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ITエンジニアを辞める人たち—“未経験ITエンジニア転職ブーム”から数年後の現実

要約:

■ 1. ITエンジニアを辞める人の増加

  • 現象の観察: ITエンジニアを辞めましたという投稿を目にする機会が増えている
  • 情報源: XでのSNS報告、顧客の採用担当、人材系事業の関係者から話を聞くようになった
  • 共通点: 2019〜2021年頃にプログラミングスクールを経てITエンジニアになった人たち
  • 現実とのギャップ: いざ入社してみると現実は想像以上に厳しいものだった

■ 2. 不況による未経験・微経験採用の変化

  • 求人の減少: 受託開発会社、事業会社、スタートアップを中心とした不況感の高まりにより、未経験・微経験層の求人が大幅に減少している
  • 企業の優先順位: 企業は教育コストをかけて育てる層よりも即戦力として成果を出せる層を優先するようになった
  • 転職活動の行き詰まり: スクール卒のエンジニア志望者が転職活動で行き詰まり、キャリアチェンジを余儀なくされるケースが増えている

■ 3. SES市場の問題

  • 未経験向け求人の存在: 依然として未経験・微経験向けに求人があるのがSESや派遣会社
  • 非ITエンジニア職への配置: SES企業に入社しても実際に任されたのは非ITエンジニア職──テスト要員やヘルプデスクなど、キャリアアップの道が見えない業務
  • 具体例: ITエンジニアになるに当たって貴方にはコミュニケーション力が足らない、そのためにはまずコールセンターに行きなさいと言われて3年勤めたが何も起きないので転職したいという話もある
  • 諦める選択: こうした現実を前にITエンジニアを諦めるという選択肢は無理もない

■ 4. 実質無職のSES案件採用

  • 案件採用の広がり: SESの一部では案件採用が広がっている
  • 一般的なSESとの違い: 最終面接後に内定があり入社後に営業が始まる一般的なSESとは異なる
  • 無職状態: 最終面接合格後に未入社の状態で営業が開始され、案件が決まるまでいわば無職の状態が続く
  • 無給の営業活動: 営業活動を実施しているのに無給という点も問題
  • 人材紹介会社の関与: 今では人材紹介会社経由でも紹介されることが当たり前になっている
  • 情報商材の問題: 2000万円を元手にSES事業を立ち上げ、3年後に10倍で売却しましょうという情報商材が広がっている
  • 商材化された人材: 商材がヒトであることを忘れた経営者の犠牲になっている

■ 5. 生成AIの台頭による影響

  • エンジニア像の変化: 生成AIの急速な進化によって企業が求めるエンジニア像が大きく変わった
  • 採用スタンスの転換: 従来は採用して育てるスタンスを取っていた企業も、今ではAIを活用して即戦力として成果を出せる人材を重視するようになった
  • 仕事の自動化: 生成AIツールの普及により初歩的なコーディングやテスト、ドキュメント作成などの領域が自動化され、ジュニア層が担っていた仕事が減少した
  • 採用方針のシフト: 企業は育成を前提とした採用からプロジェクトにすぐ貢献できる層の確保へとシフトしている
  • 教育リソースの不足: AIを前提とした開発環境や業務プロセスが整備される中で、教育リソースを未経験者に割く余裕がなくなってきている

■ 6. 技術構造の変化

  • 恒常的なシフト: これは単なる景気の波ではなく技術構造そのものの変化による恒常的なシフト
  • 求人の大幅減少: 2024年以降、未経験・微経験者向けの求人は大幅に減少した
  • ポテンシャル採用の消失: かつてポテンシャル採用と呼ばれた採用枠は姿を消した
  • 新たな分水嶺: 今では生成AIを使いこなせるかどうかが採用の新たな分水嶺になりつつある

■ 7. プログラミングスクールブームの罪

  • 2019〜2020年のブーム: プログラミングスクールブームは未経験者を一気にIT業界へ誘導した
  • 過激な訴求: SNS広告やLPでは誰でも3ヶ月でエンジニアに、年収アップ、フリーランスで自由にといった過激な訴求が目立った
  • 期待値調整の失敗: 良心的なスクールも存在したが、全体としては期待値調整の失敗があった
  • エコーチェンバーの発生: SNS中心の情報収集によってエコーチェンバーが発生し、デスクワークで楽、リモートで人と関わらなくて済むといった誤情報が拡散した
  • 現実とのギャップ: 思っていたような年収が得られず、業務内容にも馴染めず、結果的にITエンジニアを辞めるという投稿が見られる

■ 8. 業界離脱率の高さ

  • スクール出身者の証言: 当時話題だったプログラミングスクール出身者で現役エンジニアの方によると9割は業界から居なくなったように思うとのこと
  • 専門職教育の変化: 考え方によってはアメリカのように大学で専門職教育を受けた人が当該専門職に就くという状況になったとも考えられる
  • エンジニアバブルの終焉: 今までの未経験・微経験人材が採用されていた専門職はかなり異色でありエンジニアバブルの産物だった

■ 9. 転職先の傾向

  • 別職種へのエントリ: 採用の現場ではエンジニアを諦めて別職種にエントリするケースが見られる
  • 情シスとカスタマーサクセス: 情シスやカスタマーサクセスへの応募が見られる傾向にある
  • カスタマーサクセスの魅力: 事業会社ではエンジニア職よりも営業職のほうが重要視されている傾向にあるため、カスタマーサクセスへの転身は本人が対人コミュニケーションの苦痛がなければ良い
  • 情シスの需要: 広く様々な企業で募集されている職種で、ちょっとしたものでもプログラムやスクリプトを書くことができれば重宝される
  • 介護職への転身: 未経験・微経験を積極採用しているということで介護職へ転身される方もいる

■ 10. 日本企業が求める人材

  • アンケート調査: ITメディアが具体的にどのようなスキルを持ったIT人材が不足しているのかというアンケートを実施
  • インフラエンジニア: 55%がインフラエンジニアと回答
  • DX推進リーダー: 次がDX推進リーダーで52.5%
  • データサイエンティスト・セキュリティエンジニア: データサイエンティスト・データアナリストとセキュリティエンジニアが同率で45%
  • ソフトウェアエンジニア: 業務アプリケーションを実装するソフトウェアエンジニアは32.5%と最も低い
  • 需要減少の背景: SaaSの移行が進むことで自社内で開発する必要がなくなってきた可能性や、ノーコード・ローコード開発への移行による影響

■ 11. キャリア戦略のポイント

  • 経験の価値: ITエンジニアから異職種や異業種への転向とはいえ、IT業界で身につけた知識や経験は決して無駄にはならない
  • 活用の場: 情シスやカスタマーサクセス、営業支援、データ管理など、DXの文脈ではエンジニア経験者が重宝される場面が多くある
  • 生存の重要性: キャリアの基本は生存にある
  • 再挑戦の可能性: 一度離れたとしても学び直しやスキルの再利用によって再挑戦の道は開ける
  • 現実との向き合い: 大切なのは腐らず、現実と向き合い、次のステージで生きること

■ 12. プログラマ需要への固執を避ける

  • 柔軟な戦略: 実情を踏まえるとプログラマ需要を探すことに固執しないということもキャリア戦略としてはあり