■ 1. 2ちゃんねる創設の経緯
- 立ち上げの動機:
- 暇だったことが第一の理由
- アメリカで大学生をしていた当時、「あめぞう掲示板」を使用していた
- 「自分で作れるのか」と試したら作れてしまった
- 高いモチベーションがあったわけではなく、できてしまったから惰性で続けた
- 学んだこと:
- プログラムを作る力とサービスとして運営していく力は全く別物
- 動くものができても運用しやすいようにコードを修正する必要がある
- トラブル防止のためのサーバー準備も必要
- 世界中の無料サーバーを契約して回り、「ここが落ちたら次はここ」というルートを事前に用意する運用ノウハウを蓄積
■ 2. 技術選定とシステム設計の考え方
- 使用言語:
- 当時からPerlで書いており、現在も同様
- データベースを使わない理由:
- データベースはたまにデータが壊れる
- 約10年前に某企業のOracleデータベースのデータが全消失した事例がある
- データベースを使うとメモリやCPUのオーバーヘッドが大きくなりサーバーコストが高くなる
- テキストファイル保存の採用:
- テキストファイルに書き出せば壊れにくくできる
- お金がない中での工夫
- 「どうやったら安く、壊れにくく動かせるか」という発想
- このノウハウはその後のIT系会社経営でも活用
■ 3. 潰れない会社の経営哲学
- 基本原則:
- 会社が潰れるのはお金がなくなった時
- お金がなくならなければ会社は生き残れる
- 毎月のランニングコストをいかに安くするかが重要
- よくある失敗パターン:
- 売上を上げていく過程でコストも上がる
- 売上が下がった時に赤字になり大慌てになる
- 一度上がったコストを下げるのは非常に困難
- その結果として倒産するケースが多い
- 実績:
- 1999年に大学生の時に作った合資会社は現在も存続
- 2001年頃に作った株式会社も現在も存続
- 自分の会社を潰したことはない
■ 4. サービスを当てるための考え方
- 仮説の作り方:
- 他にないことで「自分がそれを知りたい・やりたい・おもしろいと思うか」が基準
- 自分自身がおもしろくないと思うと飽きて続かなくなる
- 「別に自分が作らなくてもいい」「既にある」と思うと飽きてしまう
- 自分の欲望に沿うタイプ
- 他のアプローチとの違い:
- 「世間で流行っているから作る」というソシャゲー系の作り方はできない
- 好き嫌いに関係なく儲かるものを作る人もいるが、自分はそれができない
- 人の性格による違い
■ 5. 2ちゃんねる立ち上げ期の戦略
- 当時のインターネット環境:
- 企業がサイトを作って運営することは少なかった
- ネット決済やクレジットカード入力はほぼ存在しなかった
- 個人がブログを書いてサイトを作るのが普通だった
- 情報を出す人が少なかった
- 「日本語で書かれているページはだいたい全部見た」という人がいた時代
- 昔のファミコンで「発売されたソフトはほぼ全部触っている」という人がいたのと同様
- 「全部わかる時代」だった
- 新しいサイトができたら情報を共有するリンク集が流行していた
- 掲示板を選んだ理由:
- 情報が集まる場所として掲示板はずっと残ると考えた
- 誰でも書けるため情報が出回りやすい
- 人が多ければ多いほど情報が増える
- 競合に勝つための設計:
- たくさん人が来ても耐えられる仕組みにする
- 書かれたデータが消えずに残り続けるようにする
- 利便性を上げることで他のサービスより優位に立つ
- コスト構造の優位性:
- 他のサービス運営者は自腹で回していたため、自分の給料以上の規模にできなかった
- 世界中の無料サーバーをひたすら契約し続けた
- 自分の人件費を除けばコスト構造がほぼゼロ
- 無料で規模だけ大きくしていった結果、日本で一番大きい掲示板になった
- 掲示板とSNSの関係:
- 掲示板はSNSの前の姿といえる
- 昔は掲示板で情報収集・情報共有をしていた
- 今はSNSがその役割を担っている
■ 6. 自宅サーバー学習の価値
- 自宅サーバーの意義:
- 2ちゃんねるも自宅サーバーで運営していた時代がある
- 自宅サーバーでしか学べないことがある
- 具体的なメリット:
- 「GPUをぶん回す」ような処理は自宅で回したほうが安いケースがある
- 「オンプレで自前で持つべきか」「クラウドでやるべきか」という比較ができるようになる
- オンプレという選択肢を持っていないと「AWSとGCPどっちが安いか」という比較だけになる
- 「この部分はオンプレにする」「重要なデータだから社内に置く」といった判断ができる
- 結論:
- 自前サーバーの経験はサービスの管理者になるなら持っておいたほうがよい
■ 7. AI競争の価格面の帰着
- 大企業の動向:
- OpenAIや大きな会社がひたすら投資しているものは残り続ける
- 各社が「超優秀なAIを作る競争」をしている
- 一般ユーザーの実態:
- 一般の人たちは「そこまで必要ない」という時代になりつつある
- ChatGPT3と4の違い、4と5の違いを体感で理解しているユーザーは7〜8割もいない
- 今後の予測:
- Metaの「パソコン1台で動く」「スマホの中で動く」モデルがある
- 中国製の「GPUなくても動く」モデルも存在
- スマホやノートPCの中に入って「これで充分」という時代になる
- 巨大なデータセンターや電力の話が問題にならなくなる
- 「能力が高くなくてもこれで足りる」ものが小さく自分のスマホの中で動く時代になる
■ 8. データベースより軽い設計発想
- データベースの課題:
- データベース連携は便利なミドルウェアも多く、いろんな人が触れるようになる
- しかし当時はサーバーのリソースが少なすぎた
- アクセスが増えるとCPUが詰まる
- データベースは同時書き込みでデータが壊れるため「ロックして1人ずつ書く」動きをする
- アクセスが多すぎるとロックがかかったままになりデータの出し入れができなくなる
- 結果としてサービスが止まる
- 分散処理の問題:
- 「同じサーバーを100台並べて分散すれば処理が100倍になる」というやり方はコストがかかる
- 採用した解決策:
- 「多少順番がズレてもいいからロックしないで書く」
- 「多少の誤差は許容する」という方針
- ロックせずにどんどん追記していく
- 「書き込んだ順番が前後することがあってもしょうがない」という誤差を認める
- この方法でコストは大幅に下がる
- テキストファイルでの運用はこの考え方に基づく
- JSONでのAPI操作:
- 「データベースでガチガチにやるのではなくJSONでやる」というのは同様の考え方