■ 1. 背景
- AIツールによるコーディング支援が広く普及
- LinuxカーネルコミュニティでもAIツールが生成したコードの扱いについて議論が継続
- Linus Torvaldsは一貫して「AIツールも単なるツールのひとつ」という態度を維持
■ 2. カーネルガイドラインの策定
- x86アーキテクチャメンテナーのDave Hansen(Intel所属)が中心となりガイドライン作成が進行
- 正式名称は「ツール生成コンテンツに関するカーネルガイドライン(Kernel Guidelines for Tool-Generated Content)」
- 2025年1月6日に第3版を公開
- ガイドラインの目的:
- カーネル貢献者は長年ツールを使用して貢献を生み出してきた
- ツールは貢献の量を増やすがレビュー担当者とメンテナーのリソースは限られている
- 貢献のどの部分が人間によるものでどの部分がツールによるものかを理解することが重要
- ツールに関するコミュニティの期待を明確にすることがゴール
- ガイドラインには「AIツール」「LLM」といった用語は含まれていない
■ 3. メンテナー間の意見対立
- Lorenzo Stoakes(Oracle所属/メモリマネジメント分野メンテナー)の主張:
- LLMは単なるツールではなくまったく新しいツール
- LLMによるAIスロップ(低品質な生成AIコンテンツ)がエンドツーエンドで大量に送信されることはこれまでできなかった
- AIスロップがパッチとして送られてきた場合に議論なく却下できることをドキュメントで明確に表明すべき
- LLMを「単なるツール」とすることはカーネルがLLMの問題にまったく影響を受けないと言っているようなもので愚かなポジションに見える
■ 4. Linus Torvaldsの反論
- AIスロップについて議論することにはまったく意味がない
- AIスロップを作って送ってくる連中は自分のパッチをドキュメント化しようとは思わない
- ドキュメント作成は善良な人々のためのものでありそれ以外を対象にするのは無意味
- カーネル開発に関連するいかなるドキュメントもAIに関する声明のようなものになることを望まない
- AIに関しては「空が落ちてくる」という主張と「ソフトウェアエンジニアリングに革命を起こす」という主張がありそれぞれに賛同者がいる
- カーネル開発ドキュメントがそのいずれの立場もとることを望まない
- AIツールを「単なるツール(just a tool)」という表現に留めておきたい
- AIスロップの問題はドキュメント化によって解決するはずもない
- それを信じる人は世間知らずか自分の意見を主張したいだけの人
■ 5. 現状の見通し
- 生成AI/LLMはこれまでの開発ツールと異なりパッチにAIスロップが増えることに危機感を持つメンテナーも存在
- 当面はカーネル開発におけるAIツールは「単なるツール以上でも以下でもないもの」として位置づけられる見込み