氏は予言している