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海外でITエンジニアをしていた時に予言された事通りに業界がなってる

もう12年も13年ほど前になるが、俺は以前、海外でITエンジニアとして働いていた。

あの頃は、はてなでも海外を回っているエンジニアも多かった。そういう時代だった

シリコンバレーから、だんだんとITベンチャーのスタートアップが拡散していった時代。俺もシリコンバレーあたりから、NY、そしてイスラエルといった感じで働く場所が変わっていた。

当時はまだ日本のIT業界も世界2位だった頃の残光があり、気を吐いて色々なweb系ベンチャーが出ていた時代、結構「愛国主義的」な感じを俺もまだ20代だったから持っていて、お国のIT技術自慢の様な話もオフィスの中では多かったように思うし、それでも途切れないほど日本人エンジニア達が作ったものが毎日のようにOSSやITビジネスニュースを駆け巡っていた。

当時の上司は、イスラエル出身の人間だった。いろいろな企業の立ち上げにも参加して経験豊富、ぶっちゃけ絶対頭が上がらない人間の一人で、今でも生きていれば、もう65にはなるだろうか。

「今まで見てきた日本人エンジニアは英語の概念やプログラミングの技術力が重要、とみんないっていた。私は違うと思う。こんな概念を持っているのは日本だけだ。まるでカルト信仰のようだ。」

「プログラミングに必要なのはドキュメント力だ、国語の概念だ。つまり、母国語での読み書き能力、会話、コミュニケーション力が最も重要な基礎的能力だ。少なくともITでビジネスとして成り立たせるには。その概念を持っている日本人エンジニアが一人もいない。少なくとも、私は今まで百人近く日本人エンジニアを雇ったが、見たことがない。」

「こんな人間しかいないようでは、近いうちに、日本のITの技術力はある日を境にとてつもなく低下し、何のプロダクトもうめなくなる時代が来るだろう。それはいつごろかわからないが、5年後か、10年後くらいかもしれない」

当時俺は内心イラっとしていた。「はぁ?何言ってんだこのユ〇公、負け惜しみじゃねえのか?」と思っていた。若かったからな。それはしょうがない。

他のマネージャー層や、同僚の中国、インド、イスラエル、アメリカ、北欧、カナダ色んな国のエンジニアが来てて、万国博覧会の様相を呈していたが、驚くことにみんなこれに同意していた。

中「数学的能力や計算力が重要、ともよく言っていますよね。私の大学時代、そんな事全く教えられてなかった。チューリングマシンの概念を理解していれば、そんな話発想すら出てこないと思います。」

印「この概念と理解領域の狭さはネックですよね。ITの理解力の低さは、ソフトウェアだけでなく建築といったインフラにも今後影響が出てくるんじゃないでしょうか?」

北「これからは全部デジタルツインになりますからね、如何にスマートにシミュレーション構築するかで、性能もコストも愕然と差が出てくる時代になりますよね」

加「高度な計算シミュレーションについていけなくなると、最終的に国家財政や経済効率も低調になっていくと思うよ」

俺は当時こういう話を聞いて頭がカーッとなりながら、何とか負けたくないから反論した。

「主語がデカすぎるんじゃないですか?文系分野まで関係ない言いがかりじゃないですか」と

あの時の上司の顔が忘れられない。もう憐れみの目と表情でみんな俺を見ていた、そして、オタ仲間だった米人エンジニアが申し訳なさそうに言った言葉をはっきり記憶に残っている。

「増田、あまり言いたくはないが、日本人エンジニアは大多数の非ITに無関心過ぎる帰来はあります。僕はオタクだからわかる。オタクの内輪のノリのまま、日本のITは来てしまっている。80年代とかの昔はそうじゃなかったのかもしれない、でも10年位前(※当時なので2000年代を指す)からそうだ。」

