■ 1. 『コンサルタントの秘密』の概要
- ジェラルド・M・ワインバーグによる主著である
- コンサルタント向けの専門書ではなく、相談されたときの思考法をまとめた普遍的な内容である
- 肩書きではなく「どのように人と関わるか」を扱った一冊である
- プログラムやシステムの話はエピソードとして登場するが本質ではない
- 様々なトラブル事例から「コンサルタントの法則」を紹介している
- トム・デマルコの書籍の源泉となった組織論や発想が含まれている
■ 2. オレンジジューステスト
- 設問内容:
- 朝5時から1,000人分の搾りたてオレンジジュースを提供する
- 缶入りジュースや事前準備は禁止である
- 直前に絞ったジュースを全員に行き渡らせる必要がある
- 合格の回答:
- 「できる。これだけのコストがかかる」と答えることである
- 「無茶だ」「現実的でない」と勝手に判断することは失格である
- コンサルタントの役割:
- 可能な選択肢を示すことである
- それにかかるコストを示すことである
- 選択は依頼主が行うものであり、選ばない選択も含まれる
- 原則:
- 相手の要望を勝手に最適化することは相手の判断を奪う行為である
- 相談される側は判断材料を提供する役割に徹するべきである
- 良し悪しまで口出しすることはお節介である
■ 3. 「そこに無いもの」を見る方法
- 課題の特性:
- 見えないものを見つけることは困難である
- 悩みごとの原因は見えていない場合が多い
- 紹介されている技法:
- ピンの技法は、リストアップ手段が無い対象こそ取り組むべきとする
- 3の法則は、計画を台無しにする原因が3つ考えられないなら思考方法に問題があるとする
- 説明の顔をしたアリバイは、ルールから言い訳を探す行為を指摘する
- 「他人という異文化を利用する」事例:
- ワインバーグはプログラマの生産性向上を依頼された
- 職場では要望があればすぐに購入・作成する方針だった
- プログラマへのインタビューでは「足りないもの」が見つからなかった
- 掃除のおじさんに「黒板を拭いてくれと頼まれたことはない」と言われた
- 黒板は「消すな」という警告付きの個人メモで埋め尽くされていた
- 本来の共有ツールが機能せず、購入したソフトやガジェットも共有されていなかった
- 他者の視点により見えない問題を発見できた
■ 4. AIを活用した「足りないもの」の発見
- 「洗濯物リスト」の作成方法:
- 機能設計時にスライド一枚に要件と実現方法を箱で並べる
- 「この一枚が全体像だが、足りないものは何か」と周囲に問う
- 機能不足だけでなく要件の制限や前提の追加が判明する
- ネットワーク設計や非機能要件周りで発見が多い
- AIの活用方法:
- 要件と機能の不足を尋ねる
- タスクの網羅性とコスト見積もりを確認する
- 図が成立する前提で欠けているものを探す
- 計画を台無しにする原因を3つ以上考えさせる
- AIの特性:
- 網羅性の確保に適している
- 「10個考えて」という無茶な要求にも対応する
- 人間が妥当性を最終判断する必要がある
- 1990年の出版時には存在しなかったAIという異文化を現在は活用できる
- コンサルタント業務の多くをAIに任せられるようになった
- 最終判断は人間が行う必要がある
■ 5. AI時代におけるコンサルタントの本質
- コンサルタントの核心的業務:
- どのような問いを投げるかを決定することである
- どこまで自分で判断するかを見極めることである
- 現代における重要性:
- 正解がない時代では答えよりも良い問いが重視される
- 問いへ向き合う考え方が必要である
- 『コンサルタントの秘密』はAI時代だからこそ読み直す価値がある