■ 1. 早すぎる目的・KPI設定の問題点
- 会議やSlackのやりとりで「目的とKPIは?」という問いかけが出ると、すぐにアクションに移すべきだった内容が停滞する
- 目的とKPIが決まるまで実行できなくなり、「なぜやるのか、どう計測するのか」を決めるための会話に時間が取られる
- 目的の話がまとまると「別の方法が良いのではないか」という議論になり、1、2ヶ月が経過する
- 最終的には「検討します」のまま塩漬けになり、その施策の話がされなくなる
■ 2. KPI・目的設定自体の意義
- KPIや目的を決めること自体は良いことである
- 数字や言語化された目的があれば、目的に向かってブレずに動きやすい
- やるべきことにリソースを集中させることができる
- 大きな目的やKPIが早すぎる段階で語られることで、理解を深めることや観察のためのアクションが阻害される
- 結果的に単に動きが悪くなってしまう場合がある
■ 3. 過剰管理の発生メカニズム
- 未知や不確実性への恐れが過剰管理を生んでいる
- 「施策ごとにKPIとか目的が設定されるべき」という言葉は一見正しいように見える
- 「まず触れてみて、感触を掴む」という目的で十分なときには過剰管理となる
- 未知や不確実性への恐れが「ちゃんとした目的やKPIがあるべき」という過剰管理を生んでいる
- 「触ってみる・やってみる」によって学んだり観察したりする探索的アクションすら禁止される状況が生じる
■ 4. AI開発ツール導入の具体例
- AIを活用した開発をしていない開発チームがCursorやClaude Codeをエンジニアに使ってもらおうとする場合を例示している
- 「目的はなんですか?ツールを使うことは目的ではないですよね。開発生産性を上げることですよね。開発生産性はどのように計測して、ROIは……」という問いかけが出る
- このような早すぎる目的・KPI設定の要求は、試行錯誤を阻害する
- AIを使った開発でどういうことが起きて何がこれまでと違うのかを知らない人が「どのくらい効率良く開発できるようになるのか出せないなら、AIを使うべきではない」と言い出すと終わる
■ 5. 状態目標と経験の価値
- やってみて経験する・理解を深めるということが事業的に意味のある状況ならば、それは十分に「状態目標」として機能する
- 経験すること自体が事業成長という目的に向かっている行為として機能する
- 目標達成したかどうかが感覚的にしかわからないことがダメな理由はない
- 事業的に意味のあるアクションが「厳密に測定可能ではない」というだけで阻害される方が損失である
■ 6. コンテンツマーケティングの具体例
- 自社の情報を発信するときに「まずは書いてみて、どのくらい大変か」や「自分たちは、どんな品質の記事が書けるか」を体験してみる必要がある
- 試行錯誤した経験もないまま「毎月のPVはどのくらいを目指していますか」と聞かれると試行錯誤が阻害される
- 試行錯誤した経験がないため誤ったKPIを設定してしまう
- 探索的に動くだけでも良いのにKPIや大きな目的に縛られて「うまくいかないので止めます」を繰り返す状況が発生する
■ 7. 勝ち方を知らない段階での問題
- 勝ち方(うまくいく方法)もわかっていない段階から「勝ちに行く手」を決めようとしてもダメである
- 勝ち筋かどうかを測定しようとしてもダメである
- 手触り感がないことにKPIを決めるのはアホである
■ 8. 逆の極端な状況への警告
- 観察と理解が十分な段階に進んでいるのにいつまでも「とりあえず色々やってみましょう」を続けるのはアホの極みである
- 目的を目指すためのKPIを決めてリソースをつぎ込めば良いのにいつまでも「色々試してます」で留まってしまうのは良くない
- もう仮説を立てられるのにいつまでもなんとなくやってみるのもアホの極みである
■ 9. 適切な対応方法の提案
- 「これをする目的とKPIは?」と言われたときに、まだ試行錯誤や探索的アクションが必要であれば適切な説明をすべきである
- 「まずは、短期間だけでも経験して学習するための探索的アクションを積ませてください。定量目標がなくても、アクションに対して学んだことを振り返りする方が、良かったかどうかや今後どうすべきかがハッキリします」と伝えることが有効である
- どうしても必要であれば仮当てのKPIくらいはあっても良い
- 定量目標や本質的な目標の前に肌感を掴むというのは感覚的な話になるため怖がる人がいるのは理解できる
- 勇気をもって感覚を掴む方がうまくいく状況もある