「ITをあまり知らない業種や業界の人に使ってもらおう、という謙虚さを日本人エンジニアからは感じられない。OSSのソースコードや製品の命名を見ればわかる。女児向けアニメキャラや特撮ヒーローとかの名前を幾ら好きだからってちなんで入れたりなんて、アメリカの価値観では異常者や変態のそれとして扱われるんだ。」

「日本人エンジニアは、"他者不在”のまま働いてるんだよ。」

当然、会話は英語だから俺が翻案訳でこれを今思い返しながら書いてる。当時、知らん奴にわからせようとしても無駄だろうと、本気で思っていた。今思えば、当時のIT系はそういう思想が根強かったように思う(今も一部では、かもしれないが)

上司はそれから常にこういっていた

「増田くん、キミはパソコンやアニメやゲーム以外に趣味を持ちなさい。私からは、君にそれしかアドバイスができない」

それから俺は哀れまれる目線が嫌で、数年働いてキレてやめて、逃げる様に日本へ帰ってきたわけだが。そのころには確かに、日本でITプロダクトなんて何も名前を聞かないほどになっていた。GAFAMに制圧されたかの様に。

Xとかでもネットでも未だに、俺達や俺たちの少し上の世代が「Winnyがいい例だ。ITを理解できない老害と社会に潰されたせいで、GAFAMが生まれ出る土壌が日本からなくなってしまった」という被害者意識丸出しの「神話」が当たり前のように垂れ流されている。

わかったことがある。俺はあまりにも自分の底が割れることが怖くて、世の中を、社会を知ろうとしなかった。ITが面白んじゃない、好きなんじゃない、俺はネット見るかゲームするかしかやることがない陰キャで、ほかに得意なことがないからパソコン使う仕事が相対的に一番食べて行けたからやっていただけだったんだ。

これからの時代、俺みたいなエンジニアはどんどん淘汰されて業界から叩き出されていくのだろう。

既に、IT以外の事もできるITエンジニア、のような新世代の人間たちが、俺が十数年前嫌という程海外で観た、俺が内心嫌いだった人種たちが日本でもIT業界で珍しくなくなった。 俺達の世代や、俺たちの少し上の世代の「今では古くなってしまったITエンジニア」達は、そんな奴等をリア充だの何といって、殺意や憎悪まで燃やしている様なくらい煮詰まっている人間たちが、Xやネットで珍しくない。

なんなら、もう10年近くこれも、スペインやイギリスやロシアの同僚、そしてイスラエルの上司も予言していた。そして当たっている。

「日本のITエンジニア達は、ITという文化を所謂秋葉原系といったものと相補的になってるアングラ文化から卒業・脱却をしなければいけない。メジャーにならなければならない、でもそれは少なくとも増田君たちの世代では困難以前にできないと思う。」

「内輪に籠ったまま選民思想だけ高め合っても、日本のITエンジニア達の属性は、常に彼らが見下す外の人間に向いている、例えばアニメの様な美少女が、IT分野に投資をしてくれる投資家や政府の役員や政治家たちが、君たちの文化や思想を理解してくれるわけがないことくらいわかってるだろう。」

「いずれ内輪に籠ったまま置いてけぼりになって、他責思想のまま世間からも置いてけぼりにされる。その果てにあるのは犯罪者集団化だ。アメリカでは、そんな連中がネットコミュニティで結びついて、通り魔テロ事件や放火テロなどを起こしているし、各国でも問題になっている。増田くんの国ではまだだだろうけど、それは必ずいずれこのままだとおこる」と

ああ、そうだ、今にして思う。その通りだ。 俺が日本に帰ってきた年、予言の通りの様についに社会との価値観の乖離はピークを迎えていた。さるITエンジニアがJCJK専門の集団痴漢の元締めをしてて捕まって大ニュースになった。IT業界では知らない人間はいないほどの有名なエンジニアが、スパコン詐欺で国相手に巨額の詐欺を働き、捕まって大ニュースになった。同じ年、俺達と同世代のITエンジニアが狂って神戸で通り魔を起こし、金属バットと包丁で5人を殺害した末捕まった。聞けば裁判では、「(聞当時放送していた某なろう系アニメの青髪メイドらしい)アニメキャラと結婚するためには哲学的ゾンビを殺さなければならない」と喚き散らして、あまりの異常さ故、心神喪失で無罪となった、という。

こうした顛末は、俺達の世代の人間たちは図星を隠す様に「偶然だ」と発狂して否定しているが、俺にはわかる。これは偶然ではない、俺たちの世代の「必然」だ。

予言の通りだ、そして、何もITプロダクトは生み出せもしなくなった…高いプライドを抱えたままいつまでも「他者不在」で、何も売れるプロダクトを作れないまま、自己満足の売れない技術や製品を誇っている。そして、それが売れない、評価されない事を、自分たちのことを棚に上げて社会に対して憎悪や怒りを燃やしている声がネットで響き渡り、風の音の様に止むことはない。

俺達の世代の夢は、もはや狂気という時代の空気となってネットと現実社会に憎悪の風を吹き荒らしている。

俺たちは負けてしまったのだ。いや、最初っから勝負にすらなっていなかったのかもしれない。

上司の忠告がこの年になって響く、俺は、俺達は今更パソコンやネットやゲームやアニメ以外の何も始められない。八方手詰りになってしまった、 あれほどテック強者を気取っていた俺達やXの同輩や少し上の先輩たちは、落ちぶれたコンプレックスを他責思想で社会や、手に入れたかった若い美少女や、若さに嫉妬と憎悪で狂い、老いた肉体を曝け出しながら、女叩きにいそしみ、最後には狂って包丁やガソリン片手に通り魔テロだの放火テロだののような凶悪猟奇事件を起こしてニュースになることが、数か月に一度の風物詩になってしまっている。その姿は、2010年初頭の頃の俺達が夢見たデジタル背景に01が流れる格好良すぎる未来とは程遠い。想像もできないほどに。

しかし、何よりも嫌なのが、狂って包丁やガソリン片手に通り魔事件や放火事件を起こして捕まる同年代の奴らが多いのも、言葉は悪いが納得できてしまうところだ。あれだけプライドの高かった俺達は、何も取り戻すチャンスもないままあと40年も生きなければならないのだ。喪失感と承認欲求と肉欲を抱えて…それは、俺たちの世代の病理なのか、俺達がまだあきらめきれぬ夢にもがいている姿なのか。俺にはもう判別がつかない。 それならばいっそ「それを手に入れている存在や社会」に対して、テロを起こして一生消えない被害と傷跡を負わせて、自分も死ぬか刑務所で税金の無駄飯を食らって社会に復讐して「無効試合」という政治的目標を達成したい、と考える奴らが増えるのも、俺達の世代の罪とはいえ致し方ないのだろう。(当然、俺はそんなことする気は毛頭もないが、海外から戻ってきて外から冷静に見て初めて認識できた、あの選民思想や「他者不在」のイキリオタク的内輪のノリが一種の流行だったので、それで狂っていっている奴等の思考回路は理解できてしまう、というだけだ)

俺達はもっと世界を知るべきだった。社会を知るべきだった。他者を理解しようとするべきだったのだ。だがもうできない。 俺達はあまりにも世間と乖離しすぎたまま年を食ってしまった。未だに20代の頃のような感覚で、若い女を飯に誘うなんていう行為を批判されて発狂している存在、あれだけ好きだった萌えアニメの脚本家の些細な言葉尻をとらえて怒り狂って経済テロを敢行するつもりで除名運動まで展開しているはた迷惑な行為を行っている存在…その所作はもはや狂気と病理である。

やり場のない怒りと不甲斐なさを、社会に憎悪として還元している…俺達の世代の夢の果てがこれである。

ああ、ITで世界を変える、自身の運命さえ変えられる。アニメの様な美少女たちと浮名を流し、SNSやマスメディアに取り上げられ、キラキラ職場でキラキラ人生を送り人生逆転をする。そんな野望と夢の旗を掲げた俺達の現実が、そこに待ち受けていた。 もはや得意のIT知識ですら時代遅れ、露悪的な文章はAIで書かれた物かどうかも見分けられずにAIだと叫ぶほど技術的感性は衰え、 老いと時代に取り残される恐怖と、若さへの嫉妬と憎悪、もはや不能になりつつあるのになお焦がれる若い女性への肉欲、そして自分たちを理解しなかった社会への怨念と殺意と憎悪に突き動かされ、包丁とガソリンと、俺達が信じたITとSNSを手に政府や社会にテロを敢行し、社会や政府が折れてアニメの様な美少女を宛がってくれて、キラキラ職や特権を禅譲して人生一発逆転ができると狂気にも似た願いを託し、一発逆転を夢見て社会を襲うテロリストの群れのような姿だった。

これが散々意識高い系を気取っていた俺達の世代のエンジニアがたどり着いた「令和に生み出せたプロダクト」だと思うと、涙が止まらなくなる。

俺達の世代がよく口にしていた「ロジカルシンキング」で考えた結果がこれなのだろうが、確かに理屈の上では、俺達の世代の声を代弁して、今の様に「狂ってしまった俺達と同世代の奴等」がこのままネットで、そして現実で包丁やガソリンを片手にテロまがいのことを続けていれば、そのうち政府や社会は折れて、キラキラ人生やアニメの様な美少女を宛がってくれるのかもしれない。という「現実的予測」をはじき出した結果なのだろう。

だがそれは、未だにAIがシンギュラリティが起こすなどと、1999年のアルマゲドン思想の焼き直しを叫んでいる程、現実を理解していない机上の空論にすぎぬ。例え数多の俺たちが耳をふさいで内輪に籠って逃げ出していた「現実問題」をすべてはじき返したところとて、俺達の世代が夢にまで見たキラキラ人生とアニメの様な極上の美少女をその手に抱いた時、あとに残るのは勃起もしなくなった老いた肉体と、取り返しのつかない社会インフラが壊れた傷跡のみ、だろう。そんなことすら、俺たちはわからなかったのだ。いや、わかろうとすることを拒否していたのだ。 自省的に同じ世代故、あえて「俺達」という言葉を使うが。俺たちの世代は狂ってしまったのだ。どうしようもないほどに、もはや、俺たちの世代のITエンジニア達は、犯罪か社会への憎悪か、テロリズムでしか、「俺達以外の世界との対話」ができないほどに歪んでしまったのだ。

だからあれだけ勇ましくIT技術の未来や、ICTで世界を変えるといっていたにもかかわらず、俺たちの世界の有名人たちも含め、JCJK専門の集団痴漢の元締めをやって捕まり、政府相手に巨額のスパコン詐欺を働き懲役5年の実刑判決を受け、青髪メイドアニメキャラの知人という存在しない人間と結婚するためには、哲学的ゾンビを殺さなければならないと称して、狂気の果てに意識だけが異世界へと飛んだのか、バットと包丁で通り魔テロを起こした末、5人を殺害して裁判へ引っ立てられた。

・・・俺たちが信じた夢の果てが、この姿である。そして、こんな予備軍はネットやX、このはてなにもわんさかといる。風に乗って増えていく種は、やがて土と同じように芽を出している。この間でさえ、町田で俺達と同世代の人間が狂気の通り魔事件を起こした。それは、俺達という世代の病理そのものである。

俺は流石に追い込まれてワクチン陰謀論だとか、男女叩きだとか、暇アノンやMAGAにまで堕ちることはないと思うが。すでにネットの同年代や少し上の層は、それでも喪失感と劣等感と自分自身の怒りを社会に他責でぶつけて怨念が渦巻いている。

俺はそんな悲劇を眺めながら、今日も胸がいっぱいなまま、IT業界の片隅で生きている…過去を悔いながら、過去の遺産で喰いながら。

■ 追記

https://anond.hatelabo.jp/20251006123907